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リーフの追求
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「いっしょに探していたからこそ分かったのですが、一つだけスルーした部屋がありました。あとで見るだろうと思って黙っていたのですが、一階をもう一度探したときも襖を開けませんでしたよね。ですから、言っておかなくてはと思いまして」
「――嘘だ。隈なく回ったのに、そんな場所があるはずないよ。襖があるってことは、隠し部屋ではないってことだよね」
「はい、ちゃんとした部屋です。案内しましょうか?」
怖いような、気味が悪いような気がしたが、イナは頷いた。歩き出したリーフの後ろについていく。
先導者の足が止まったのは、応接間の左隣。他の部屋にも使われていたのと代り映えしない、なんの変哲もない白い襖だ。分かりにくい場所に出入り口がある部屋ではないのは一目で分かる。
なのに、どうして、ぼくは襖を開けなかったんだろう?
「開けていませんよね?」
リーフが確認をとってくる。イナは奇妙なプレッシャーを感じながらも、首を縦に振る。額に汗が滲み出した気がして、掌で拭う。その手を己の目の前にかざしたが、雫の一滴さえも付着していない。
「では、開けてみましょうか。この部屋の中も探索しましょう」
「え……」
「おばあさまを待つにしても、なにもせずにいるよりも圧倒的に有意義ですから」
「……うん」
なんだかとても暑い。非科学的に高まったのは、イナの体温か、それとも室温なのか。
参照にするべく盗み見たリーフの顔は、普段通りにクールだ。体温か室温の問題に関しては、リーフはボディスーツを着て動き回っても汗一つかかない人間なので、なんの参考にもならない。そうと分かっていながら、なぜ顔色をうかがったのか。
「どうされました? 少し、顔色が悪いですね。先ほどは少し疲れたとおっしゃっていましたが」
「別に。力を使って疲れにくくしているのに、探し物を探しただけで疲れるわけがないから。なめんなって」
「では、なぜ開けるのを躊躇うのですか?」
イナは言葉に詰まった。十秒ほど考えて、指の腹で軽くマッサージするようにこめかみをかく。
「それは、あれだよ。その部屋には、ないと思うから」
「ないと思う、ですか」
「言葉通りの意味だよ。そこにはぼくが欲しいものはないから、開ける必要はない。そういう意味」
「どうして分かるのですか? この家を訪れる頻度はそう高くなくて、訪れたさいの記憶も無に等しいレベルで薄れている、という話でしたが」
「勘だよ、勘。疲れてはいないけどさ、ちょっとだらだらしたい気分だから、休もうよ。もういいよ、その部屋は」
「……イナ。あなたは、この部屋の中を見ることを恐れていますね」
心なしか、リーフの目つきは鋭い。
「は? 怖がってないし」
「それならば、開けましょう。お疲れなのであれば、私がメインで探索して、イナは簡単に探すだけでも構いませんし」
「だから、疲れてないってば。開けないものは開けないの。……リーフ、お前、神に逆らうわけ? わきまえろよな、自分の立場を」
「……イナ。堂々巡りになるだけなので、単刀直入に言います。この襖の向こうには、あなたのおばあさまの死にまつわる真実があります」
心臓が大きく跳ねた。
信じられない気持ちでリーフを見返す。臆することなく視線を受け止めたその顔は、揺るぎない確信を湛えている。
「――嘘だ。隈なく回ったのに、そんな場所があるはずないよ。襖があるってことは、隠し部屋ではないってことだよね」
「はい、ちゃんとした部屋です。案内しましょうか?」
怖いような、気味が悪いような気がしたが、イナは頷いた。歩き出したリーフの後ろについていく。
先導者の足が止まったのは、応接間の左隣。他の部屋にも使われていたのと代り映えしない、なんの変哲もない白い襖だ。分かりにくい場所に出入り口がある部屋ではないのは一目で分かる。
なのに、どうして、ぼくは襖を開けなかったんだろう?
「開けていませんよね?」
リーフが確認をとってくる。イナは奇妙なプレッシャーを感じながらも、首を縦に振る。額に汗が滲み出した気がして、掌で拭う。その手を己の目の前にかざしたが、雫の一滴さえも付着していない。
「では、開けてみましょうか。この部屋の中も探索しましょう」
「え……」
「おばあさまを待つにしても、なにもせずにいるよりも圧倒的に有意義ですから」
「……うん」
なんだかとても暑い。非科学的に高まったのは、イナの体温か、それとも室温なのか。
参照にするべく盗み見たリーフの顔は、普段通りにクールだ。体温か室温の問題に関しては、リーフはボディスーツを着て動き回っても汗一つかかない人間なので、なんの参考にもならない。そうと分かっていながら、なぜ顔色をうかがったのか。
「どうされました? 少し、顔色が悪いですね。先ほどは少し疲れたとおっしゃっていましたが」
「別に。力を使って疲れにくくしているのに、探し物を探しただけで疲れるわけがないから。なめんなって」
「では、なぜ開けるのを躊躇うのですか?」
イナは言葉に詰まった。十秒ほど考えて、指の腹で軽くマッサージするようにこめかみをかく。
「それは、あれだよ。その部屋には、ないと思うから」
「ないと思う、ですか」
「言葉通りの意味だよ。そこにはぼくが欲しいものはないから、開ける必要はない。そういう意味」
「どうして分かるのですか? この家を訪れる頻度はそう高くなくて、訪れたさいの記憶も無に等しいレベルで薄れている、という話でしたが」
「勘だよ、勘。疲れてはいないけどさ、ちょっとだらだらしたい気分だから、休もうよ。もういいよ、その部屋は」
「……イナ。あなたは、この部屋の中を見ることを恐れていますね」
心なしか、リーフの目つきは鋭い。
「は? 怖がってないし」
「それならば、開けましょう。お疲れなのであれば、私がメインで探索して、イナは簡単に探すだけでも構いませんし」
「だから、疲れてないってば。開けないものは開けないの。……リーフ、お前、神に逆らうわけ? わきまえろよな、自分の立場を」
「……イナ。堂々巡りになるだけなので、単刀直入に言います。この襖の向こうには、あなたのおばあさまの死にまつわる真実があります」
心臓が大きく跳ねた。
信じられない気持ちでリーフを見返す。臆することなく視線を受け止めたその顔は、揺るぎない確信を湛えている。
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