短編集

紫宛

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【妹を庇って怪我をしたら、婚約破棄されました】

リシア&レオンハルト(ハロウィン)

収穫祭が近付いて、街が賑わって来ました。
収穫祭とは、死者の霊が現世に戻ってくる日とされています。良い霊だけなら良いのですが、悪霊や悪魔も現れ作物や家畜に悪さをしたり、子供を攫って食べられてしまうと言われています。

だから、この日だけは……悪魔や魔女といった姿に仮装して悪霊から身を守るよう伝えられています。

町の中も、仮装した子供や大人が溢れていると聞きます。王都でも、人気のイベントでした。

怪我する前は…公爵夫人としての心得や護身術、勉強などで忙しかったから、参加したことは無かったけど……怪我をして車椅子に乗るようになってからは、屋敷の外に出る事を禁止されていたから一度も収穫祭に出たことが無い。

って……レオン様やお義母様たちに言ったら、驚いた顔をして色々準備して下さいました。



玄関で待ち合わせて、その時までお互いの衣装は内緒で……

「リシア……っ?!」
「レオン様……っ!!」

後ろから声が聞こえ、車椅子を反転させる……!

そこには、金の髪を後ろでひとつに縛り、黒と赤のスーツにマントを付けたレオン様がいました。赤い目と、口からのぞく牙がより一層目を引きます。

私は、青い髪を三つ編みで上げてハーフアップにしています。頭に黒猫の耳をつけて、腰の辺りにしっぽもつけています。ただ、車椅子なので……しっぽは、分かりづらいですね…。

黒のワンピースドレスで、しっぽの先には青いリボン。車椅子の車輪の邪魔にならないよう、スカートや袖の部分は控えめです。

「レオン様は、吸血鬼なのですね?」
「ああ、リシアは黒猫だな」
「はい」

何だか、いつもと違うので少し恥ずかしいです。

「さぁ、行こう」
「はい!」

今日は、この格好のまま一緒に町に出るんです。護衛の方も邪魔にならないよう工夫しながら、動物や悪魔や魔物の姿に仮装しています。

皆さん、時間制で交代して楽しむと聞きました。
良かったです、私たちだけで楽しんで護衛の方が楽しめないのでは、私達も本当の意味で楽しむ事は出来ませんから。

町の中は、かぼちゃを切り抜いた飾りの他、かぼちゃやお化けのランタンが飾りが所狭しに飾られていました。

大人も子供も、様々な仮装をしている。
今日は、屋台も多く出ているいみたいで呼び込みの店員さんに良く声をかけられる。

「黒猫のお姉さん!葡萄ジュースはいかが?甘くて美味しいわよぉ」
「まぁ、可愛い入れ物ね」
「でしょ?鍛治のおじさんに特注しちゃった!」

入れ物がお化けや猫の形になっていて、猫なんてしっぽ部分が取っ手になっているの。

「欲しいのか?」
「え?……あ、えっと…」
「2つ、貰えるか?」
「まいどあり!」

すごく可愛いくて凝視していたから、レオン様が買って下さいました。

「良いのですか?レオン様」
「あぁ、向こうで飲むか」

道から少し外れ、レオン様から黒猫の方の入れ物を渡された。それからレオン様は、隣の屋台に行き、かぼちゃのパウンドケーキを数切れ買ってきてくれました。

「レオン様、ジュースの中に葡萄が入ってます!」
「そうだな、コレも食べてみるか?」
「え?」

ベンチの横に車椅子を横付けして、レオン様はパウンドケーキを口元に持ってきて下さいます。
口を開きかけて気付きましたが、ここは外ですよね?!2人きりの部屋の中ならまだしも……外でもやるんですか?!

町の人が、こちらを見ている気がして……恥ずかしいです……私が真っ赤になって俯いていると、レオン様に名前を呼ばれました。

「レオンさ……ん」

振り向き様にチュッとリップ音を響かせて、レオン様の唇は離れ舌なめずりをしながらニヤッと笑いました。

「な、なっ……レオン様っ!」

大声を出しそうになったけど、すんでの所で周りの状況を思い出し、小声でレオン様に抗議の視線を送りましたけれど、彼は私の視線を軽く受け流したのです。

「リシアが、顔を隠すのが悪い」
「わ、私のせいですか?」
「ああ」

レオン様が真顔で頷くから、納得しそうになりましたが……絶対に違いますよね?!

「レオン様、1人で食べれますっ」
「ふ、残念だ」

そう言って、紙に包まれたパウンドケーキを渡してくれました。

「もうっ!」


私が少し怒りながらパウンドケーキを食べていると、レオン様が真面目な顔で「最近」と話し始めました。

「リシアが……」

私が?

「よく笑うし、よく怒る。表情が前より豊かで、俺は嬉しいんだ」
「レオン様……私が感情豊かになったのならそれは、レオン様やお義母様、お義父様や使用人の皆さんの優しさのおかげです」

いつも……レオン様に手玉に取られている気がしますから、今度は私が……

「レオン様、愛してます」
「リシア?」

レオン様の唇に中指と人差し指を当てなぞり、引き寄せられるようにその唇にキスをした。

……そして、 離れようとした時……

「んっ……」
「もう少し……」

後頭部に手を回され、レオン様から離れられない。
息継ぎの為に微かにに開いた唇から、彼の舌が私の舌を絡めとっていく…その後、口の中をなぞるように彼の舌が動く。

「はっ……レォ…」
「リシア……」
「んぁ……」

とろんとした目をレオン様に向けると彼は、ハッとした顔になって離れていきました。

「すまない…」
「い、いえ……」

急にお互い恥ずかしくなって顔を背けたけれど…

「祭りはまだ続く、行くか」
「はい、レオン様」

私の車椅子を押して、彼は移動を始めた。
街の中心部は、レオン様が街の人達と協力して車椅子でも移動できるよう整備してくれていたそうです。

お陰で、収穫祭をみんなと一緒に過ごす事が出来ました。

「レオン様」
「なんだ」

「ありがとうございます、レオン様」
「……っ、ああ」

レオン様の方を向きながら、感謝の言葉を伝えます。何度伝えても足りない、私を受け入れて下さったこと……



~完~
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