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【おまけ】
丸い月
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夜道をぶらぶらと歩いていると、中空に真ん丸な朧月が浮かんでいる。
私の地元にある洋菓子屋では、満月をモチーフにした甘い菓子が販売されている。掌サイズで、丸く扁平な、薄黄色の、ふわふわ食感の生地。二つに割ると、濃厚だが優しい味わいのカスタードクリームが中からどろりと溢れ出す。
半ば無意識に、右手を空へ差し伸ばそうとして、月の表面に無数の小さな穴が開いていることに気がつく。その穴から、砂のように次々とこぼれ落ち、地上へと降り注いでいるものがある。その一粒が、私の右肩に落ちた。つまみ上げて眼前にかざすと、茶褐色の肌をした裸の男性だった。
タタール人、という言葉が頭に浮かんだ。直後、じゃぶじゃぶ、という水音が聞こえた。
いつの間にか私の隣で、腰が大きく曲がった、仙女じみた風体の老婆が、バスタブを洗い桶代わりにして汚れた食器を洗っている。
私の地元にある洋菓子屋では、満月をモチーフにした甘い菓子が販売されている。掌サイズで、丸く扁平な、薄黄色の、ふわふわ食感の生地。二つに割ると、濃厚だが優しい味わいのカスタードクリームが中からどろりと溢れ出す。
半ば無意識に、右手を空へ差し伸ばそうとして、月の表面に無数の小さな穴が開いていることに気がつく。その穴から、砂のように次々とこぼれ落ち、地上へと降り注いでいるものがある。その一粒が、私の右肩に落ちた。つまみ上げて眼前にかざすと、茶褐色の肌をした裸の男性だった。
タタール人、という言葉が頭に浮かんだ。直後、じゃぶじゃぶ、という水音が聞こえた。
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