887 / 978
879. 新たな展開2
しおりを挟む
「確かにな。女王の意図を掴みかねる。
これでは竜公国は属国扱い同様だ」
マリアンヌは腕組みをしながら、
悩まし気な表情をしていた。
うーん、絵になると誠一は見惚れていた。
「それにこのタイミングで
宮廷魔術師第二席への自由裁量。
ちょっとあり得なくない」
サリナは右肘でぼんやりする誠一を
小突いていた。
「それよりも僕は、街中に拡がる吟遊詩人の詩の行方と
『狂乱の王』の方が気になるけどね」
ストラッツェール家に雇われた詩人たちは、
ファーリに束でかかってようやく均衡を
保っている状態であった。
ファーリの絶望的な楽器の演奏が
何とか均衡を保っている一因であった。
ちょっとした出来事で一気に均衡が
崩れそうな危うい状態であった。
どちらに転んでも誠一にとっては
面白くないことになるのは明白だった。
「はははっ、それは、なるようにしかならんな。
あきらめろ、奇跡の当事者様もしくは、功績の盗人様」
高らかな声で笑うが、それは歌声のようだった。
その声は、宿の一階で朝食をとる周囲の人たちの
注目を一瞬で集めた。
ちょっと不満げなサリナの表情が可愛いと
誠一は思った。
「まったく毎度のことながら、
マリアンヌと一緒だと話にくいわ。
まっ詩なんてそのうち新しいネタに
とって代わられるわよ。
それよりジェイコブ・ジェルミラの件よね。
あの典型的な小心者の貴族様が
そもそも王を僭称したのも驚きだけど。
女色に溺れ、拷問・虐殺を好むのは
依然と変わらずらしいね。
噂ではダンブルの娘の嫁入りを画策しているとか、
積極的な領土拡張を主導しているとか、
政治や軍制改革に自ら乗り出しているとか。
その辺は、ちょっとあり得ないわよね」
風の噂で誠一もサリナの話の様な事を
耳にしていたが、あまりにも誠一の持つ
ジェイコブ像との乖離から
おそらく優秀な側近に恵まれたのだろうと
考えていた。
残虐で好色・小心者、そしてガチガチの貴族主義者、
あくまで既得権益の中で意を振るう男で、
現状を打破して改革を望むような人物ではなかった。
「まさかね」
誠一は一人心地で呟いた。
「アルフレート、ちょっと調べてみる?」
サリナの声で誠一は我に返った。
「あ、うん。頼める?」
誠一はどうにもジェイコブの今の有り様が
以前と同じ人物であるとは思えなかった。
啓示を受けたのか、それとも神堕ち者に
取って代わられたのかとさえ思った。
「ええ、任された。
ところでアルフレートは、これからどうするの」
久々の休日、誠一はゴロゴロして、
身体を休めようと思っていた。
「今日はゆっくりするよ。それじゃあ、戻るね」
誠一は美人二人に見送られて、エンゲルス家に戻った。
これでは竜公国は属国扱い同様だ」
マリアンヌは腕組みをしながら、
悩まし気な表情をしていた。
うーん、絵になると誠一は見惚れていた。
「それにこのタイミングで
宮廷魔術師第二席への自由裁量。
ちょっとあり得なくない」
サリナは右肘でぼんやりする誠一を
小突いていた。
「それよりも僕は、街中に拡がる吟遊詩人の詩の行方と
『狂乱の王』の方が気になるけどね」
ストラッツェール家に雇われた詩人たちは、
ファーリに束でかかってようやく均衡を
保っている状態であった。
ファーリの絶望的な楽器の演奏が
何とか均衡を保っている一因であった。
ちょっとした出来事で一気に均衡が
崩れそうな危うい状態であった。
どちらに転んでも誠一にとっては
面白くないことになるのは明白だった。
「はははっ、それは、なるようにしかならんな。
あきらめろ、奇跡の当事者様もしくは、功績の盗人様」
高らかな声で笑うが、それは歌声のようだった。
その声は、宿の一階で朝食をとる周囲の人たちの
注目を一瞬で集めた。
ちょっと不満げなサリナの表情が可愛いと
誠一は思った。
「まったく毎度のことながら、
マリアンヌと一緒だと話にくいわ。
まっ詩なんてそのうち新しいネタに
とって代わられるわよ。
それよりジェイコブ・ジェルミラの件よね。
あの典型的な小心者の貴族様が
そもそも王を僭称したのも驚きだけど。
女色に溺れ、拷問・虐殺を好むのは
依然と変わらずらしいね。
噂ではダンブルの娘の嫁入りを画策しているとか、
積極的な領土拡張を主導しているとか、
政治や軍制改革に自ら乗り出しているとか。
その辺は、ちょっとあり得ないわよね」
風の噂で誠一もサリナの話の様な事を
耳にしていたが、あまりにも誠一の持つ
ジェイコブ像との乖離から
おそらく優秀な側近に恵まれたのだろうと
考えていた。
残虐で好色・小心者、そしてガチガチの貴族主義者、
あくまで既得権益の中で意を振るう男で、
現状を打破して改革を望むような人物ではなかった。
「まさかね」
誠一は一人心地で呟いた。
「アルフレート、ちょっと調べてみる?」
サリナの声で誠一は我に返った。
「あ、うん。頼める?」
誠一はどうにもジェイコブの今の有り様が
以前と同じ人物であるとは思えなかった。
啓示を受けたのか、それとも神堕ち者に
取って代わられたのかとさえ思った。
「ええ、任された。
ところでアルフレートは、これからどうするの」
久々の休日、誠一はゴロゴロして、
身体を休めようと思っていた。
「今日はゆっくりするよ。それじゃあ、戻るね」
誠一は美人二人に見送られて、エンゲルス家に戻った。
1
あなたにおすすめの小説
転生特典〈無限スキルポイント〉で無制限にスキルを取得して異世界無双!?
スピカ・メロディアス
ファンタジー
目が覚めたら展開にいた主人公・凸守優斗。
女神様に死後の案内をしてもらえるということで思春期男子高生夢のチートを貰って異世界転生!と思ったものの強すぎるチートはもらえない!?
ならば程々のチートをうまく使って夢にまで見た異世界ライフを楽しもうではないか!
これは、只人の少年が繰り広げる異世界物語である。
S級スキル『剣聖』を授かった俺はスキルを奪われてから人生が一変しました
白崎なまず
ファンタジー
この世界の人間の多くは生まれてきたときにスキルを持っている。スキルの力は強大で、強力なスキルを持つ者が貧弱なスキルしか持たない者を支配する。
そんな世界に生まれた主人公アレスは大昔の英雄が所持していたとされるSランク『剣聖』を持っていたことが明らかになり一気に成り上がっていく。
王族になり、裕福な暮らしをし、将来は王女との結婚も約束され盤石な人生を歩むアレス。
しかし物事がうまくいっている時こそ人生の落とし穴には気付けないものだ。
突如現れた謎の老人に剣聖のスキルを奪われてしまったアレス。
スキルのおかげで手に入れた立場は当然スキルがなければ維持することが出来ない。
王族から下民へと落ちたアレスはこの世に絶望し、生きる気力を失いかけてしまう。
そんなアレスに手を差し伸べたのはとある教会のシスターだった。
Sランクスキルを失い、この世はスキルが全てじゃないと知ったアレス。
スキルがない自分でも前向きに生きていこうと冒険者の道へ進むことになったアレスだったのだが――
なんと、そんなアレスの元に剣聖のスキルが舞い戻ってきたのだ。
スキルを奪われたと王族から追放されたアレスが剣聖のスキルが戻ったことを隠しながら冒険者になるために学園に通う。
スキルの優劣がものを言う世界でのアレスと仲間たちの学園ファンタジー物語。
この作品は小説家になろうに投稿されている作品の重複投稿になります
魔法使いが無双する異世界に転移した魔法の使えない俺ですが、陰陽術とか武術とか魔法以外のことは大抵できるのでなんとか死なずにやっていけそうです
忠行
ファンタジー
魔法使いが無双するファンタジー世界に転移した魔法の使えない俺ですが、陰陽術とか武術とか忍術とか魔法以外のことは大抵できるのでなんとか死なずにやっていけそうです。むしろ前の世界よりもイケてる感じ?
第2の人生は、『男』が希少種の世界で
赤金武蔵
ファンタジー
日本の高校生、久我一颯(くがいぶき)は、気が付くと見知らぬ土地で、女山賊たちから貞操を奪われる危機に直面していた。
あと一歩で襲われかけた、その時。白銀の鎧を纏った女騎士・ミューレンに救われる。
ミューレンの話から、この世界は地球ではなく、別の世界だということを知る。
しかも──『男』という存在が、超希少な世界だった。
異世界転生漫遊記
しょう
ファンタジー
ブラック企業で働いていた主人公は
体を壊し亡くなってしまった。
それを哀れんだ神の手によって
主人公は異世界に転生することに
前世の失敗を繰り返さないように
今度は自由に楽しく生きていこうと
決める
主人公が転生した世界は
魔物が闊歩する世界!
それを知った主人公は幼い頃から
努力し続け、剣と魔法を習得する!
初めての作品です!
よろしくお願いします!
感想よろしくお願いします!
『スローライフどこ行った?!』追放された最強凡人は望まぬハーレムに困惑する?!
たらふくごん
ファンタジー
最強の凡人――追放され、転生した蘇我頼人。
新たな世界で、彼は『ライト・ガルデス』として再び生を受ける。
※※※※※
1億年の試練。
そして、神をもしのぐ力。
それでも俺の望みは――ただのスローライフだった。
すべての試練を終え、創世神にすら認められた俺。
だが、もはや生きることに飽きていた。
『違う選択肢もあるぞ?』
創世神の言葉に乗り気でなかった俺は、
その“策略”にまんまと引っかかる。
――『神しか飲めぬ最高級のお茶』。
確かに神は嘘をついていない。
けれど、あの流れは勘違いするだろうがっ!!
そして俺は、あまりにも非道な仕打ちの末、
神の娘ティアリーナが治める世界へと“追放転生”させられた。
記憶を失い、『ライト・ガルデス』として迎えた新しい日々。
それは、久しく感じたことのない“安心”と“愛”に満ちていた。
だが――5歳の洗礼の儀式を境に、運命は動き出す。
くどいようだが、俺の望みはスローライフ。
……のはずだったのに。
呪いのような“女難の相”が炸裂し、
気づけば婚約者たちに囲まれる毎日。
どうしてこうなった!?
40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私
とうとうキレてしまいました
なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが
飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした……
スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます
最凶と呼ばれる音声使いに転生したけど、戦いとか面倒だから厨房馬車(キッチンカー)で生計をたてます
わたなべ ゆたか
ファンタジー
高校一年の音無厚使は、夏休みに叔父の手伝いでキッチンカーのバイトをしていた。バイトで隠岐へと渡る途中、同級生の板林精香と出会う。隠岐まで同じ船に乗り合わせた二人だったが、突然に船が沈没し、暗い海の底へと沈んでしまう。
一七年後。異世界への転生を果たした厚使は、クラネス・カーターという名の青年として生きていた。《音声使い》の《力》を得ていたが、危険な仕事から遠ざかるように、ラオンという国で隊商を率いていた。自身も厨房馬車(キッチンカー)で屋台染みた商売をしていたが、とある村でアリオナという少女と出会う。クラネスは家族から蔑まれていたアリオナが、妙に気になってしまい――。異世界転生チート物、ボーイミーツガール風味でお届けします。よろしくお願い致します!
大賞が終わるまでは、後書きなしでアップします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる