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T市市民ホールの駐車場の一角を利用して、T市公認のご当地アイドル・河西碧梧桐子の握手会が催された。
三十人前後の参加者が順番待ちの列に並んでいる。年齢は様々だが、いずれも男性だ。全員、碧梧桐子がレギュラー出演しているローカル番組のオリジナルTシャツを着ていて、彼女の熱烈なファンだと一目で分かる。
自分の番が訪れると、参加者は満面の笑みで、碧梧桐子と固く握手を交わし、盛んに言葉を投げかけた。碧梧桐子は一貫してにこやかに応対した。一人に許された時間は一分程度。握手を終えた参加者は、会場から去らずに、碧梧桐子がいるテントから少し離れた場所に佇み、彼女が他の参加者と交流する様子を、ぎらついた目で、それでいて無表情に眺めていた。
やがて最後の参加者の番となった。碧梧桐子は笑顔で右手を差し出した。ニット帽を目深に被ったその男は、その手を無視し、背負っていたリュックサックに右手を入れた。そして中からナイフを掴み出し、無言で彼女に切りつけた。顔面が深々と切り裂かれ、鮮血が迸った。男は機械のように淡々とナイフを振るい、彼女の体を着実に傷つけていく。
「誰か! 助けて! 助けてぇ!」
会場に留まっている参加者に向かって、碧梧桐子は助けを求めた。しかし彼らは、表情のない顔で、それでいて双眸をぎらつかせて、切り裂かれている彼女を傍観するばかりで、誰一人として助けに入ろうとしない。
やがて碧梧桐子は地面に倒れ、身じろぎ一つしなくなった。脈拍が停止していることを確認すると、男はナイフをリュックサックに仕舞い、徒歩で会場を後にした。
男が去ったのを見届けると、会場に居残っていた参加者一同は、碧梧桐子の遺体を取り囲んだ。彼らはしばしの間、目ばかりがぎらついた表情のない顔で、動かぬ碧梧桐子を黙然と見下ろしていたが、やがて握手を交わしたのと同じ順番で彼女を犯し始めた。
三十人前後の参加者が順番待ちの列に並んでいる。年齢は様々だが、いずれも男性だ。全員、碧梧桐子がレギュラー出演しているローカル番組のオリジナルTシャツを着ていて、彼女の熱烈なファンだと一目で分かる。
自分の番が訪れると、参加者は満面の笑みで、碧梧桐子と固く握手を交わし、盛んに言葉を投げかけた。碧梧桐子は一貫してにこやかに応対した。一人に許された時間は一分程度。握手を終えた参加者は、会場から去らずに、碧梧桐子がいるテントから少し離れた場所に佇み、彼女が他の参加者と交流する様子を、ぎらついた目で、それでいて無表情に眺めていた。
やがて最後の参加者の番となった。碧梧桐子は笑顔で右手を差し出した。ニット帽を目深に被ったその男は、その手を無視し、背負っていたリュックサックに右手を入れた。そして中からナイフを掴み出し、無言で彼女に切りつけた。顔面が深々と切り裂かれ、鮮血が迸った。男は機械のように淡々とナイフを振るい、彼女の体を着実に傷つけていく。
「誰か! 助けて! 助けてぇ!」
会場に留まっている参加者に向かって、碧梧桐子は助けを求めた。しかし彼らは、表情のない顔で、それでいて双眸をぎらつかせて、切り裂かれている彼女を傍観するばかりで、誰一人として助けに入ろうとしない。
やがて碧梧桐子は地面に倒れ、身じろぎ一つしなくなった。脈拍が停止していることを確認すると、男はナイフをリュックサックに仕舞い、徒歩で会場を後にした。
男が去ったのを見届けると、会場に居残っていた参加者一同は、碧梧桐子の遺体を取り囲んだ。彼らはしばしの間、目ばかりがぎらついた表情のない顔で、動かぬ碧梧桐子を黙然と見下ろしていたが、やがて握手を交わしたのと同じ順番で彼女を犯し始めた。
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