レム

阿波野治

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折り鶴

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 もやもやした気持ちを抱えながらも、凪は言われたとおりにする。中に入っていたものを見て、思い出した。

「折り紙! そっか、今日はいっしょに折り鶴を折る約束だったね」
「もしかして、忘れてた? 実はわたしも忘れてて、お昼ごはんを食べたあとで急いで売店に買いに行ったんだ。じゃあ、折り紙広げちゃって」
「広げるって、どこへ?」
「わたしの膝の上とか、ベッドの上とかにだよ」

 これも言いつけに従う。七海はその中からレモン色の一枚を選んで凪に手渡し、自分はあざやかな赤色の一枚を手にとる。

「じゃあ、わたしが言うとおりにやってみて。まずは――」

 七海のレクチャーが始まった。口述と実践、両方による指導だ。
 凪も折り鶴を折った経験が何度かある。説明を聞き、お手本を観察し、自分の指を懸命に動かしているうちに、遠い記憶が甦り、指が勝手に動き出した。鶴の折りかたはそう難しくない。二分後には二羽の折り鶴が完成していた。

「わー、すごい。上手、上手」

 七海は真っ赤な一羽を自分の膝に置き、両手をぱちぱちと鳴らした。

「凪は自分のことを不器用だって言っていたけど、とってもきれいに折れてるよ。わざわざ教えたのが失礼なくらい」
「細かい部分ではかなり差があるけどね。余計な折り目がつくとか、端と端がぴったりじゃないとか、七海の折り鶴にはそういうところが全然ない」
「ちゃんと折れたんだから、差なんてないも同然だよ。じゃあ、今度は自分だけで作ってみて。それか、時間内にどっちが多く折れるかの競争、やってみる?」
「七海に勝つのは難しそうだね。僕としてはのんびり折りたいかな」
「じゃあ、そうしよう」

 黙々と手を動かしたのは最初の二・三羽だけで、あとは会話をしながらの作業となる。何色の折り紙が好きか。昨日公園で遊んだときの思い出。互いの日常生活について。どの話題も他愛ないが、手を動かしながら話すにはちょうどいい。岩永月夜が七海に影響を与えている疑惑のことが胸を過ぎることもあったが、しゃべりながら作業しているうちに自己主張しなくなった。
 凪はときどき自分の手元から目を離し、巧みに動く七海の指に見とれた。紙が立てる音が快かった。意識が作業から逸れたせいで、ちょっとしたミスに気づかないまま工程を進めた結果、いびつな折り鶴が完成し、その出来栄えを二人で笑い合う。そんな一幕もあった。
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