帝国に売られた伯爵令嬢、付加魔法士だと思ったら精霊士だった

紫宛

文字の大きさ
19 / 38
本編

閑話② 精霊王と最高位精霊

しおりを挟む
ここは、精霊界。
人間の住む世界とは別次元に存在する世界。
精霊の王が作り出す美しい世界。

そこに、炎の最高位精霊ファルクが姿を現した。セシリアを帝国に無事送り届け、人間共に警告し、王に報告するため精霊界に帰還した。

最高位精霊は、基本精霊界に住まない。
彼らは人間界に留まり、精霊界の調和を守る。

人間界で人々が争い、負の感情が満ちると精霊界にも影響が出てしまう。
だから全ての最高位精霊は、人間界に留まり、人々を守り癒し、負の感情を浄化する。

これは、世界の真理であり、精霊王でも変えられない宿命さだめだった。
例えどんなに人間共を嫌っていても、精霊界を守るためには、人間界をも守らなければならなかった。

人間を憎く思う彼らだが、たまに気に入る人間が現れる。最高位精霊は、気に入った人間を愛し子と呼び、自分たちの力を貸し与える。

そして、生まれたのが精霊付加魔法士、精霊士だった。

滅多に現れないが、今世もっとも驚くべき事態が起きた。

それは……

精霊王ランティスが一人の少女を気に入った事だ。そして、全ての最高位精霊もまた少女を気に入った。

精霊王と契約した少女の名はセシリア、母親が亡くなって数ヶ月後の事だった。




「王よ、いま戻った」
「ちょっと、ファルク!ずるいじゃない!?1人でリアの元に行くなんて!私も行きたかったわっ」

水の最高位がファルクに詰め寄る。
風も土も皆が不機嫌そうにファルクを見つめた。

「仕方ないだろう、お前らはまだ、フラウゼルから離れられなかったのだから」
「む~~~」
「それで……リアは元気そぅ?」

か細い声で話しかけて来たのは、聖の最高位ヴァル。

「ああ、帝国の奴らも、まぁ悪くなさそうだ」
「本当なんでしょうね!?フラウゼルの様な奴らなら、私が沈めてやるわよっ?」
「大丈夫だ。今そんな事をすればリアに嫌われるぞ。リアは、帝国の奴らを気に入ったようだからな」
「ちゃんと警告したのか?」

普段は滅多に口をきかない闇の最高位キースだが、リアの事となると饒舌になるようだ。

「ああ、当然だ…フラウゼルの様な奴らなら、この俺が、その場で燃やし尽くしていた」

この言葉を、アインス皇帝が聞いていたら、肝が冷えた事だろう。警告する前から、彼らを見定めていた事をアインス皇帝は知らない。
だが、まぁ、アインス皇帝達は、ファルクのお眼鏡には適ったようだ。

「お前達、時は来た」
「…………」
「リアを蔑ろにし愚弄した人間共に、我らの力を示せ!彼の国を滅ぼしても構わぬ!」

精霊王が声高に宣言する。
国を滅ぼすことは、負の感情を増大させる要因……けれど、精霊王は、最高位精霊達は、セシリアを虐めたフラウゼル王国の人間が、どうしても許せなかった。

例え、精霊界を危機に貶める事になっても、彼らは、フラウゼル王国の人間に報復する事を止められない。

それほどに、セシリアを大切に思っていた。





精霊王と最高位精霊の報復が、いま始まろうとしていた。
しおりを挟む
感想 69

あなたにおすすめの小説

聖女の座を追われた私は田舎で畑を耕すつもりが、辺境伯様に「君は畑担当ね」と強引に任命されました

さくら
恋愛
 王都で“聖女”として人々を癒やし続けてきたリーネ。だが「加護が弱まった」と政争の口実にされ、無慈悲に追放されてしまう。行き場を失った彼女が選んだのは、幼い頃からの夢――のんびり畑を耕す暮らしだった。  ところが辺境の村にたどり着いた途端、無骨で豪胆な領主・辺境伯に「君は畑担当だ」と強引に任命されてしまう。荒れ果てた土地、困窮する領民たち、そして王都から伸びる陰謀の影。追放されたはずの聖女は、鍬を握り、祈りを土に注ぐことで再び人々に希望を芽吹かせていく。  「畑担当の聖女さま」と呼ばれながら笑顔を取り戻していくリーネ。そして彼女を真っ直ぐに支える辺境伯との距離も、少しずつ近づいて……?  畑から始まるスローライフと、不器用な辺境伯との恋。追放された聖女が見つけた本当の居場所は、王都の玉座ではなく、土と緑と温かな人々に囲まれた辺境の畑だった――。

お前を愛することはないと言われたので、姑をハニトラに引っ掛けて婚家を内側から崩壊させます

碧井 汐桜香
ファンタジー
「お前を愛することはない」 そんな夫と 「そうよ! あなたなんか息子にふさわしくない!」 そんな義母のいる伯爵家に嫁いだケリナ。 嫁を大切にしない?ならば、内部から崩壊させて見せましょう

あっ、追放されちゃった…。

satomi
恋愛
ガイダール侯爵家の長女であるパールは精霊の話を聞くことができる。がそのことは誰にも話してはいない。亡き母との約束。 母が亡くなって喪も明けないうちに義母を父は連れてきた。義妹付きで。義妹はパールのものをなんでも欲しがった。事前に精霊の話を聞いていたパールは対処なりをできていたけれど、これは…。 ついにウラルはパールの婚約者である王太子を横取りした。 そのことについては王太子は特に魅力のある人ではないし、なんにも感じなかったのですが、王宮内でも噂になり、家の恥だと、家まで追い出されてしまったのです。 精霊さんのアドバイスによりブルハング帝国へと行ったパールですが…。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

妹が公爵夫人になりたいようなので、譲ることにします。

夢草 蝶
恋愛
 シスターナが帰宅すると、婚約者と妹のキスシーンに遭遇した。  どうやら、妹はシスターナが公爵夫人になることが気に入らないらしい。  すると、シスターナは快く妹に婚約者の座を譲ると言って──  本編とおまけの二話構成の予定です。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

処理中です...