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第1章 爆裂令嬢、爆誕!!
第14話 クーリャ12:剣自慢! わたしが、なんとかするの!
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ハウスキーパーのデボラに無理を言って借りた娯楽室で、わたしとバージョヴァ先生、そしてローベルトは話をしている。
「姫様、先程は無様な姿をお見せして申し訳ありません。これは自分個人の事、カラシニコフ家とは関係ない話です。ですので、……」
「おだまりなさい、ローベルト・カリーニン! 当家の騎士の問題は当家の問題。それを見過ごしたとあっては、当家の長女たるわたくしの名折れです」
先ほどまで上半身裸でムチャクチャに剣を振るっていたローベルト。
今は、わたしの前に出るという事で、水を被り汗を拭って新しいシャツを着ている。
……ローベルトって細マッチョで濃い系のイケメンなんだよねぇ。まあ、わたしとは随分年齢も違うから、恋愛対象じゃないけど。というか、わたしは恋愛には興味ないし。まずは死亡フラグを吹っ飛ばすの優先だもん。
薄茶色の髪に榛色瞳のローベルトは、わたしには関係ないと逃げたが、わたしはそれを制した。
「そ、それは確かに姫様がおっしゃるとおりです。しかし、これは自分が酒の席で独断してしまった結果。責任は自分にあるのです」
「でしたら、まずはどういう案件なのか、わたくしにお話願えませんか? その上で判断しましょう」
……早く話すの! わたし、困った人見てたらじっとしていられないんだもん。それとね、そろそろイベントの一つも欲しいの!
わたしは、内心の焦りとワクワク感を貴族らしい薄い笑みで隠す。
「ローベルト様。姫様は数多くの英知をお持ちです。最近の農園で開始された製紙業や石鹸作りは、姫様のアイデアですの。ますは、お話ししたら、案外解決案が見える事もありますよ。お1人で悩んでいても、しょうがないですわ」
「そ、そうですか、ナターリャ殿? では、恥ずかしい話ですが姫様にお話しします」
バージョヴァ先生は、わたしのフォローをしてくれたので、ローベルトは話し出す。
わたしは、先生に礼を言おうとするも、先生の顔はしょうがないわねっていう困り顔。
……あ、先生にワクワクを読まれたのぉ!
先生に「ぎこちない」笑顔を返して、わたしはローベルトへと向き合う。
「では、御願いしますわ」
「あれは先週、私が王都で学院同期の同窓会に参加した時の事です……」
学院では、卒業後もそれなりに元学生同士の付き合いがある場合が多く、こと文官や騎士は国内情報を集める為に同窓会を利用する。
ローベルトがしばらく当家を離れていたけれども、それが同窓会への参加だったようだ。
「酒の席、あ、姫様には分からないかもしれませんが、気が大きくなった若者達が話し合うのは、武芸談や彼女や妻の事ですね」
どこの世界も、酒で気が大きくなり、失敗をするのは変らない。
人類であれば、アルコールは判断力を鈍らせるのだ。
……アタシもお酒の席は好きだったな。意外とザルだったから、男の子を全部酔い潰したっけ?
「ろ、ローベルト様。姫様の前ですから本題を早く御願いしますの。まさか姫様にお話しできないような下品な話では無いですわよね?」
男と女の話になりそうと思った先生は、わたし用に予防線を引いてくれた。
……先生も顔が赤いの。もしかして先生も処女かしら? 少なくともエロ系に耐性はないっぽいの。
「わたくし、これでも男女の睦事くらいは知ってますわ。でも、それでは無いですわよね。でなければ必死に剣を降ったりしませんものね」
「は、はいです。実は酒の話題で己の愛剣の話になったのです」
ローベルトの話を総合すれば、酒の席で剣自慢になった。
皆、下級でも貴族ではあるので、それなりの名刀を持っている。
しかし、ある人物が、嫌味に剣自慢を始めた。
「ふむ、皆の剣はその程度ですか? では私の家に代々伝わる、この魔剣の勝ちですね」
彼は、ヴァルラム。
よりにもよって、キリキア公爵家、あの「アントニー」の配下。
アントニー一番のお気に入りで、気障っぽくて嫌味なやつ。
領内に攻め込んできて、投降勧告、いや殺害予告した後に、わたしの家族を最終的に殺すヤツ。
「彼は酒場に持ち込んでいた剣を抜きました。それは魔力で鈍く光るミスリル剣でした」
その後、酒の席は荒れてしまう。
料理人の戯言で包丁自慢をしていたら、クジラ解体用の巨大包丁を持ち出すくらい無粋な事だから。
「どんな魔剣でも使いこなせなければ無意味だろうという意見が飛び出し、元より姫様の件でキリキア領には怒りがありましたので、自分もその意見に同意しました。そうしたら、次の3ヶ月後にある同窓会にて、私とヴァルラムが寸止めでの決闘を行うという事に、いつのまにかなってしまいました」
どうやら、わたし関係のフラグが巻き起こした事件らしい。
「前回」のゲームではローベルトは、顔に傷を持つ凄みのある騎士だったのだが、この事件が原因だった様だ。
「カラシニコフ家にご迷惑をおかけする事になりまして申し訳ありません。これは自分の問題ですので、職を辞して決闘に参りたいと思います」
「話は分かりました。まず聞きたいことは2つ。ローベルトとヴァルラムの剣の腕はどちらが上ですか? もう一つはローベルトの剣を見せて頂けますか?」
この問題は、わたしがなんとかしなければならない案件。
ちょうど先日から、たたら製鉄をしたいと思っていた処に渡りに船。
……お父様を説得する理由に使えるの! 手段の為なら目的を選ばないよ! 第一、あのアントニーをギャフンと言わせられそうだもん!
