25 / 26
新婚夫婦と7つのお茶
7
しおりを挟む
「やっぱりこのままじゃ駄目よね」
夜着の上からガウンを羽織り、いつの間にか勝手知ったるようになった厨房でお気に入りの四葉のクローバーが描かれたポットを見つめるシンシア。気合を入れるように「よしっ」とつぶやくと少し足早に廊下を進む。
トントントン
「どうした?シンシアかい」
月が高く登る時間。女性特有の軽いノックの音にまず一言目「シンシアかい」とトーマスが言うようになったのはいつからか。それくらい二人にとって夜のお茶会は日常だった。
最初は夜のこの時間だけだった二人の時間も気づけばずっと多くなった、目覚めのお茶、朝食、一緒に飲むお茶の回数も最初とは比べ物にはならない。ただ、二人の関係はまだお話し、お出かけし、お茶を楽しむところで止まってしまっている。そこでシンシアは先日の夜を思い出して苦笑いする。
トーマスと観劇に出かけ、世界有数の劇場に数えられるロイヤルシアターの雰囲気と、素敵なお芝居に魅了され、少しばかり興奮したシンシアはトーマスの食後のお茶を楽しむうちに時間を忘れ、すっかり夜が更けてしまった。
いつもならとっくに寝室に向かっている時間になってもまだ話し足りない主人夫妻に続きは寝室でするようブラウン達が勧めてくれたのは、なかなか夫婦の関係が前へ進まないことを悩んでいた事を知る使用人たちの気配りもあったのだろう。トーマスも観劇の余韻が残っていたのか、特に反対することもなく一度身支度をしに別れ、そしてトーマスが主寝室に入ってきてはじめてシンシアはこんな遅くに夫と寝室にいるのが初めてだ、という事実を認識したのだった。
「さて、どこまではなしたっけ」
「えぇっと、そうですわね」
トーマスの方も主寝室の前まできて初めてその事実に思い至ったらしい。夫婦揃って二人でもう少しお話しましょ、くらいの考えしかなかったのだ。
さっきまではあれほど会話が盛り上がっていたのに中央に鎮座する大きなベッドを意識した途端二人の口数は少なくなる。結局夜も更けていたこともあり、十分もしないうちにシンシアはベッドに入り、トーマスはいつも眠っている寝室に戻ることとなった。とはいえ、どうやらトーマスはシンシアが眠るまでは部屋にいてくれたらしく、彼女が眠りに入る直前に感じたのは彼が優しく髪をなでてくれる心地のよい感触だった。
その話をアデルにすると、半ば呆れたように目を細められたが、それでも
「まあ、トーマスにしては頑張ったんじゃない?それに前進もしているわ。だからやっぱりここはシンシアからアピールすべきじゃない?」
と背中を押された。そのハキハキとした声に背中を押され、シンシアは書斎へと足を踏み入れたのだった。
「いつもありがとう、シンシア」
そう言って、彼女を書斎に招き入れたトーマスは彼女の服装に目を止め、そして「おやっ」という顔をするとともに微妙に目を背ける。
「どうしたんだい?シンシア。今日は、なんというかいつもと服装が違うね」
「え、えぇ。実はうっかり先に着替えてしまいまして。これからもう一度ドレスに着替えさせてもらうのも申し訳ないので。やっぱりはしたなかったでしょうか」
そう言うシンシアは、意識して目を伏せ、軽く後退りする。その自信なさげな所作はトーマスの庇護欲を大きく唆った。
「いや、言っても屋敷の中だから構わないが・・・・・、その無理してお茶を淹れに来なくても良いんだぞ」
そう言ってトーマスは思案げにシンシアを覗き込む。夜着、とはいえ彼女が着るのは生地こそ季節に合わせ薄手だが首元まで詰まったものだし、しっかりとガウンも羽織っているので彼女の白い肌はほとんど見えない。
それでも普段より心もとない服装でトーマスとの距離が近づいたシンシアは頬を染め、鼓動が早くなるのを感じつつなんとか言葉を紡ぐ。
「いえ、無理はしてませんわ。それに今日は朝食から全く会えませんでしたから、夜のお茶はご一緒したかったのです」
「それは済まなかった。今日は何かと慌ただしくてな。せっかく店にも来てくれたのに顔も出せなかった」
「いえ、お仕事なのですから仕方ありませんわ。こうして一日の最後にお話できれば十分です」
そう話すシンシアにトーマスは目をほころばせる。以前に比べればずっと近づいた物理的な距離にドギマギしつつ、いつまでもそうしているとお湯も冷めてしまうのでお茶を用意することにする。
