705 / 978
696.気持ち1
しおりを挟む
流石はエスターライヒ家の門番だと誠一は感心した。
特に誰も見ていないにも関わらず門番に立つ兵は
直立不動の態を保っていた。
無論、これは現当主アーロンがつい最近まで
逗留していたことと次期当主ラムデールが
逗留しているからであった。
門番と誠一は目があった。門番は最敬礼で誠一を出迎えた。
「アルフレート様、お帰りなさいませ」
「久しぶりですね。
お手数をかけますが、ミシャに戻ったことを
伝えてください。
それと暫く逗留することもお願いします」
誠一は門番にそう伝えると、以前、使っていた部屋に向かった。
「やあ、ミシャ。父上が領地に戻って、のびのびとしているな」
屋敷の大広間に直立不動の態で誠一を迎えたミシャに声をかけた。
「アルフレート様、お戯れを。
このミシャ、いつ何時もエスターライヒ家のために
尽くす所存でございます」
表情、態度を一切崩さずにミシャが返答した。
「部屋はそのままにしてあるな?」
「アーロン様よりお達しがございました。
アルフレート様の私室としてお使いください」
「そうか、父上がそう言ったか。わかった。
不在時は、定期的に空気の入れ替えと掃除を頼む。
盗み読みされて困るモノもないしな」
慇懃な態度のミシャに鷹揚に答える誠一だった。
以前の彼との確執と侮蔑への意趣返しのつもりで
尊大な態度を取った誠一だった。
しかし、内心はどうであれミシャの表情と態度を
崩すことはできなかった。
「アルフレート様、お戯れはその位にして頂きまして、
お夕食になさいますか?」
内心を容易に見透かされた誠一は、
逆にあたふたと慌ててしまった。
「いやあの夕食はいいです。
少し落ち着いたら、外出してきます」
そう言い残し、誠一は足早にこの場を去った。
ミシャは誠一の目に映らずとも完璧な礼儀作法に
則って誠一に向かって一礼をした。
誠一は荷物を部屋に降ろすと、身体を拭い、服を着替えた。
そして、すぐさま魔術院に向かった。
魔術院に到着すると、誠一の足は最上階の学院長室と
真逆の地下に向かっていた。
螺旋階段を降り、一つの扉を押し開けた。
その部屋の床には魔術陣が施されていた。
誠一は陣の中央に立ち、魔術を唱えると、
蒼白い光が彼を包んだ。
誠一は『深淵の廻廊』の最深部、
クリスタルの森に転移した。
瞳を開いた誠一は咄嗟に7面メイスを構えた。
誰もいなければ、揺らぐことのない空気が
激しく渦巻いていた。
隠そうともしない烈気は誠一ならずとも
容易に感じられほどであった。
今、この場にいるのがファウスティノや
剣豪鬼谷でないことは一目瞭然であった。
この最上級の迷宮は、継承者とその者に
認められた人物しか知らない筈であった。
誠一はここを知る人物に心当たりがなかった。
そのため、武器を構えて、警戒した。
特に誰も見ていないにも関わらず門番に立つ兵は
直立不動の態を保っていた。
無論、これは現当主アーロンがつい最近まで
逗留していたことと次期当主ラムデールが
逗留しているからであった。
門番と誠一は目があった。門番は最敬礼で誠一を出迎えた。
「アルフレート様、お帰りなさいませ」
「久しぶりですね。
お手数をかけますが、ミシャに戻ったことを
伝えてください。
それと暫く逗留することもお願いします」
誠一は門番にそう伝えると、以前、使っていた部屋に向かった。
「やあ、ミシャ。父上が領地に戻って、のびのびとしているな」
屋敷の大広間に直立不動の態で誠一を迎えたミシャに声をかけた。
「アルフレート様、お戯れを。
このミシャ、いつ何時もエスターライヒ家のために
尽くす所存でございます」
表情、態度を一切崩さずにミシャが返答した。
「部屋はそのままにしてあるな?」
「アーロン様よりお達しがございました。
アルフレート様の私室としてお使いください」
「そうか、父上がそう言ったか。わかった。
不在時は、定期的に空気の入れ替えと掃除を頼む。
盗み読みされて困るモノもないしな」
