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四日目の日記⑧
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今からでも遅くない。姉さんに相談してみようか?
……無理だ。不登校になったことで、姉さんとのあいだにはさらに線が引かれてしまっている。前回までの三回で引かれたものの何倍もの数の線が。今となってはもはや、姉さんから「悩みがあるなら言ってみなさい」と優しく、いつもの厳しくも優しくではなくて、混じり気のない優しさ一色に染まった声でそう言われたとしても、なにも言い出せなくなってしまった。
だから、こうしてこの日記を書いている。
けっきょく、僕にとって姉さんは憧れだったのだろう。共に過ごしてきた関係だけど、同じ地平に肩を並べて立っているという認識ではなかった。ひとえに場面緘黙症という、他者とのコミュニケーションを阻害する病のせいで。
僕は最初から、姉さんと本当の意味できょうだいにはなれない運命だったのかもしれない。
場面緘黙症は後天的な病。そんなことは百も承知だ。それでも、それが運命だったのだと断言したくなる。結論づけたくなる。
僕は前段落の文章を書き終えたところでいったんペンを置いた。前回の日記と比べると今回は短いけど、肉薄するくらいの疲労感を今僕は覚えている。
僕と姉さんは本当のきょうだいにはなれない運命にあった――こんなさびしい結論にたどり着くために、精神的に肉体的に疲労しながら日記を書いていたなんて! いや、それとも、この結論に至ったからこそのこの疲労なのか?
どうでもいい。どちらであっても、どちらでもなくても。すでに結論は下っていて、そして動かせない。不変不動だからこそ結論と呼ぶのだから。
僕と姉さんは本当のきょうだいにはなれない。だから、姉さんを頼ることはできない。すなわち、僕に残された方法は「あれ」しかない。
一見飛躍しているようだけど、たぶん正しい。なぜって、他の方法を探す気力はもはや残っていないのだから。
日記を書きながら考える? それも乙だと言いたいところだけど、僕が書く日記はあと一回と決めている。そんなことのために最後の一回を使うわけにはいかない。決定はもう覆せない。覆せるけど、覆せないんだ。もう決めたことだから。決めたことでも変えられるけど、決めたことは変えない、それが僕にとっての決定だ。だから、それが最終決定。そう、最終決定なのだ。
昨日よりも短いせいか、書き漏らしたことがある気もするけど、「あれ」が確定事項だということを確認したのだから、これ以上無理に書く必要はない。
今日のところはノートを閉じよう』
……無理だ。不登校になったことで、姉さんとのあいだにはさらに線が引かれてしまっている。前回までの三回で引かれたものの何倍もの数の線が。今となってはもはや、姉さんから「悩みがあるなら言ってみなさい」と優しく、いつもの厳しくも優しくではなくて、混じり気のない優しさ一色に染まった声でそう言われたとしても、なにも言い出せなくなってしまった。
だから、こうしてこの日記を書いている。
けっきょく、僕にとって姉さんは憧れだったのだろう。共に過ごしてきた関係だけど、同じ地平に肩を並べて立っているという認識ではなかった。ひとえに場面緘黙症という、他者とのコミュニケーションを阻害する病のせいで。
僕は最初から、姉さんと本当の意味できょうだいにはなれない運命だったのかもしれない。
場面緘黙症は後天的な病。そんなことは百も承知だ。それでも、それが運命だったのだと断言したくなる。結論づけたくなる。
僕は前段落の文章を書き終えたところでいったんペンを置いた。前回の日記と比べると今回は短いけど、肉薄するくらいの疲労感を今僕は覚えている。
僕と姉さんは本当のきょうだいにはなれない運命にあった――こんなさびしい結論にたどり着くために、精神的に肉体的に疲労しながら日記を書いていたなんて! いや、それとも、この結論に至ったからこそのこの疲労なのか?
どうでもいい。どちらであっても、どちらでもなくても。すでに結論は下っていて、そして動かせない。不変不動だからこそ結論と呼ぶのだから。
僕と姉さんは本当のきょうだいにはなれない。だから、姉さんを頼ることはできない。すなわち、僕に残された方法は「あれ」しかない。
一見飛躍しているようだけど、たぶん正しい。なぜって、他の方法を探す気力はもはや残っていないのだから。
日記を書きながら考える? それも乙だと言いたいところだけど、僕が書く日記はあと一回と決めている。そんなことのために最後の一回を使うわけにはいかない。決定はもう覆せない。覆せるけど、覆せないんだ。もう決めたことだから。決めたことでも変えられるけど、決めたことは変えない、それが僕にとっての決定だ。だから、それが最終決定。そう、最終決定なのだ。
昨日よりも短いせいか、書き漏らしたことがある気もするけど、「あれ」が確定事項だということを確認したのだから、これ以上無理に書く必要はない。
今日のところはノートを閉じよう』
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