「この一杯は旦那様のために・・・・・」
そう歌うシンシアの手元は緊張していようと、狂いはない。今日お店にいった際に勧められて南東諸島のお茶を手慣れた様子で淹れる。そうして入ったお茶をシンシアはトーマスの側に置いた。
「うん、美味しい」
そう言って顔を綻ばせるトーマスにホッとしつつ、シンシアは緊張を隠すように自分もカップを手に取る。お茶のプロであるトーマスにお茶を淹れるのは今でも緊張する。彼に「まずい」と言われたことはないし、かといって嘘をつくような人でもないのは知っているが、こればかりは夜のお茶を淹れ始めたときから変わらない。
ただ今日の緊張はそれとはまた別のものだ。自分を落ち着かせるようにカップの中身を一口飲むと紅茶の香りと暖かさが身体中に広がるのを感じる。その暖かさにゆっくりと落ち着きを取り戻し、そして勇気をもらったシンシアはカップを置くと、ゆっくりとトーマスの方へ近づく。
そして
「えいっ」
と可愛らしい気合の声と共にトーマスの広い背中に軽く勢いをつけて抱きついた。
「おぉっと」
驚くのはトーマス。もちろんトーマスがカップを置いていたのは確認していたからお茶が溢れるようなことはなかったが、それでも予想外の出来事にトーマスは目を白黒とさせ
「シンシア?」
とつぶやく。しかしシンシアはその声には答えず抱きつく力を強めるのみ。その普段とは少し違う妻の様子にトーマスは困惑した。
「どうしたんだシンシア?今日は少しおかしいぞ。実は酔ってたりする?」
最初は紅茶にお酒でも垂らしたのか?と疑ったトーマスだが、流石にお茶にお酒が入っていたら分かるし、抱きつかれたことで間近に感じるシンシアの吐息から酒精は感じない。そもそもシンシアが行動に影響が出るほど酔っているところも見たことはなかった。
何が起きているのか理解できない、といった様子のトーマスにシンシアは「ふふっ」と笑い
「お酒は頂いていませんわ」
と言い、そして一息つくと、覚悟を決めたようにトーマスに尋ねる。
「私は妻として魅力に欠けていますか?」
と。
結婚した当初こそ自己評価がたいそう低かったシンシアだが、トーマスの隣で経済界や社交界に出入りするようになった彼女は凛と前を向くようになった。それは彼が自信を持たなければ相手に掬われると教えたからでもある。そんな彼女が発した言葉にトーマスは目を瞬かせる。
一方シンシアはというと、突然の発言にトーマスが驚いていることは分かったものの、抱きついた腕は振りほどかれないことに安堵し、腕に力をさらに込める。結婚した当初であればもっと自信なさげに俯きがちに伝えただろう言葉。そんな彼女が前を向くようになったのは、トーマスに愛されている、という自信故だ。
「以前旦那様が告白してくださった時、私は『分からない』と答えましたよね。ですが今ははっきりと言えます。私もあなたを愛しています」
その言葉にトーマスはヒュッと息を呑む。慣れないことにまた鼓動が高鳴るのを感じつつシンシアはさらに言葉を続ける。
「そしてわがままになってしまいました。愛しているからこのままの距離じゃ嫌なんです。妻としてあなたに触れてほしいのです」
そこまでなんとか言い切ったシンシアは恥ずかしさのあまりトーマスの方に顔を埋める。おろした髪が広がるのをトーマスが優しくすくのを感じ、シンシアは心地よさと心もとなさを感じて目を閉じる。そんな彼女にトーマスの声が降っててきた。
「妻を不安にさせるなんてまたしても私は夫として失格だな」
そう呟くトーマスに
「いえ、それは私があなたの告白を微妙な言葉で保留したからで・・・・・」
とシンシアが慌てて返すと
「だけど、時はいくらでもあった。ロベルトには『それはほとんど返事しているようなものだろう?』って言われたよ」
そう苦笑すると、一度優しく抱きついたままのシンシアの腕をほどき、そしていつもシンシアが座るソファに誘導する。髪を、そして頬を優しく撫でる仕草にくすぐったげにすると微笑むトーマスと目が合い、シンシアは目をつむる。するとトーマスの影がさらに近づくのを感じ、そして額に優しく唇が押し当てられた。
その感触に一気に体温が上がりつつも少しだけ残念な思いもあるシンシアは瞳を開き、そしてトーマスと視線を合わせる。シンシアの言いたいことを察したのかトーマスは苦笑いのような謝るような顔をする。