慇懃な態度のミシャに鷹揚に答える誠一だった。
以前の彼との確執と侮蔑への意趣返しのつもりで
尊大な態度を取った誠一だった。
しかし、内心はどうであれミシャの表情と態度を
崩すことはできなかった。
「アルフレート様、お戯れはその位にして頂きまして、
お夕食になさいますか?」
内心を容易に見透かされた誠一は、
逆にあたふたと慌ててしまった。
「いやあの夕食はいいです。
少し落ち着いたら、外出してきます」
そう言い残し、誠一は足早にこの場を去った。
ミシャは誠一の目に映らずとも完璧な礼儀作法に
則って誠一に向かって一礼をした。
誠一は荷物を部屋に降ろすと、身体を拭い、服を着替えた。
そして、すぐさま魔術院に向かった。
魔術院に到着すると、誠一の足は最上階の学院長室と
真逆の地下に向かっていた。
螺旋階段を降り、一つの扉を押し開けた。
その部屋の床には魔術陣が施されていた。
誠一は陣の中央に立ち、魔術を唱えると、
蒼白い光が彼を包んだ。
誠一は『深淵の廻廊』の最深部、
クリスタルの森に転移した。
瞳を開いた誠一は咄嗟に7面メイスを構えた。
誰もいなければ、揺らぐことのない空気が
激しく渦巻いていた。
隠そうともしない烈気は誠一ならずとも
容易に感じられほどであった。
今、この場にいるのがファウスティノや
剣豪鬼谷でないことは一目瞭然であった。
この最上級の迷宮は、継承者とその者に
認められた人物しか知らない筈であった。
誠一はここを知る人物に心当たりがなかった。
そのため、武器を構えて、警戒した。
1
あなたにおすすめの小説
転生特典〈無限スキルポイント〉で無制限にスキルを取得して異世界無双!?
スピカ・メロディアス
ファンタジー
目が覚めたら展開にいた主人公・凸守優斗。
女神様に死後の案内をしてもらえるということで思春期男子高生夢のチートを貰って異世界転生!と思ったものの強すぎるチートはもらえない!?
ならば程々のチートをうまく使って夢にまで見た異世界ライフを楽しもうではないか!
これは、只人の少年が繰り広げる異世界物語である。
S級スキル『剣聖』を授かった俺はスキルを奪われてから人生が一変しました
白崎なまず
ファンタジー
この世界の人間の多くは生まれてきたときにスキルを持っている。スキルの力は強大で、強力なスキルを持つ者が貧弱なスキルしか持たない者を支配する。
そんな世界に生まれた主人公アレスは大昔の英雄が所持していたとされるSランク『剣聖』を持っていたことが明らかになり一気に成り上がっていく。
王族になり、裕福な暮らしをし、将来は王女との結婚も約束され盤石な人生を歩むアレス。
しかし物事がうまくいっている時こそ人生の落とし穴には気付けないものだ。
突如現れた謎の老人に剣聖のスキルを奪われてしまったアレス。
スキルのおかげで手に入れた立場は当然スキルがなければ維持することが出来ない。
王族から下民へと落ちたアレスはこの世に絶望し、生きる気力を失いかけてしまう。
そんなアレスに手を差し伸べたのはとある教会のシスターだった。
Sランクスキルを失い、この世はスキルが全てじゃないと知ったアレス。
スキルがない自分でも前向きに生きていこうと冒険者の道へ進むことになったアレスだったのだが――
なんと、そんなアレスの元に剣聖のスキルが舞い戻ってきたのだ。
スキルを奪われたと王族から追放されたアレスが剣聖のスキルが戻ったことを隠しながら冒険者になるために学園に通う。
スキルの優劣がものを言う世界でのアレスと仲間たちの学園ファンタジー物語。
この作品は小説家になろうに投稿されている作品の重複投稿になります
魔法使いが無双する異世界に転移した魔法の使えない俺ですが、陰陽術とか武術とか魔法以外のことは大抵できるのでなんとか死なずにやっていけそうです
忠行
ファンタジー
魔法使いが無双するファンタジー世界に転移した魔法の使えない俺ですが、陰陽術とか武術とか忍術とか魔法以外のことは大抵できるのでなんとか死なずにやっていけそうです。むしろ前の世界よりもイケてる感じ?
屑スキルが覚醒したら追放されたので、手伝い屋を営みながら、のんびりしてたのに~なんか色々たいへんです(完結)
わたなべ ゆたか
ファンタジー
タムール大陸の南よりにあるインムナーマ王国。王都タイミョンの軍事訓練場で、ランド・コールは軍に入るための最終試験に挑む。対戦相手は、《ダブルスキル》の異名を持つゴガルン。
対するランドの持つ《スキル》は、左手から棘が一本出るだけのもの。
剣技だけならゴガルン以上を自負するランドだったが、ゴガルンの《スキル》である〈筋力増強〉と〈遠当て〉に翻弄されてしまう。敗北する寸前にランドの《スキル》が真の力を発揮し、ゴガルンに勝つことができた。だが、それが原因で、ランドは王都を追い出されてしまった。移住した村で、〝手伝い屋〟として、のんびりとした生活を送っていた。だが、村に来た領地の騎士団に所属する騎馬が、ランドの生活が一変する切っ掛けとなる――。チート系スキル持ちの主人公のファンタジーです。楽しんで頂けたら、幸いです。
よろしくお願いします!
(7/15追記
一晩でお気に入りが一気に増えておりました。24Hポイントが2683! ありがとうございます!
(9/9追記
三部の一章-6、ルビ修正しました。スイマセン
(11/13追記 一章-7 神様の名前修正しました。
追記 異能(イレギュラー)タグを追加しました。これで検索しやすくなるかな……。
唯一無二のマスタースキルで攻略する異世界譚~17歳に若返った俺が辿るもう一つの人生~
専攻有理
ファンタジー
31歳の事務員、椿井翼はある日信号無視の車に轢かれ、目が覚めると17歳の頃の肉体に戻った状態で異世界にいた。
ただ、導いてくれる女神などは現れず、なぜ自分が異世界にいるのかその理由もわからぬまま椿井はツヴァイという名前で異世界で出会った少女達と共にモンスター退治を始めることになった。
社畜サラリーマン、異世界でパンと魔法の経営革命
yukataka
ファンタジー
過労死寸前の30代サラリーマン・佐藤健は、気づけば中世ヨーロッパ風の異世界に転生していた。与えられたのは「発酵魔法」という謎のスキルと、前世の経営知識。転生先は辺境の寒村ベルガルド――飢えと貧困にあえぐ、希望のない場所。「この世界にパンがない…だと?」健は決意する。美味しいパンで、人々を笑顔にしよう。ブラック企業で培った根性と、発酵魔法の可能性。そして何より、人を幸せにしたいという純粋な想い。小さなパン屋から始まった"食の革命"は、やがて王国を、大陸を、世界を変えていく――。笑いあり、涙あり、そして温かい人間ドラマ。仲間たちとの絆、恋の芽生え、強大な敵との戦い。パン一つで世界を救う、心温まる異世界経営ファンタジー。
優の異世界ごはん日記
風待 結
ファンタジー
月森優はちょっと料理が得意な普通の高校生。
ある日、帰り道で謎の光に包まれて見知らぬ森に転移してしまう。
未知の世界で飢えと恐怖に直面した優は、弓使いの少女・リナと出会う。
彼女の導きで村へ向かう道中、優は「料理のスキル」がこの世界でも通用すると気づく。
モンスターの肉や珍しい食材を使い、異世界で新たな居場所を作る冒険が始まる。
40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私
とうとうキレてしまいました
なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが
飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした……
スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる