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284.旅路2
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「アルフレート様、ご武運を」
二人の男が誠一に向けて敬礼をした。
鎧に施された意匠からテルトリア騎士団の者であることが
誠一には分かった。誠一は頷いて馬車に乗り込んだ。
「ヴェル、ライトは解除して。私が先行の騎馬にライトを展開するよ。
ヴェルは馬車に灯す明りで対処して」
シエンナはライトの魔術をロジェとキャロリーヌの前方に展開した。
珍しく剣豪は働いていた。
馬車の四隅にあるランプにすばやく炎を灯していた。
しかし、当然の如くその仕事が終わったら、
荷車の中で外套に包まり眠り始めた。
サリナは自分に何か出来る事はないか探していたが、
シエンナの言葉に従い、大人しく外套に包まった。
「サリナ、あなたは怪我の具合が悪すぎる。
ここまで来るのも大変だったでしょ。身体を休めることが仕事よ。
逆に荷車の中でおろおろされるとこっちが集中できな」
誠一も最もだと思った。サリナが大人しく従ったために
誠一は動き出したロジェたちの後を追うべく馬に指示を与えた。
「うーむ、運搬用故に寝心地がよろしくないでござる。
町で馬車へ魔術の付与が必要ですな、アルフレート様」
馬車の揺れが気になるのか、寝れずにいる剣豪が
四六時中、誠一に話かけてきた。
適当にあしらう誠一だった。暗闇を走るだけでも
相当な緊張を強いられている誠一にとって、
剣豪の愚痴に付き合っている余裕はなかった。
「ところでアル、竜公国へとグレートウォールには、
どのように入国するつもりなの?」
シエンナの問いについて、幾つかの案を誠一は既に考えていた。
「そうだね、幾つか候補があるけど、どうすべきか迷っている。
このまま亡命という手もあるし、身分を偽って傭兵として志願、
それとも商人として潜り込むか」
「うーんうーん、難しい選択よね」
シエンナも迷っているようだった。
「亡命はおそらくダンブルが好待遇で僕らを迎え入れて、
大々的に宣伝するだろうね。
中立派の取り込みに利用されるけど、中枢の情報を得やすいかもしれない」
誠一の説明にシエンナが頷いた。
「監視されやすい立場にいるし、
バレたら、逃げ切れそうにないわね」
誠一が苦笑した。
「冒険者証を使って、傭兵として潜入するのもありだね。
それだと中枢に喰い込むための戦功を挙げるのに
時間がかかるかもしれない。
傭兵たちの噂話も馬鹿にはできないけど、
情報の精度はかなり落ちるのが難点かな」
誠一の説明にまたしてもシエンナが頷いた。
「危険を感じて、ふらっと消えても大丈夫そうだし、
攪乱のための偽情報を流したりするのにはいいかもしれないね」
誠一はまたしても苦笑した。
「ある程度の自由があって、攪乱工作もそれとなく出来る上に
扱う商品次第では、ダンブル派の貴族たちに
取り入ることもできそうな商人が良いのかな」
誠一の説明にシエンナが小首を傾げた。
「うーん、そうなんだけど。
商人ギルドに入会して間もないと疑われるし、
貴族の喜びそうなラインナップとなると、それなりの資金が必要よね。
アル、それらがあるの?」
荷車から剣豪の声が聞えて来た。
暇なので話に混ざりたいのだろうと誠一は思った。
二人の男が誠一に向けて敬礼をした。
鎧に施された意匠からテルトリア騎士団の者であることが
誠一には分かった。誠一は頷いて馬車に乗り込んだ。
「ヴェル、ライトは解除して。私が先行の騎馬にライトを展開するよ。
ヴェルは馬車に灯す明りで対処して」
シエンナはライトの魔術をロジェとキャロリーヌの前方に展開した。
珍しく剣豪は働いていた。
馬車の四隅にあるランプにすばやく炎を灯していた。
しかし、当然の如くその仕事が終わったら、
荷車の中で外套に包まり眠り始めた。
サリナは自分に何か出来る事はないか探していたが、
シエンナの言葉に従い、大人しく外套に包まった。
「サリナ、あなたは怪我の具合が悪すぎる。
ここまで来るのも大変だったでしょ。身体を休めることが仕事よ。
逆に荷車の中でおろおろされるとこっちが集中できな」
誠一も最もだと思った。サリナが大人しく従ったために
誠一は動き出したロジェたちの後を追うべく馬に指示を与えた。
「うーむ、運搬用故に寝心地がよろしくないでござる。
町で馬車へ魔術の付与が必要ですな、アルフレート様」
馬車の揺れが気になるのか、寝れずにいる剣豪が
四六時中、誠一に話かけてきた。
適当にあしらう誠一だった。暗闇を走るだけでも
相当な緊張を強いられている誠一にとって、
剣豪の愚痴に付き合っている余裕はなかった。
「ところでアル、竜公国へとグレートウォールには、
どのように入国するつもりなの?」
シエンナの問いについて、幾つかの案を誠一は既に考えていた。
「そうだね、幾つか候補があるけど、どうすべきか迷っている。
このまま亡命という手もあるし、身分を偽って傭兵として志願、
それとも商人として潜り込むか」
「うーんうーん、難しい選択よね」
シエンナも迷っているようだった。
「亡命はおそらくダンブルが好待遇で僕らを迎え入れて、
大々的に宣伝するだろうね。
中立派の取り込みに利用されるけど、中枢の情報を得やすいかもしれない」
誠一の説明にシエンナが頷いた。
「監視されやすい立場にいるし、
バレたら、逃げ切れそうにないわね」
誠一が苦笑した。
「冒険者証を使って、傭兵として潜入するのもありだね。
それだと中枢に喰い込むための戦功を挙げるのに
時間がかかるかもしれない。
傭兵たちの噂話も馬鹿にはできないけど、
情報の精度はかなり落ちるのが難点かな」
誠一の説明にまたしてもシエンナが頷いた。
「危険を感じて、ふらっと消えても大丈夫そうだし、
攪乱のための偽情報を流したりするのにはいいかもしれないね」
誠一はまたしても苦笑した。
「ある程度の自由があって、攪乱工作もそれとなく出来る上に
扱う商品次第では、ダンブル派の貴族たちに
取り入ることもできそうな商人が良いのかな」
誠一の説明にシエンナが小首を傾げた。
「うーん、そうなんだけど。
商人ギルドに入会して間もないと疑われるし、
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暇なので話に混ざりたいのだろうと誠一は思った。
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