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876. 学業再開6
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「ちいぃぃ、流石に一筋縄ではいかないよな、アル」
素早く杖を引き戻して、誠一からの反撃を牽制した。
「流石に今の一撃にはヒヤッとしたよ」
誠一はヴェルの力の差が既にほとんどないことを
いやがうえにも感じた。
以前に対峙した時のような余裕は誠一になかった。
「駄目だな。借り物の技では
ヴェルに通用しないね」
「なら、お互いに全力の一撃で杖を
交えるしかないよなぁ」
ヴェルが杖を両手で握りしめた。
風は強く、冷たかった。
しかし火照る二人の身体を冷やすには、
至らなかった。二人の瞳には互いの姿だけが
映っていた。
周囲の魔術院生は、手を止めて、
2人の模擬戦の行方を見守っていた。
講師も黙って食い入る様に二人を見つめていた。
誠一は右手で杖を力強く握った。
そして左手をヴェルの方へ視界を遮る様に
かざした。
「小賢しいぞ、アル。うおおおぅ!」
ヴェルは杖を最速・全力で誠一に向けて、
振り下ろした。
まともに当たれば、人の骨など
簡単に砕けるような一撃だった。
「はああっ!
ヴェル、調子に乗るにはまだ、少し早いっ」
誠一の左手は瞬きをする程の瞬間だったが、
ヴェルの視界から誠一を消した。
その一瞬で誠一には十分であった。
一瞬、遅れたヴェルの一撃を紙一重で誠一は躱すと、
横なぎの一撃を放った。
ヴェルは何とか後方退避して躱した。
そこへ誠一は杖で突きを放った。
ヴェルは身体を捻り、誠一の突きを何とか躱すも
バランスを崩して、ヴェルは尻餅をついた。
「くそううぅ。やっと追いついたと思ったんだけど。
全てにおいて、まだ足りないか」
「そんなことないと思うけど、
ほんの僅かな差だよ。
それにまあ、僕にとってもヴェルは追い越すべき
対象ではあるからね」
誠一はヴェルに右手を差し伸べた。
ヴェルはその右手を握り、立ち上がった。
「むむっ俺がお前の超えるべき対象。そうなんか」
ヴェルは全く身に覚えがなかったが、
若干、嬉しそうだった。
「解体とか」
それは事実であったが、
どうもヴェルは釈然としない表情をした。
誠一はそれ以外にもヴェルを認めていたが、
調子に乗るのが目に見えていたために黙っていた。
「うーん、まあいいいか。
何もないよりマシだよな」
お互い大いに笑った。
そんな二人をじっと見つめる杖術の講師。
二人もその視線に気づいた。
「アルフレート、ヴェル、
君たちは杖術の講義を免除する。
試験のみで良しとしよう。
講義の時間を他の有益なことに充てなさい」
予想もしていなかった講師からの提案であった。
素早く杖を引き戻して、誠一からの反撃を牽制した。
「流石に今の一撃にはヒヤッとしたよ」
誠一はヴェルの力の差が既にほとんどないことを
いやがうえにも感じた。
以前に対峙した時のような余裕は誠一になかった。
「駄目だな。借り物の技では
ヴェルに通用しないね」
「なら、お互いに全力の一撃で杖を
交えるしかないよなぁ」
ヴェルが杖を両手で握りしめた。
風は強く、冷たかった。
しかし火照る二人の身体を冷やすには、
至らなかった。二人の瞳には互いの姿だけが
映っていた。
周囲の魔術院生は、手を止めて、
2人の模擬戦の行方を見守っていた。
講師も黙って食い入る様に二人を見つめていた。
誠一は右手で杖を力強く握った。
そして左手をヴェルの方へ視界を遮る様に
かざした。
「小賢しいぞ、アル。うおおおぅ!」
ヴェルは杖を最速・全力で誠一に向けて、
振り下ろした。
まともに当たれば、人の骨など
簡単に砕けるような一撃だった。
「はああっ!
ヴェル、調子に乗るにはまだ、少し早いっ」
誠一の左手は瞬きをする程の瞬間だったが、
ヴェルの視界から誠一を消した。
その一瞬で誠一には十分であった。
一瞬、遅れたヴェルの一撃を紙一重で誠一は躱すと、
横なぎの一撃を放った。
ヴェルは何とか後方退避して躱した。
そこへ誠一は杖で突きを放った。
ヴェルは身体を捻り、誠一の突きを何とか躱すも
バランスを崩して、ヴェルは尻餅をついた。
「くそううぅ。やっと追いついたと思ったんだけど。
全てにおいて、まだ足りないか」
「そんなことないと思うけど、
ほんの僅かな差だよ。
それにまあ、僕にとってもヴェルは追い越すべき
対象ではあるからね」
誠一はヴェルに右手を差し伸べた。
ヴェルはその右手を握り、立ち上がった。
「むむっ俺がお前の超えるべき対象。そうなんか」
ヴェルは全く身に覚えがなかったが、
若干、嬉しそうだった。
「解体とか」
それは事実であったが、
どうもヴェルは釈然としない表情をした。
誠一はそれ以外にもヴェルを認めていたが、
調子に乗るのが目に見えていたために黙っていた。
「うーん、まあいいいか。
何もないよりマシだよな」
お互い大いに笑った。
そんな二人をじっと見つめる杖術の講師。
二人もその視線に気づいた。
「アルフレート、ヴェル、
君たちは杖術の講義を免除する。
試験のみで良しとしよう。
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予想もしていなかった講師からの提案であった。
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