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662.氷竜7
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『汝らは何を求めて、挑む?』
誠一たちの心に直接、氷竜の言葉が流れ込んだ。
「氷の雫だ。
涙を流してくれんなら、無駄な争いはなしになるぜ」
ヴェルが吠えた。
『それか、しかし生憎と今は眠くないのでな。
欠伸一つでぬわ。命を惜しむなら、ここより去るがよい』
氷竜はこの話は終りとばかりにそっぽを向いた。
「アル、どうするんだ?ちょっとばっかし泣いて貰うか?」
「エドワード陛下の騎乗する金色の竜よりは弱そうなのです」
ヴェルとアミラどちらの言葉に反応したのか
誠一たちには分からなかったが、氷竜が怒気を
発したことだけは理解できた。
「左程、声が大きかった訳でもないのに
二人の煽り文句が聞えたんだろうね」
誠一はため息をついた。
「図体がでかいくせになんて地獄耳だよ」
「小物感満載なのです」
誠一は全力でこの二人を止めたかった。
息の合った煽り文句が次から次へと飛び出していた。
表情を読みにくいと言われている竜種だが、
目の前の竜が激怒していることは、
その表情からありありと分かった。
『良く分かった。おまえらは死にたいんだな。
ならその希望をかなえてやろう』
マリアンヌを除くメンバーは既に粛々と戦いの準備を整えていた。
「いやちょっと待て。アルフレート、君は何も言わないのか。
このままだと闇雲に戦いになるぞ」
誠一は既に諦めていた。
マリアンヌに竜の表情を改めて、見る様に促した。
マリアンヌも察した。
「これは交渉も何もあったものではないな。
いつものことなのかな?」
「ええ、ヴェルの暴走は常ですから。
止めるより早くいつもこうなっています」
「アル、今の俺の実力をよーく見ておけよ。
見て尚、そんな戯言を吐けるなら吐くんだな。
アミラ、少し離れてくれ」
ちょっと違うような気がしたが、
今はヴェルのやりたいように誠一はやらせた。
後ほど説教だなと決めた。
如何に実力があろうが、暴走されるのは困る
と思う誠一だった。
ヴェルはハルバートを高々と淀んだ雲に覆われた空に向けて掲げた。
「荒ぶる炎よ、全てを燃やし尽くし、
世界を再生しろぉー。フレイムチャージ」
ハルバートの穂先、正確には魔石から
凄まじい炎が吹き上がった。炎は不死鳥の如きフォルムを形作った。
ヴェルはその場から一歩も動かなかった。
炎は雪を雲を侵食し、その領域を雪の世界から解放した。
誠一は額に汗を流していた。
それは彼だけでなく、他のメンバーも同様であった。
誠一の視線はヴェルの背中に貼りついて動かなかった。
ゆっくりと不死鳥がヴェルを覆っていった。
誠一の流す汗は熱によるものだけはなかった。
無意識にヴェルを下に見ていた誠一の焦りの証明でもあった。
一意専心、それは誠一が苦手とするところであったが、
それを体現し、己の背中に迫りくる男の姿を誠一は
目の当りにしていた。
少年は青年に成長し、心も体も誠一にまた一歩、近づいた。
誠一たちの心に直接、氷竜の言葉が流れ込んだ。
「氷の雫だ。
涙を流してくれんなら、無駄な争いはなしになるぜ」
ヴェルが吠えた。
『それか、しかし生憎と今は眠くないのでな。
欠伸一つでぬわ。命を惜しむなら、ここより去るがよい』
氷竜はこの話は終りとばかりにそっぽを向いた。
「アル、どうするんだ?ちょっとばっかし泣いて貰うか?」
「エドワード陛下の騎乗する金色の竜よりは弱そうなのです」
ヴェルとアミラどちらの言葉に反応したのか
誠一たちには分からなかったが、氷竜が怒気を
発したことだけは理解できた。
「左程、声が大きかった訳でもないのに
二人の煽り文句が聞えたんだろうね」
誠一はため息をついた。
「図体がでかいくせになんて地獄耳だよ」
「小物感満載なのです」
誠一は全力でこの二人を止めたかった。
息の合った煽り文句が次から次へと飛び出していた。
表情を読みにくいと言われている竜種だが、
目の前の竜が激怒していることは、
その表情からありありと分かった。
『良く分かった。おまえらは死にたいんだな。
ならその希望をかなえてやろう』
マリアンヌを除くメンバーは既に粛々と戦いの準備を整えていた。
「いやちょっと待て。アルフレート、君は何も言わないのか。
このままだと闇雲に戦いになるぞ」
誠一は既に諦めていた。
マリアンヌに竜の表情を改めて、見る様に促した。
マリアンヌも察した。
「これは交渉も何もあったものではないな。
いつものことなのかな?」
「ええ、ヴェルの暴走は常ですから。
止めるより早くいつもこうなっています」
「アル、今の俺の実力をよーく見ておけよ。
見て尚、そんな戯言を吐けるなら吐くんだな。
アミラ、少し離れてくれ」
ちょっと違うような気がしたが、
今はヴェルのやりたいように誠一はやらせた。
後ほど説教だなと決めた。
如何に実力があろうが、暴走されるのは困る
と思う誠一だった。
ヴェルはハルバートを高々と淀んだ雲に覆われた空に向けて掲げた。
「荒ぶる炎よ、全てを燃やし尽くし、
世界を再生しろぉー。フレイムチャージ」
ハルバートの穂先、正確には魔石から
凄まじい炎が吹き上がった。炎は不死鳥の如きフォルムを形作った。
ヴェルはその場から一歩も動かなかった。
炎は雪を雲を侵食し、その領域を雪の世界から解放した。
誠一は額に汗を流していた。
それは彼だけでなく、他のメンバーも同様であった。
誠一の視線はヴェルの背中に貼りついて動かなかった。
ゆっくりと不死鳥がヴェルを覆っていった。
誠一の流す汗は熱によるものだけはなかった。
無意識にヴェルを下に見ていた誠一の焦りの証明でもあった。
一意専心、それは誠一が苦手とするところであったが、
それを体現し、己の背中に迫りくる男の姿を誠一は
目の当りにしていた。
少年は青年に成長し、心も体も誠一にまた一歩、近づいた。
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