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12 三本木遊郭ー豪士ー
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夕方、山崎さんを見かけたので
渡された紙片の返事をしようと思った。
山崎さんは私を土蔵裏へ連れて行った。
ここはお勢さんと会うには
持って来いの場所だな。
「どれに決めた」
山崎さんが言った。
京の花街は島原、祇園、先斗町が有名だが、
遊び慣れた京の男は三本木が捨てがたいと言う。
近藤さんの新しい女は、その三本木にいた。
お葉と言う、まだ十六才の女だ。
彼の娘のような年じゃないか。
「賄い屋にしました」
「!・・・賄い屋!!」
あの山崎さんが驚きの声を上げた。
三本木で私が何に化けてお葉を見張るのか
それを決めろと山崎さんに言われていた。
もらった紙片には様々な物売りの名が
百種以上も書かれていた。
賄い屋はその中にはなかった。
要するに賄い屋とは、弁当屋のことだ。
料理屋や店に頼めば仕出し弁当を作ってくれる。
だが路上を歩きながらの弁当売り・賄い屋は
京の町には少ない。
たまに見かけるが江戸ほど多くはない。
江戸で賄い屋は当たり前で、決して珍しい物売りではない。
山崎さんは驚いた顔で私を凝視した。
こいつ、案外使えるぞ!と言う顔だった。
「京で賄い屋か。弁当はどこで仕入れる」
問題の核心を山崎さんはついて来た。
実はここが、話のミソなんだな!
「隊の賄い方に朝飯をほんの五、六人分多く炊いてもらい、
おかずは昨夜の余りものを使います」
自分でもよくもこうスラスラ
口から出まかせが出てくるもんだ。
ほんと感心するぜ!
賄い屋以外は、全部いま思いついたことだ。
私の願いは、屯所の賄い方へ行くことだ。
もちろんお勢さんに会うために!
この話が成功すれば、いつでもお勢さんに会える!
お勢さんに会いたい一心の、苦し紛れの出まかせだ。
「うん、狙いはいい!京の町に物売りの賄いは少ない。
ただし、弁当の売り上げを賄い方に渡せ。これが条件だ」
もちろんだとも!売り上げの全部を
お勢さんに上げたっていい。
「三本木なら売れる。お前なら怪しまれないしな。
で、名前は何にする」
「幸助です」
弁当屋やる時の名前は、夕べ考えておいた。
山崎さんはもう一度私を見てニヤリと笑った。
「賄い屋幸助か」
そして、ゆっくりと台所へ向かって歩き出した。
その背中が、完全にやる気を見せていた。
一人になった私は小躍りした。
やったぜ!!お勢ちゃん、やったぞい!
こんなうまくとは思わんかった!
好事魔多しとか言って、でき過ぎは後が怖い。
お勢ちゃん、気をつけよう!
渡された紙片の返事をしようと思った。
山崎さんは私を土蔵裏へ連れて行った。
ここはお勢さんと会うには
持って来いの場所だな。
「どれに決めた」
山崎さんが言った。
京の花街は島原、祇園、先斗町が有名だが、
遊び慣れた京の男は三本木が捨てがたいと言う。
近藤さんの新しい女は、その三本木にいた。
お葉と言う、まだ十六才の女だ。
彼の娘のような年じゃないか。
「賄い屋にしました」
「!・・・賄い屋!!」
あの山崎さんが驚きの声を上げた。
三本木で私が何に化けてお葉を見張るのか
それを決めろと山崎さんに言われていた。
もらった紙片には様々な物売りの名が
百種以上も書かれていた。
賄い屋はその中にはなかった。
要するに賄い屋とは、弁当屋のことだ。
料理屋や店に頼めば仕出し弁当を作ってくれる。
だが路上を歩きながらの弁当売り・賄い屋は
京の町には少ない。
たまに見かけるが江戸ほど多くはない。
江戸で賄い屋は当たり前で、決して珍しい物売りではない。
山崎さんは驚いた顔で私を凝視した。
こいつ、案外使えるぞ!と言う顔だった。
「京で賄い屋か。弁当はどこで仕入れる」
問題の核心を山崎さんはついて来た。
実はここが、話のミソなんだな!
「隊の賄い方に朝飯をほんの五、六人分多く炊いてもらい、
おかずは昨夜の余りものを使います」
自分でもよくもこうスラスラ
口から出まかせが出てくるもんだ。
ほんと感心するぜ!
賄い屋以外は、全部いま思いついたことだ。
私の願いは、屯所の賄い方へ行くことだ。
もちろんお勢さんに会うために!
この話が成功すれば、いつでもお勢さんに会える!
お勢さんに会いたい一心の、苦し紛れの出まかせだ。
「うん、狙いはいい!京の町に物売りの賄いは少ない。
ただし、弁当の売り上げを賄い方に渡せ。これが条件だ」
もちろんだとも!売り上げの全部を
お勢さんに上げたっていい。
「三本木なら売れる。お前なら怪しまれないしな。
で、名前は何にする」
「幸助です」
弁当屋やる時の名前は、夕べ考えておいた。
山崎さんはもう一度私を見てニヤリと笑った。
「賄い屋幸助か」
そして、ゆっくりと台所へ向かって歩き出した。
その背中が、完全にやる気を見せていた。
一人になった私は小躍りした。
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こんなうまくとは思わんかった!
好事魔多しとか言って、でき過ぎは後が怖い。
お勢ちゃん、気をつけよう!
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