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真相②
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わたしは台所から包丁を持ってきて、卓郎の左胸に突き刺した。思い切りやったつもりだったけど、人体は思ったよりも硬くて、刃は半分くらいしか埋まらなかった。卓郎はその一撃では死ななくて、傷口を手で押さえてうめきはじめた。
刺したのがわたしだとばれたら、きっと酷い目に遭わされる。殺されるかもしれない。
怖くなって、夢中になって刺した。顔、首、胸、腹、腕……。手や腕で防御されていない場所を狙って、無我夢中で刺した。
やがて卓郎がぴくりとも動かなくなったとき、わたしは肩で息をしていた。手が震えて、握力がなくなって、包丁を持てなくなった。だから、その手を卓郎の胸に宛がって、心臓が止まっていることを確認したときはほっとした。その場に座って息を整えているうちに、歓喜が込み上げてきた。これまでに溜め込んできた恨みを晴らせたし、もう卓郎から嫌な目に遭わされることはない。
だけど、その気持ちは長続きしなかった。殺人を犯したという、取り消しようのない現実が怖くなってきたからだ。
大変なことをしてしまったという思いに、体が芯から震えた。当時はまだ十一歳だったから、少年法とか、そういう知識はまだインプットされていなくて。刑務所に入れられて死刑にされるんだって思うと、恐ろしかった。嫌だ、死にたくないって、本気で思った。それでいて、頭の中には冷静というか、妙に呑気で他人事な部分もあって、自分も中後保さんみたいに首を吊って死ぬのかな、家にロープはあったっけ、なんて考えたりもした。
自分が助かるには、卓郎が死んだ事実をなかったことにするしかない。
やがてわたしはそんな考えに囚われた。そのためには死体をどうにかしないといけないんだけど、心も体も疲れ果ててしまって、いつまで経っても前に進めない。
その場に座り込んだままでいると、突然気配を感じた。振り向くと、部屋の入口にいつの間にか虎がいた。風を肌に感じたから、玄関の戸を開けて入ってきたのだと分かった。
中後保さんだ、と思った。
最近よく小毬に出没する人食い虎は、数か月前に自殺した中後保さんの生まれ変わりではないかという噂は、もちろんわたしの耳にも届いていた。わたしは非科学的なことは信じない質なのだけど、それでも「この虎は中後保さんだ」って一目で分かった。上手く説明できないけど、中後さんを感じさせる雰囲気が虎からは漂っていたの。
虎――中後さんは緑色の瞳でわたしをじっと見つめている。その瞳を見返しているうちに、だんだん怖くなってきた。虎は静観するというふうで、わたしに対する好意も敵意も感じなかったけど、こちらが少しでも向こうの気に障るような行動をとれば、牙を剥き出しにして襲いかかってくるような雰囲気は感じた。
刺したのがわたしだとばれたら、きっと酷い目に遭わされる。殺されるかもしれない。
怖くなって、夢中になって刺した。顔、首、胸、腹、腕……。手や腕で防御されていない場所を狙って、無我夢中で刺した。
やがて卓郎がぴくりとも動かなくなったとき、わたしは肩で息をしていた。手が震えて、握力がなくなって、包丁を持てなくなった。だから、その手を卓郎の胸に宛がって、心臓が止まっていることを確認したときはほっとした。その場に座って息を整えているうちに、歓喜が込み上げてきた。これまでに溜め込んできた恨みを晴らせたし、もう卓郎から嫌な目に遭わされることはない。
だけど、その気持ちは長続きしなかった。殺人を犯したという、取り消しようのない現実が怖くなってきたからだ。
大変なことをしてしまったという思いに、体が芯から震えた。当時はまだ十一歳だったから、少年法とか、そういう知識はまだインプットされていなくて。刑務所に入れられて死刑にされるんだって思うと、恐ろしかった。嫌だ、死にたくないって、本気で思った。それでいて、頭の中には冷静というか、妙に呑気で他人事な部分もあって、自分も中後保さんみたいに首を吊って死ぬのかな、家にロープはあったっけ、なんて考えたりもした。
自分が助かるには、卓郎が死んだ事実をなかったことにするしかない。
やがてわたしはそんな考えに囚われた。そのためには死体をどうにかしないといけないんだけど、心も体も疲れ果ててしまって、いつまで経っても前に進めない。
その場に座り込んだままでいると、突然気配を感じた。振り向くと、部屋の入口にいつの間にか虎がいた。風を肌に感じたから、玄関の戸を開けて入ってきたのだと分かった。
中後保さんだ、と思った。
最近よく小毬に出没する人食い虎は、数か月前に自殺した中後保さんの生まれ変わりではないかという噂は、もちろんわたしの耳にも届いていた。わたしは非科学的なことは信じない質なのだけど、それでも「この虎は中後保さんだ」って一目で分かった。上手く説明できないけど、中後さんを感じさせる雰囲気が虎からは漂っていたの。
虎――中後さんは緑色の瞳でわたしをじっと見つめている。その瞳を見返しているうちに、だんだん怖くなってきた。虎は静観するというふうで、わたしに対する好意も敵意も感じなかったけど、こちらが少しでも向こうの気に障るような行動をとれば、牙を剥き出しにして襲いかかってくるような雰囲気は感じた。
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