60 / 77
60
しおりを挟む
求めている答えを得られないまま、僕は高卒認定試験に臨んだ。僕にとって大きなその課題は、ちっぽけな設問の集まりを解くにあたっての障害にはなり得なかった。
結果は、受験した全科目で合格。
レイに報告すると、彼女はほほ笑んで「おめでとう」と言った。大喜びするでも、淡々と受け流すのでもない。僕が理想としていて、期待していたとおりの喜びかただった。
翌日にレイは、去年のクリスマスの三日前にショートケーキを買った店で、合格祝いとして、季節としては少し早いモンブランケーキを買ってきた。美味しかった。味のクオリティの高さはショートケーキを食べて知っていたが、大切な人が僕を祝福する目的で買ってくれたのだと思うと、喜びもひとしおだった。
秋は九月に僕、十月にレイと、誕生日がある月が連続する。積極的に外出するのを好まず、記念日を大々的に祝う趣味もない僕たちは、買ってきたケーキを食べることでお祝いを済ませた。僕は合格祝いのモンブランが美味しかったということで、二回連続でそれを、レイは好物だというチーズケーキを、それぞれリクエストして食べた。
単調だが幸福な日々にアクセントが加わると、単調さがまったく気になるくらいに幸福になれる。僕たちも例外ではなかった。
しかし、幸福感の高まりは長続きしなかった。
レイが曽我家を訪れる頻度が次第に低くなる不幸は、幸いにも、最悪でも週休四日、不動の休日である土日を含めて四日で歯止めがかかった。
問題が生じたのは、僕の心。
高卒認定試験というハードルを乗り越えたことで、次なるハードルである大学入学共通テストと向き合わざるを得なくなったのだ。
僕としては進学に舵を切ったつもりはない。ただ、大学入学共通テストを受けなければ、進学するにあたって不都合が生じる可能性が出てくる。そのせいで、進学すると決めたわけではないのに勉強に専念しなければならないという、歪な状態に置かれてしまった。
もちろん、大学入学共通テストの存在・必要性・重要性は、ずっと前から重々承知している。毎日、ないに等しいくらい少しずつではあるが、それ向けの勉強にも取り組んでいた。しかし、本格的に取り組むとなると、精神的な負担は段違いだった。また、両親、というよりも父親は、「高卒認定試験に合格したことで、ようやくスタートラインに立った」という認識らしく、いっそう激しく、あからさまにプレッシャーをかけてくるようになった。
結果は、受験した全科目で合格。
レイに報告すると、彼女はほほ笑んで「おめでとう」と言った。大喜びするでも、淡々と受け流すのでもない。僕が理想としていて、期待していたとおりの喜びかただった。
翌日にレイは、去年のクリスマスの三日前にショートケーキを買った店で、合格祝いとして、季節としては少し早いモンブランケーキを買ってきた。美味しかった。味のクオリティの高さはショートケーキを食べて知っていたが、大切な人が僕を祝福する目的で買ってくれたのだと思うと、喜びもひとしおだった。
秋は九月に僕、十月にレイと、誕生日がある月が連続する。積極的に外出するのを好まず、記念日を大々的に祝う趣味もない僕たちは、買ってきたケーキを食べることでお祝いを済ませた。僕は合格祝いのモンブランが美味しかったということで、二回連続でそれを、レイは好物だというチーズケーキを、それぞれリクエストして食べた。
単調だが幸福な日々にアクセントが加わると、単調さがまったく気になるくらいに幸福になれる。僕たちも例外ではなかった。
しかし、幸福感の高まりは長続きしなかった。
レイが曽我家を訪れる頻度が次第に低くなる不幸は、幸いにも、最悪でも週休四日、不動の休日である土日を含めて四日で歯止めがかかった。
問題が生じたのは、僕の心。
高卒認定試験というハードルを乗り越えたことで、次なるハードルである大学入学共通テストと向き合わざるを得なくなったのだ。
僕としては進学に舵を切ったつもりはない。ただ、大学入学共通テストを受けなければ、進学するにあたって不都合が生じる可能性が出てくる。そのせいで、進学すると決めたわけではないのに勉強に専念しなければならないという、歪な状態に置かれてしまった。
もちろん、大学入学共通テストの存在・必要性・重要性は、ずっと前から重々承知している。毎日、ないに等しいくらい少しずつではあるが、それ向けの勉強にも取り組んでいた。しかし、本格的に取り組むとなると、精神的な負担は段違いだった。また、両親、というよりも父親は、「高卒認定試験に合格したことで、ようやくスタートラインに立った」という認識らしく、いっそう激しく、あからさまにプレッシャーをかけてくるようになった。
0
あなたにおすすめの小説
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる