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阿澄 十二
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二階に達すると同時、阿澄は息を呑んだ。教室から高梨創介が現れるのを見たからだ。
思いがけない出現にも驚いたが、それ以上に、険しい表情をしていたことに驚いた。まるで校内で児童が児童を刺す事件でも起きたかのように緊迫しているのだ。
高梨はすぐに阿澄に気がつき、つかつかと歩み寄ってきた。手首を掴み、有無を言わさずに男子トイレの中へと引っ張り込む。
足を踏み入れたとたん、金木犀が香った。嗅ぎ慣れているはずなのに、はじめて嗅ぐ匂いのように感じられた。個室の隅でオレンジ色の芳香剤の容器が横倒しになっていて、「キンモクセイの香り」と書いてある。
阿澄の体調はいつの間にか正常に戻っていた。心臓はリズムを保ちながらも力強く拍動している。魂が静かに昂っている。
高梨は真っ先に阿澄の服を脱がせた。今度は逆に阿澄に服を脱がせてもらいながら、彼女の裸体を粘度の高い手つきで触る。冷たい手だった。自分の体が熱くなっているせいで相対的にそう感じるのだということに、心まで熱くなっている彼女は気づかない。
裸の二人は事前に取り決めを交わしていたかのようにキスをする。
高梨は阿澄を便座に座らせ、何通りかのやりかたを使い分けながら、発展途上の肉体に入念に下準備を施す。すべてアダルト動画で見た行為で、手つきも慎重かつ穏やかだったので、安心して身を任せられた。動画の中で男優たちが実演していたよりも格段に下手くそなのも、かえって安心した。
行為を及ぼされる阿澄の顔は、リラックスしているとき特有の柔和な表情に包まれている。一方の高梨の面差しは極めて真剣で、他者からの嘲笑を断固として拒絶している。
それが教え子をいっそう和ませる要因になっていることなど知る由もない新任教師は、一心不乱に己の役割に徹し、
「いくよ、相原」
とうとう阿澄の狭い入口をこじ開け、内部への侵入に成功した。
激しい痛みに体を縦に貫かれ、柔和な表情は崩壊した。思わず爪を立てて彼の裸にしがみついた。
前後運動がはじまった。開始時から続く荒々しい息づかいとはうらはらに動きは機械的だ。
動かれるたびに痛かった。阿澄は高梨の裸の肩に爪を立てながら、決定的な瞬間が訪れるのを待ちつづけた。
高梨の腰づかいがにわかに激しさを増した。阿澄は奥歯で悲鳴を噛み殺す。前後運動の速度はいっそう加速する。声を押し殺しきれない。高梨もうめいている。頭の中心が白くぼやけていく。意識が彼女のもとから飛び立とうとする寸前、
断末魔のような声とともに白が解き放たれ、行為は全停止する。
体勢が崩れて便座から滑り落ちそうになったが、高梨に抱きとめられた。彼は阿澄の耳に唇を寄せ、息を弾ませながらささやく。
「相原、この交わりで君は私の子を孕んだよ。きっと孕んだよ。愛しているよ、相原」
金木犀の芳香の中、高梨創介は生真面目な教師の皮をかぶった神なのではないかと、阿澄は本気で疑った。
なぜって、神でなければ、こうも自信をもって断言できるはずがないではないか。
思いがけない出現にも驚いたが、それ以上に、険しい表情をしていたことに驚いた。まるで校内で児童が児童を刺す事件でも起きたかのように緊迫しているのだ。
高梨はすぐに阿澄に気がつき、つかつかと歩み寄ってきた。手首を掴み、有無を言わさずに男子トイレの中へと引っ張り込む。
足を踏み入れたとたん、金木犀が香った。嗅ぎ慣れているはずなのに、はじめて嗅ぐ匂いのように感じられた。個室の隅でオレンジ色の芳香剤の容器が横倒しになっていて、「キンモクセイの香り」と書いてある。
阿澄の体調はいつの間にか正常に戻っていた。心臓はリズムを保ちながらも力強く拍動している。魂が静かに昂っている。
高梨は真っ先に阿澄の服を脱がせた。今度は逆に阿澄に服を脱がせてもらいながら、彼女の裸体を粘度の高い手つきで触る。冷たい手だった。自分の体が熱くなっているせいで相対的にそう感じるのだということに、心まで熱くなっている彼女は気づかない。
裸の二人は事前に取り決めを交わしていたかのようにキスをする。
高梨は阿澄を便座に座らせ、何通りかのやりかたを使い分けながら、発展途上の肉体に入念に下準備を施す。すべてアダルト動画で見た行為で、手つきも慎重かつ穏やかだったので、安心して身を任せられた。動画の中で男優たちが実演していたよりも格段に下手くそなのも、かえって安心した。
行為を及ぼされる阿澄の顔は、リラックスしているとき特有の柔和な表情に包まれている。一方の高梨の面差しは極めて真剣で、他者からの嘲笑を断固として拒絶している。
それが教え子をいっそう和ませる要因になっていることなど知る由もない新任教師は、一心不乱に己の役割に徹し、
「いくよ、相原」
とうとう阿澄の狭い入口をこじ開け、内部への侵入に成功した。
激しい痛みに体を縦に貫かれ、柔和な表情は崩壊した。思わず爪を立てて彼の裸にしがみついた。
前後運動がはじまった。開始時から続く荒々しい息づかいとはうらはらに動きは機械的だ。
動かれるたびに痛かった。阿澄は高梨の裸の肩に爪を立てながら、決定的な瞬間が訪れるのを待ちつづけた。
高梨の腰づかいがにわかに激しさを増した。阿澄は奥歯で悲鳴を噛み殺す。前後運動の速度はいっそう加速する。声を押し殺しきれない。高梨もうめいている。頭の中心が白くぼやけていく。意識が彼女のもとから飛び立とうとする寸前、
断末魔のような声とともに白が解き放たれ、行為は全停止する。
体勢が崩れて便座から滑り落ちそうになったが、高梨に抱きとめられた。彼は阿澄の耳に唇を寄せ、息を弾ませながらささやく。
「相原、この交わりで君は私の子を孕んだよ。きっと孕んだよ。愛しているよ、相原」
金木犀の芳香の中、高梨創介は生真面目な教師の皮をかぶった神なのではないかと、阿澄は本気で疑った。
なぜって、神でなければ、こうも自信をもって断言できるはずがないではないか。
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