ここは西の果て 恋する魔法姫は兄を身代わりに海を越える

原李子

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第六章 天罰

ここは西の果て 恋する魔法姫は兄を身代わりに海を越える

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 男は思う。なぜ負け戦なのに兵に金を払わなければならぬのか。
 王は払ってこい、と言って、男に金を預けた。しかし、この金があれば、海の向こうの”銀の島”へ行き、国に巨万の富を持ち帰ることができよう。
 その為には、この街の船が必要だ。航海術も。我が国の技術では、目の前のウォール王国にすら辿り着けない。(実際は”グリンダ”が侵入を拒んでいるため、辿り着けない)
 …目の前のパンも、ワインも、魚も、神の膝元である我が国のものより、よほど質が良い。こんなことが許されていいのか。

 兵達は思った。いつになれば帰れるのかと。神の代行者たる国王の命をうけ、あの街を神の従順なる僕にすべく取り囲んで攻めて。しかし、逆に神の御業のような方法で抵抗されて。我々には苦難が降りかかる。金もなく物も買えず、言葉も分からない。出入りの者を襲っても、すぐに捕まる。ならいっそ。

 「旦那様。船が完成したそうでございます。」
 「おお、そうか。今行く。」男はいそいそと立ち上がった。
 
 「神の御意志に添わぬ街の者どもを皆殺しにせよ。」
 そして、行動に出る。街の門前。

 それは感じたことのない気配。
 「エマ先生。ここは危ない。」青ざめたヤコブ氏が部屋にやって来た。
 「ラス。」呼んだ先に巨鳥。
 「参りましょう。」手を差し伸べて。

 門前の大勢の男達。
 「神の名において成敗いたす。」
 「街の金を差し出せ。」と口々に喚いている。人々に手を出そうとした、その時。
 男達はすべて空に巻き上げられる。
 「神?あなたがたの言う神とは何ですか?神の名を騙り戦を仕掛けるなら天罰がくだるでしょう。」
 そこには肩に白い鳥を乗せた、神々しい女。女神?
 「うわああああ。」
 エルンストが縛り上げられた男を連れてくる。
 「お前たちの金はこいつが支払う。とっととこの街から出ていけ。」
 男達はまとめて放り出された。
 
 「…無事でよかった。エルンストさん。」
 さっきまでの恐ろしい雰囲気は消え、消え入りそうな声でそう言われ。ひょっとして彼女がこの街に来たのは、とか思う。後ろにはヤコブ。しかし。
 「…はい。」そっと、抱き留める。
 とたん、周囲はわっという歓声に包まれた。

 『え?まだ帰れない?』とりあえず心配事は片付いたんじゃ?
 妹曰く、エルンスト氏にまだ色々話せていないとの事。そんな…。
 なるべく早く帰ってきて欲しい。しかし、深窓の妹には難しい、のか。
 『分かった…。まあ、がんばって。
 『ええ。なるべく早く帰ってきますわ。』
 力いっぱい言うけれど一体帰国がいつなのか全くみえないのだった。
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