「私はこういった経験が少なくてね。とりあえずはこれで許してくれないか?」
正直なところ、シンシアもすでに一杯一杯だ。だがもう少しだけ前に進みたくて。勇気を振り絞る。
「はい・・・・・、でももう少しだけわがままを言いたいです」
そう言って立ち上がると、トーマスにギュッと抱きつきに行く。今度こそ覚悟を決めたのか、目が合ってもう一度瞳を閉じたシンシアの唇に今度はトーマスの口づけが落ち、そしてトーマスの腕がしっかりとシンシアを抱きしめる。
夏のカーテンは月明かりだけを通し、淡く二人を照らす。ゆっくり進む夫婦の距離がどこまで縮まったのか、それは屋敷の人々しか知らないことだった。
夜着の上からガウンを羽織り、いつの間にか勝手知ったるようになった厨房でお気に入りの四葉のクローバーが描かれたポットを見つめるシンシア。気合を入れるように「よしっ」とつぶやくと少し足早に廊下を進む。
トントントン
「どうした?シンシアかい」
月が高く登る時間。女性特有の軽いノックの音にまず一言目「シンシアかい」とトーマスが言うようになったのはいつからか。それくらい二人にとって夜のお茶会は日常だった。
最初は夜のこの時間だけだった二人の時間も気づけばずっと多くなった、目覚めのお茶、朝食、一緒に飲むお茶の回数も最初とは比べ物にはならない。ただ、二人の関係はまだお話し、お出かけし、お茶を楽しむところで止まってしまっている。そこでシンシアは先日の夜を思い出して苦笑いする。
トーマスと観劇に出かけ、世界有数の劇場に数えられるロイヤルシアターの雰囲気と、素敵なお芝居に魅了され、少しばかり興奮したシンシアはトーマスの食後のお茶を楽しむうちに時間を忘れ、すっかり夜が更けてしまった。
いつもならとっくに寝室に向かっている時間になってもまだ話し足りない主人夫妻に続きは寝室でするようブラウン達が勧めてくれたのは、なかなか夫婦の関係が前へ進まないことを悩んでいた事を知る使用人たちの気配りもあったのだろう。トーマスも観劇の余韻が残っていたのか、特に反対することもなく一度身支度をしに別れ、そしてトーマスが主寝室に入ってきてはじめてシンシアはこんな遅くに夫と寝室にいるのが初めてだ、という事実を認識したのだった。
「さて、どこまではなしたっけ」
「えぇっと、そうですわね」
トーマスの方も主寝室の前まできて初めてその事実に思い至ったらしい。夫婦揃って二人でもう少しお話しましょ、くらいの考えしかなかったのだ。
さっきまではあれほど会話が盛り上がっていたのに中央に鎮座する大きなベッドを意識した途端二人の口数は少なくなる。結局夜も更けていたこともあり、十分もしないうちにシンシアはベッドに入り、トーマスはいつも眠っている寝室に戻ることとなった。とはいえ、どうやらトーマスはシンシアが眠るまでは部屋にいてくれたらしく、彼女が眠りに入る直前に感じたのは彼が優しく髪をなでてくれる心地のよい感触だった。
その話をアデルにすると、半ば呆れたように目を細められたが、それでも
「まあ、トーマスにしては頑張ったんじゃない?それに前進もしているわ。だからやっぱりここはシンシアからアピールすべきじゃない?」
と背中を押された。そのハキハキとした声に背中を押され、シンシアは書斎へと足を踏み入れたのだった。
「いつもありがとう、シンシア」
そう言って、彼女を書斎に招き入れたトーマスは彼女の服装に目を止め、そして「おやっ」という顔をするとともに微妙に目を背ける。
「どうしたんだい?シンシア。今日は、なんというかいつもと服装が違うね」
「え、えぇ。実はうっかり先に着替えてしまいまして。これからもう一度ドレスに着替えさせてもらうのも申し訳ないので。やっぱりはしたなかったでしょうか」
そう言うシンシアは、意識して目を伏せ、軽く後退りする。その自信なさげな所作はトーマスの庇護欲を大きく唆った。
「いや、言っても屋敷の中だから構わないが・・・・・、その無理してお茶を淹れに来なくても良いんだぞ」
そう言ってトーマスは思案げにシンシアを覗き込む。夜着、とはいえ彼女が着るのは生地こそ季節に合わせ薄手だが首元まで詰まったものだし、しっかりとガウンも羽織っているので彼女の白い肌はほとんど見えない。
それでも普段より心もとない服装でトーマスとの距離が近づいたシンシアは頬を染め、鼓動が早くなるのを感じつつなんとか言葉を紡ぐ。
「いえ、無理はしてませんわ。それに今日は朝食から全く会えませんでしたから、夜のお茶はご一緒したかったのです」
「それは済まなかった。今日は何かと慌ただしくてな。せっかく店にも来てくれたのに顔も出せなかった」
「いえ、お仕事なのですから仕方ありませんわ。こうして一日の最後にお話できれば十分です」
そう話すシンシアにトーマスは目をほころばせる。以前に比べればずっと近づいた物理的な距離にドギマギしつつ、いつまでもそうしているとお湯も冷めてしまうのでお茶を用意することにする。
「この一杯は旦那様のために・・・・・」
そう歌うシンシアの手元は緊張していようと、狂いはない。今日お店にいった際に勧められて南東諸島のお茶を手慣れた様子で淹れる。そうして入ったお茶をシンシアはトーマスの側に置いた。
「うん、美味しい」
そう言って顔を綻ばせるトーマスにホッとしつつ、シンシアは緊張を隠すように自分もカップを手に取る。お茶のプロであるトーマスにお茶を淹れるのは今でも緊張する。彼に「まずい」と言われたことはないし、かといって嘘をつくような人でもないのは知っているが、こればかりは夜のお茶を淹れ始めたときから変わらない。
ただ今日の緊張はそれとはまた別のものだ。自分を落ち着かせるようにカップの中身を一口飲むと紅茶の香りと暖かさが身体中に広がるのを感じる。その暖かさにゆっくりと落ち着きを取り戻し、そして勇気をもらったシンシアはカップを置くと、ゆっくりとトーマスの方へ近づく。
そして
「えいっ」
と可愛らしい気合の声と共にトーマスの広い背中に軽く勢いをつけて抱きついた。
「おぉっと」
驚くのはトーマス。もちろんトーマスがカップを置いていたのは確認していたからお茶が溢れるようなことはなかったが、それでも予想外の出来事にトーマスは目を白黒とさせ
「シンシア?」
とつぶやく。しかしシンシアはその声には答えず抱きつく力を強めるのみ。その普段とは少し違う妻の様子にトーマスは困惑した。
「どうしたんだシンシア?今日は少しおかしいぞ。実は酔ってたりする?」
最初は紅茶にお酒でも垂らしたのか?と疑ったトーマスだが、流石にお茶にお酒が入っていたら分かるし、抱きつかれたことで間近に感じるシンシアの吐息から酒精は感じない。そもそもシンシアが行動に影響が出るほど酔っているところも見たことはなかった。
何が起きているのか理解できない、といった様子のトーマスにシンシアは「ふふっ」と笑い
「お酒は頂いていませんわ」
と言い、そして一息つくと、覚悟を決めたようにトーマスに尋ねる。
「私は妻として魅力に欠けていますか?」
と。
結婚した当初こそ自己評価がたいそう低かったシンシアだが、トーマスの隣で経済界や社交界に出入りするようになった彼女は凛と前を向くようになった。それは彼が自信を持たなければ相手に掬われると教えたからでもある。そんな彼女が発した言葉にトーマスは目を瞬かせる。
一方シンシアはというと、突然の発言にトーマスが驚いていることは分かったものの、抱きついた腕は振りほどかれないことに安堵し、腕に力をさらに込める。結婚した当初であればもっと自信なさげに俯きがちに伝えただろう言葉。そんな彼女が前を向くようになったのは、トーマスに愛されている、という自信故だ。
「以前旦那様が告白してくださった時、私は『分からない』と答えましたよね。ですが今ははっきりと言えます。私もあなたを愛しています」
その言葉にトーマスはヒュッと息を呑む。慣れないことにまた鼓動が高鳴るのを感じつつシンシアはさらに言葉を続ける。
「そしてわがままになってしまいました。愛しているからこのままの距離じゃ嫌なんです。妻としてあなたに触れてほしいのです」
そこまでなんとか言い切ったシンシアは恥ずかしさのあまりトーマスの方に顔を埋める。おろした髪が広がるのをトーマスが優しくすくのを感じ、シンシアは心地よさと心もとなさを感じて目を閉じる。そんな彼女にトーマスの声が降っててきた。
「妻を不安にさせるなんてまたしても私は夫として失格だな」
そう呟くトーマスに
「いえ、それは私があなたの告白を微妙な言葉で保留したからで・・・・・」
とシンシアが慌てて返すと
「だけど、時はいくらでもあった。ロベルトには『それはほとんど返事しているようなものだろう?』って言われたよ」
