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リーフのこと
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懸案があるせいで、逍遥と破壊を心から楽しめなくなった。飽きたからではなく、枷となっているのは明らかにそれだった。
河原での出来事があって以来、二人は吉野川以北の徳島市内を漫然と逍遥していたのだが、「消えてくれない」発言を機に南岸へと引き返した。住み慣れた土地を離れることに、言葉で説明するのが難しい不安を覚えたのも理由の一つ。初心に帰れば見えてくるものがあるのでは、という根拠のない期待が二番目の理由だ。
なかば覚悟していたことではあったが、場所を変更したことで天啓が舞い降りるという、イナに都合がいい展開とはならかった。イナは神なのに、神の従者であるはずの天は彼女に味方しなかった。
それは軽度の絶望を彼女にもたらした。日常に飽き飽きし始めた心を、明らかに悪い方向へと向かわせた。
倦んだ日々は、いつしか腐りゆく日常へと変質していた。なにをしても面白くないのだ。
心に常に暗く陰っている部分がある。なにをするときでもそれが負の影響力を行使し、邪魔をする。それがある限り、天真爛漫に目前の事象を楽しむなど不可能だし、その障害を乗り越えてまでなにかを楽しもうと努めるのも、本末転倒のようで馬鹿馬鹿しい。
怪物でも襲ってきてくれれば、ちょうどいい刺激になるのに。
そんな歪んだ願いを嘲笑うかのように、彼らは沈黙した。一世一代の難事に臨む気概で待ち構えても、姿を現さないのだ。
しかし、脅威が根源的に解消されたわけではない。イナが怪物のことなど一ミリも考えていないときに限って、彼らはやって来た。
そのせいで、リーフの手を借りずに怪物たちを撃退する練習はまったくできなかった。不意をつかれると、首筋にとまった羽虫を反射的に払いのけるように、脅威を遠ざけたい気持ちが急激に強まり、胸中をその一念が占める。それをリーフが瞬時に汲み取り、イナが行動を起こす前にさっさと敵を排除するのだ。
リーフの本質を考えれば、対応としては理解できる。ただ、イナが当座の目標と認識していることがなにかを認識し直すと、葛藤が生じて然るべき二者択一を速やかに一つに絞るというのは、引っかかるものがあった。
リーフは厳密な意味で生身の人間ではないから、実際には葛藤とは無縁なのだ。そう思うと、一筋縄ではいかない悩みに悩んでいる己の現状と無意識に比べてしまい、愉快な気持ちにはなれなかった。
もっとも、不快感の度合いは決して激しくないから、リーフを永遠に不可逆的に抹消したい、という欲求を増強する効果までは発揮しなかった。
そもそも、激しく憎むという方法では、リーフの存在を消すことは不可能だろう。そのような正攻法が攻略法ならば、リーフ本人が真っ先に提案していたはずだからだ。問題解決の切り口は、おそらくそれとはまったく別のものだ。
丸一日を費やして、イナがたしからしいと合点できたのはそれだけだった。
河原での出来事があって以来、二人は吉野川以北の徳島市内を漫然と逍遥していたのだが、「消えてくれない」発言を機に南岸へと引き返した。住み慣れた土地を離れることに、言葉で説明するのが難しい不安を覚えたのも理由の一つ。初心に帰れば見えてくるものがあるのでは、という根拠のない期待が二番目の理由だ。
なかば覚悟していたことではあったが、場所を変更したことで天啓が舞い降りるという、イナに都合がいい展開とはならかった。イナは神なのに、神の従者であるはずの天は彼女に味方しなかった。
それは軽度の絶望を彼女にもたらした。日常に飽き飽きし始めた心を、明らかに悪い方向へと向かわせた。
倦んだ日々は、いつしか腐りゆく日常へと変質していた。なにをしても面白くないのだ。
心に常に暗く陰っている部分がある。なにをするときでもそれが負の影響力を行使し、邪魔をする。それがある限り、天真爛漫に目前の事象を楽しむなど不可能だし、その障害を乗り越えてまでなにかを楽しもうと努めるのも、本末転倒のようで馬鹿馬鹿しい。
怪物でも襲ってきてくれれば、ちょうどいい刺激になるのに。
そんな歪んだ願いを嘲笑うかのように、彼らは沈黙した。一世一代の難事に臨む気概で待ち構えても、姿を現さないのだ。
しかし、脅威が根源的に解消されたわけではない。イナが怪物のことなど一ミリも考えていないときに限って、彼らはやって来た。
そのせいで、リーフの手を借りずに怪物たちを撃退する練習はまったくできなかった。不意をつかれると、首筋にとまった羽虫を反射的に払いのけるように、脅威を遠ざけたい気持ちが急激に強まり、胸中をその一念が占める。それをリーフが瞬時に汲み取り、イナが行動を起こす前にさっさと敵を排除するのだ。
リーフの本質を考えれば、対応としては理解できる。ただ、イナが当座の目標と認識していることがなにかを認識し直すと、葛藤が生じて然るべき二者択一を速やかに一つに絞るというのは、引っかかるものがあった。
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丸一日を費やして、イナがたしからしいと合点できたのはそれだけだった。
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