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一日目の日記①
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『七月 二十五日
昨日書いた文章を読み返してみると、「日記を書こうと思う」ではなくて「日記のようなものを書こうと思う」という表現を使っていた。世間一般が想像する日記とは異なる代物を書きつづることになる予感が昨日の時点でしていたのだけど、どうやらそうなりそうだ。
僕はこれから、今日あった出来事についてではなくて、過去に体験した出来事とそれについての感想をこのノートにしたためるつもりでいる。
よくよく考えると、日記には今日起きた出来事しか書いてはいならない決まりはないのだけど、僕が書くものは、当たり前の日記とは一味違うものになるだろう。
前置きが少々長すぎたかもしれない。頭の中で今にもあふれ出しそうに増殖している「書きたいこと」を文字に変換するために、右手を動かそう。
僕は場面緘黙症だ。
医師の診断を受けたわけではない。インターネットなどで得た情報や診断基準と照らし合わせて、場面緘黙症を罹患している可能性が極めて高いと自己診断したのだ。
僕自身もこの病気の存在を知って長いわけではない。おさらいがてら、簡単に特徴をまとめておこう。
場面緘黙症とは、知能や肉体に障害が認められないにもかかわらず、特定の社会状況において過剰な不安のせいで発語できなくなる精神疾患で、恐怖症の一種とされている。
緘黙とは、緘口令という熟語から察せられるとおり、口を閉ざしてしゃべらないという意味。人間は誰しも緊張状態に陥ると体が硬直するものだけど、場面緘黙症患者は特定の状況に置かれたさいに感じる極度の不安から身を守るために、固く口を閉ざすのだ。
「特定の社会状況」は個人によって異なる。たとえば、Aという場所では一言も口をきけないがBという場所では普通にしゃべることができ、Cくん相手にはにこやかに談笑するがDさん相手だと硬い表情で黙り込む。日ごろ気軽に言葉を交わしているEさんとも、Fという場においては会話がままならなくなる。
緘黙以外の主な症状としては、体が硬直し動作がぎこちなくなる緘動。感覚過敏、夜尿、分離不安などの患者も多いとされている。軽度の患者は小声での応答も可能だが、中程度の患者は指差しや頷きや筆談や手話など非言語的コミュニケーションのみとなり、重度の患者は呼びかけられても無表情で棒立ちしたままと、人によって状態はさまざまだ。学校などではしゃべらないが、家庭ではむしろ饒舌な患者も多く、早期発見が遅れることも少なくない。発病の要因としては、抑制的な気質、環境、あるいは神経生物学的要因も考えられる。失語症や広汎性発達障害などと混同されやすいが、発達障害を併発している場面緘黙症患者は七割近くもいるという。
昨日書いた文章を読み返してみると、「日記を書こうと思う」ではなくて「日記のようなものを書こうと思う」という表現を使っていた。世間一般が想像する日記とは異なる代物を書きつづることになる予感が昨日の時点でしていたのだけど、どうやらそうなりそうだ。
僕はこれから、今日あった出来事についてではなくて、過去に体験した出来事とそれについての感想をこのノートにしたためるつもりでいる。
よくよく考えると、日記には今日起きた出来事しか書いてはいならない決まりはないのだけど、僕が書くものは、当たり前の日記とは一味違うものになるだろう。
前置きが少々長すぎたかもしれない。頭の中で今にもあふれ出しそうに増殖している「書きたいこと」を文字に変換するために、右手を動かそう。
僕は場面緘黙症だ。
医師の診断を受けたわけではない。インターネットなどで得た情報や診断基準と照らし合わせて、場面緘黙症を罹患している可能性が極めて高いと自己診断したのだ。
僕自身もこの病気の存在を知って長いわけではない。おさらいがてら、簡単に特徴をまとめておこう。
場面緘黙症とは、知能や肉体に障害が認められないにもかかわらず、特定の社会状況において過剰な不安のせいで発語できなくなる精神疾患で、恐怖症の一種とされている。
緘黙とは、緘口令という熟語から察せられるとおり、口を閉ざしてしゃべらないという意味。人間は誰しも緊張状態に陥ると体が硬直するものだけど、場面緘黙症患者は特定の状況に置かれたさいに感じる極度の不安から身を守るために、固く口を閉ざすのだ。
「特定の社会状況」は個人によって異なる。たとえば、Aという場所では一言も口をきけないがBという場所では普通にしゃべることができ、Cくん相手にはにこやかに談笑するがDさん相手だと硬い表情で黙り込む。日ごろ気軽に言葉を交わしているEさんとも、Fという場においては会話がままならなくなる。
緘黙以外の主な症状としては、体が硬直し動作がぎこちなくなる緘動。感覚過敏、夜尿、分離不安などの患者も多いとされている。軽度の患者は小声での応答も可能だが、中程度の患者は指差しや頷きや筆談や手話など非言語的コミュニケーションのみとなり、重度の患者は呼びかけられても無表情で棒立ちしたままと、人によって状態はさまざまだ。学校などではしゃべらないが、家庭ではむしろ饒舌な患者も多く、早期発見が遅れることも少なくない。発病の要因としては、抑制的な気質、環境、あるいは神経生物学的要因も考えられる。失語症や広汎性発達障害などと混同されやすいが、発達障害を併発している場面緘黙症患者は七割近くもいるという。
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