そう苦笑すると、一度優しく抱きついたままのシンシアの腕をほどき、そしていつもシンシアが座るソファに誘導する。髪を、そして頬を優しく撫でる仕草にくすぐったげにすると微笑むトーマスと目が合い、シンシアは目をつむる。するとトーマスの影がさらに近づくのを感じ、そして額に優しく唇が押し当てられた。
その感触に一気に体温が上がりつつも少しだけ残念な思いもあるシンシアは瞳を開き、そしてトーマスと視線を合わせる。シンシアの言いたいことを察したのかトーマスは苦笑いのような謝るような顔をする。
「私はこういった経験が少なくてね。とりあえずはこれで許してくれないか?」
正直なところ、シンシアもすでに一杯一杯だ。だがもう少しだけ前に進みたくて。勇気を振り絞る。
「はい・・・・・、でももう少しだけわがままを言いたいです」
そう言って立ち上がると、トーマスにギュッと抱きつきに行く。今度こそ覚悟を決めたのか、目が合ってもう一度瞳を閉じたシンシアの唇に今度はトーマスの口づけが落ち、そしてトーマスの腕がしっかりとシンシアを抱きしめる。
夏のカーテンは月明かりだけを通し、淡く二人を照らす。ゆっくり進む夫婦の距離がどこまで縮まったのか、それは屋敷の人々しか知らないことだった。
11
あなたにおすすめの小説
遡ったのは君だけじゃない。離縁状を置いて出ていった妻ーー始まりは、そこからだった。
沼野 花
恋愛
夫と子供たちに、選ばれなかったイネス。
すべてを愛人に奪われ、彼女は限界を迎え、屋敷を去る。
だが、その先に待っていたのは、救いではなかった。
イネスを襲った、取り返しのつかない出来事。
変わり果てた現実を前に、
夫はようやく、自分が何を失ったのかを思い知る。
深い後悔と悲しみに苛まれながら、
失ったイネスの心を取り戻そうとする夫。
しかし、彼女の心はすでに、外の世界へと向かっていた。
贖罪を背負いながらもイネスを求め続ける夫。
そして、母の心を知っていく子供たち。
イネスが求める愛とは、
そして、幸せとは――。
私が素直になったとき……君の甘過ぎる溺愛が止まらない
朝陽七彩
恋愛
十五年ぶりに君に再開して。
止まっていた時が。
再び、動き出す―――。
*◦*◦*◦*◦*◦*◦*◦*◦*◦*◦*◦*◦*◦*◦*◦*◦*
衣川遥稀(いがわ はるき)
好きな人に素直になることができない
松尾聖志(まつお さとし)
イケメンで人気者
*◦*◦*◦*◦*◦*◦*◦*◦*◦*◦*◦*◦*◦*◦*◦*◦*
働かないつもりでしたのに、気づけば全部うまくいっていました ――自由に生きる貴族夫人と溺愛旦那様』
鷹 綾
恋愛
前世では、仕事に追われるだけの人生を送り、恋も自由も知らないまま終わった私。
だからこそ転生後に誓った――
「今度こそ、働かずに優雅に生きる!」 と。
気づけば貴族夫人、しかも結婚相手は冷静沈着な名門貴族リチャード様。
「君は何もしなくていい。自由に過ごしてくれ」
――理想的すぎる条件に、これは勝ち確人生だと思ったのに。
なぜか気づけば、
・屋敷の管理を改善して使用人の待遇が激変
・夫の仕事を手伝ったら経理改革が大成功
・興味本位で教えた簿記と珠算が商業界に革命を起こす
・商人ギルドの顧問にまで祭り上げられる始末
「あれ? 私、働かない予定でしたよね???」
自分から出世街道を爆走するつもりはなかったはずなのに、
“やりたいことをやっていただけ”で、世界のほうが勝手に変わっていく。
一方、そんな彼女を静かに見守り続けていた夫・リチャードは、
実は昔から彼女を想い続けていた溺愛系旦那様で――。
「君が選ぶなら、私はずっとそばにいる」
働かないつもりだった貴族夫人が、
自由・仕事・愛情のすべてを“自分で選ぶ”人生に辿り着く物語。
これは、
何もしないはずだったのに、幸せだけは全部手に入れてしまった女性の物語。
愛を騙るな
篠月珪霞
恋愛
「王妃よ、そなた一体何が不満だというのだ」
「………」
「贅を尽くした食事、ドレス、宝石、アクセサリー、部屋の調度も最高品質のもの。王妃という地位も用意した。およそ世の女性が望むものすべてを手に入れているというのに、何が不満だというのだ!」
王妃は表情を変えない。何を言っても宥めてもすかしても脅しても変わらない王妃に、苛立った王は声を荒げる。
「何とか言わぬか! 不敬だぞ!」
「……でしたら、牢に入れるなり、処罰するなりお好きに」
「い、いや、それはできぬ」
「何故? 陛下の望むままなさればよろしい」
「余は、そなたを愛しているのだ。愛するものにそのような仕打ち、到底考えられぬ」
途端、王妃の嘲る笑い声が響く。
「畜生にも劣る陛下が、愛を騙るなどおこがましいですわね」
転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました
桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。
言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。
しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。
──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。
その一行が、彼の目に留まった。
「この文字を書いたのは、あなたですか?」
美しく、完璧で、どこか現実離れした男。
日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。
最初はただの好奇心だと思っていた。
けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。
彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。
毎日19時に更新予定です。
魔法師団長の家政婦辞めたら溺愛されました
iru
恋愛
小説家になろうですでに完結済みの作品です。よければお気に入りブックマークなどお願いします。
両親と旅をしている途中、魔物に襲われているところを、魔法師団に助けられたティナ。
両親は亡くなってしまったが、両親が命をかけて守ってくれた自分の命を無駄にせず強く生きていこうと決めた。
しかし、肉親も家もないティナが途方に暮れていると、魔物から助けてくれ、怪我の入院まで面倒を見てくれた魔法師団の団長レオニスから彼の家政婦として住み込みで働かないと誘われた。
魔物から助けられた時から、ひどく憧れていたレオニスの誘いを、ティナはありがたく受ける事にした。
自分はただの家政婦だと強く言い聞かせて、日に日に膨らむ恋心を抑え込むティナだった。
一方、レオニスもティナにどんどん惹かれていっていた。
初めはなくなった妹のようで放っては置けないと家政婦として雇ったが、その健気な様子に強く惹かれていった。
恋人になりたいが、年上で雇い主。
もしティナも同じ気持ちでないなら仕事まで奪ってしまうのではないか。
そんな思いで一歩踏み出せないレオニスだった。
そんな中ある噂から、ティナはレオニスの家政婦を辞めて家を出る決意をする。
レオニスは思いを伝えてティナを引き止めることができるのか?
両片思いのすれ違いのお話です。
氷の宰相補佐と押しつけられた厄災の花嫁
瑞原唯子
恋愛
王命により、アイザックはまだ十歳の少女を妻として娶ることになった。
彼女は生後まもなく始末されたはずの『厄災の姫』である。最近になって生存が判明したが、いまさら王家に迎え入れることも始末することもできない——悩んだ末、国王は序列一位のシェフィールド公爵家に押しつけたのだ。
王太子妃専属侍女の結婚事情
蒼あかり
恋愛
伯爵家の令嬢シンシアは、ラドフォード王国 王太子妃の専属侍女だ。
未だ婚約者のいない彼女のために、王太子と王太子妃の命で見合いをすることに。
相手は王太子の側近セドリック。
ところが、幼い見た目とは裏腹に令嬢らしからぬはっきりとした物言いのキツイ性格のシンシアは、それが元でお見合いをこじらせてしまうことに。
そんな二人の行く末は......。
☆恋愛色は薄めです。
☆完結、予約投稿済み。
新年一作目は頑張ってハッピーエンドにしてみました。
ふたりの喧嘩のような言い合いを楽しんでいただければと思います。
そこまで激しくはないですが、そういうのが苦手な方はご遠慮ください。
よろしくお願いいたします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる