ばあばのごはん

原李子

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ばあばのごはん

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「今日はハヤシ。鍋一杯作ったけん。あと、豚肉ば炒めたやつとさ。レタス。魚の、アジばひらいたやつ。あとスイカ。もうさ、下手なおやつよか、スイカよスイカ。全部持たせてるけんお嫁さん、今日はなんもせんでよかよ。」
 私が初めて会った時もこんな感じだったなあ。いつもこんな感じ。無茶苦茶元気。なんか余命、とか言われたことあるらしいけど。
彼女の話は私にとってはごちそうだ。すごく豊かでおいしい。
彼女の人生は波乱万丈。離婚して、女手一つで息子を育てて。息子さんが結婚し共働き家庭になったら、小さい孫ちゃん達を迎えに行ったりお家で預かって支援していた。
「あんた、そげんしてやったって、孫成人するまで生きとらんめーもん。孫なんもかえしてくれんばい。」とある人は言う。でも
「私、そげなこと思ったことないよ。今、可愛いもん。可愛いだけでありがたいもん。幸せよー。」と言っちゃう。
「えー。娘の産んだ子やったら可愛いけど、嫁のは可愛いかねぇ。」とまたある人も、言う。けれど
「私、そうは思わん。息子の血をひいとる孫やん。分けんよ。お嫁さんにも、産んでくれてありがとーやし。」なんだ。とにかく。
「孫っちゃこげん可愛かもんやっか。」といい保育園の掃除のバイト、ペーパー配布のバイトを掛け持ちする。雨の日も風の日も。
「『いやー。お義母さんやめてー。流されたらどうするとよ。』って嫁に言われたけどね。」と笑う。私も、「私も、流されてほしくない。」と言ったですよ。
日々大きくなっていく孫ちゃん達にたっぷりいいもんとかって、バイト代使い切っちゃう。そんで「孫ってよかねえ。」と、目を細めてうっとり言うのだ。
生きてる時、今この時が大事とばかり台所にて、今日もごちそうを作る。大切な人たちのために。
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