「剣の腕ですが、身体強化及び武器強化魔法込みでしたら互角か、やや自分の方が上でしょうか? 学院卒業前の御前試合で、自分はヴァルラムに勝っています。それまでも、自分の方が勝ち越しています」
どうやら、王の前で負けた事をずっと根に持っていたヴァルラムは、ローベルトへの仕返しのタイミングを狙っていたようだ。
そして酒の席で出来た「隙」を狙われた
「そして、これが自分の剣です」
ローベルトは、腰に佩いていた剣を机の上に置いた。
「では、見せていただきますわね」
わたしは、重い剣を持ち上げて、鞘から刀身を引き出す。
西洋剣は、重心バランスを取る為に持ち手、柄の部分も重い金属で出来ている。
……ちょっと重いけど、典型的な両刃の西洋長剣ね。刀身もゆがみはないけど、普通の鋼。表面に焼入れをしただけかしら?
「わたくしが見る感じ、バランスは悪くないですが、到って普通の剣ですね。これでミスリル剣と打ち合ったら、切断されそうですわ」
「お、おっしゃる通り。この剣は学院卒業時に父から祝いに貰った物ですが、仕上げは良いものの、刀身は至って普通です。自分の武器強化魔法を使っても、数合も打ち合えば刀身が保たないでしょう」
ローベルトから、ほぼ予想通りの答えが聞けたわたしは、にやりと笑う。
「でしたら、ローベルト。わたくしの『悪巧み』に参加しませんか? 成功すれば、世界最高峰の剣、いえ刀がローベルトの物になりますよ?」
「ナンですとぉ!」
「はあ、また姫様の悪い癖が出ましたのぉ」
わたしの「悪魔の微笑み」にローベルトは驚き、先生は「またかしら」と頭を抱えた。
「姫様、先程は無様な姿をお見せして申し訳ありません。これは自分個人の事、カラシニコフ家とは関係ない話です。ですので、……」
「おだまりなさい、ローベルト・カリーニン! 当家の騎士の問題は当家の問題。それを見過ごしたとあっては、当家の長女たるわたくしの名折れです」
先ほどまで上半身裸でムチャクチャに剣を振るっていたローベルト。
今は、わたしの前に出るという事で、水を被り汗を拭って新しいシャツを着ている。
……ローベルトって細マッチョで濃い系のイケメンなんだよねぇ。まあ、わたしとは随分年齢も違うから、恋愛対象じゃないけど。というか、わたしは恋愛には興味ないし。まずは死亡フラグを吹っ飛ばすの優先だもん。
薄茶色の髪に榛色瞳のローベルトは、わたしには関係ないと逃げたが、わたしはそれを制した。
「そ、それは確かに姫様がおっしゃるとおりです。しかし、これは自分が酒の席で独断してしまった結果。責任は自分にあるのです」
「でしたら、まずはどういう案件なのか、わたくしにお話願えませんか? その上で判断しましょう」
……早く話すの! わたし、困った人見てたらじっとしていられないんだもん。それとね、そろそろイベントの一つも欲しいの!
わたしは、内心の焦りとワクワク感を貴族らしい薄い笑みで隠す。
「ローベルト様。姫様は数多くの英知をお持ちです。最近の農園で開始された製紙業や石鹸作りは、姫様のアイデアですの。ますは、お話ししたら、案外解決案が見える事もありますよ。お1人で悩んでいても、しょうがないですわ」
「そ、そうですか、ナターリャ殿? では、恥ずかしい話ですが姫様にお話しします」
バージョヴァ先生は、わたしのフォローをしてくれたので、ローベルトは話し出す。
わたしは、先生に礼を言おうとするも、先生の顔はしょうがないわねっていう困り顔。
……あ、先生にワクワクを読まれたのぉ!
先生に「ぎこちない」笑顔を返して、わたしはローベルトへと向き合う。
「では、御願いしますわ」
「あれは先週、私が王都で学院同期の同窓会に参加した時の事です……」
学院では、卒業後もそれなりに元学生同士の付き合いがある場合が多く、こと文官や騎士は国内情報を集める為に同窓会を利用する。
ローベルトがしばらく当家を離れていたけれども、それが同窓会への参加だったようだ。
「酒の席、あ、姫様には分からないかもしれませんが、気が大きくなった若者達が話し合うのは、武芸談や彼女や妻の事ですね」
どこの世界も、酒で気が大きくなり、失敗をするのは変らない。
人類であれば、アルコールは判断力を鈍らせるのだ。
……アタシもお酒の席は好きだったな。意外とザルだったから、男の子を全部酔い潰したっけ?
「ろ、ローベルト様。姫様の前ですから本題を早く御願いしますの。まさか姫様にお話しできないような下品な話では無いですわよね?」
男と女の話になりそうと思った先生は、わたし用に予防線を引いてくれた。
……先生も顔が赤いの。もしかして先生も処女かしら? 少なくともエロ系に耐性はないっぽいの。
「わたくし、これでも男女の睦事くらいは知ってますわ。でも、それでは無いですわよね。でなければ必死に剣を降ったりしませんものね」
「は、はいです。実は酒の話題で己の愛剣の話になったのです」
ローベルトの話を総合すれば、酒の席で剣自慢になった。
皆、下級でも貴族ではあるので、それなりの名刀を持っている。
しかし、ある人物が、嫌味に剣自慢を始めた。
「ふむ、皆の剣はその程度ですか? では私の家に代々伝わる、この魔剣の勝ちですね」
彼は、ヴァルラム。
よりにもよって、キリキア公爵家、あの「アントニー」の配下。
アントニー一番のお気に入りで、気障っぽくて嫌味なやつ。
領内に攻め込んできて、投降勧告、いや殺害予告した後に、わたしの家族を最終的に殺すヤツ。
「彼は酒場に持ち込んでいた剣を抜きました。それは魔力で鈍く光るミスリル剣でした」
その後、酒の席は荒れてしまう。
料理人の戯言で包丁自慢をしていたら、クジラ解体用の巨大包丁を持ち出すくらい無粋な事だから。
「どんな魔剣でも使いこなせなければ無意味だろうという意見が飛び出し、元より姫様の件でキリキア領には怒りがありましたので、自分もその意見に同意しました。そうしたら、次の3ヶ月後にある同窓会にて、私とヴァルラムが寸止めでの決闘を行うという事に、いつのまにかなってしまいました」
どうやら、わたし関係のフラグが巻き起こした事件らしい。
「前回」のゲームではローベルトは、顔に傷を持つ凄みのある騎士だったのだが、この事件が原因だった様だ。
「カラシニコフ家にご迷惑をおかけする事になりまして申し訳ありません。これは自分の問題ですので、職を辞して決闘に参りたいと思います」
「話は分かりました。まず聞きたいことは2つ。ローベルトとヴァルラムの剣の腕はどちらが上ですか? もう一つはローベルトの剣を見せて頂けますか?」
この問題は、わたしがなんとかしなければならない案件。
ちょうど先日から、たたら製鉄をしたいと思っていた処に渡りに船。
……お父様を説得する理由に使えるの! 手段の為なら目的を選ばないよ! 第一、あのアントニーをギャフンと言わせられそうだもん!
「剣の腕ですが、身体強化及び武器強化魔法込みでしたら互角か、やや自分の方が上でしょうか? 学院卒業前の御前試合で、自分はヴァルラムに勝っています。それまでも、自分の方が勝ち越しています」
どうやら、王の前で負けた事をずっと根に持っていたヴァルラムは、ローベルトへの仕返しのタイミングを狙っていたようだ。
そして酒の席で出来た「隙」を狙われた
「そして、これが自分の剣です」
ローベルトは、腰に佩いていた剣を机の上に置いた。
「では、見せていただきますわね」
わたしは、重い剣を持ち上げて、鞘から刀身を引き出す。
西洋剣は、重心バランスを取る為に持ち手、柄の部分も重い金属で出来ている。
……ちょっと重いけど、典型的な両刃の西洋長剣ね。刀身もゆがみはないけど、普通の鋼。表面に焼入れをしただけかしら?
「わたくしが見る感じ、バランスは悪くないですが、到って普通の剣ですね。これでミスリル剣と打ち合ったら、切断されそうですわ」
「お、おっしゃる通り。この剣は学院卒業時に父から祝いに貰った物ですが、仕上げは良いものの、刀身は至って普通です。自分の武器強化魔法を使っても、数合も打ち合えば刀身が保たないでしょう」
ローベルトから、ほぼ予想通りの答えが聞けたわたしは、にやりと笑う。
「でしたら、ローベルト。わたくしの『悪巧み』に参加しませんか? 成功すれば、世界最高峰の剣、いえ刀がローベルトの物になりますよ?」
「ナンですとぉ!」
「はあ、また姫様の悪い癖が出ましたのぉ」
わたしの「悪魔の微笑み」にローベルトは驚き、先生は「またかしら」と頭を抱えた。
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