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惣助の秘密
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「アラバマ、クリームパン食べる?」
まだ眠気がとれないのか、ジーンズを足に通したところで力尽き、ベッドの上でぼーっとしているアラバマに声をかける。クリームパンが入ったレジ袋をちゃぶ台の上に置く。
「ほら、僕が買い物に行っているあいだ、アラバマはやることないから。どうする?」
「うん、食べる」
「じゃあ、ここに置いてあるから。ほしいものがあるならいっしょに買ってくるけど、なにかある?」
「食べ物?」
「食べ物でもいいし、それ以外でもいいし」
「んーとね、からあげ食べたい」
「からあげ? クリームパンにからあげは――まあ、いいか。飲み物用意するね」
冷蔵庫からコーヒー牛乳をとって戻ってくると、アラバマはなぜかシャツを脱ごうとしている。コーヒー牛乳の紙パックをちゃぶ台に置いたその手で、裾を掴んで阻止する。
「ちょっと。脱ぐんじゃなくて、着る。ほら、パーカー」
「うー……」
「徒歩五分もかからないから、アラバマが着替え終わるよりも帰ってくるほうが早いかもね。それじゃあ、行ってくる」
*
ドアが閉まる音。ドアが施錠される音。遠ざかる足音は聞こえない。
静かになったのに前後して、眠気は消えてなくなった。
なんとなくパーカーのフードを被り、あくびをしてみる。眠気はまったくないので、中途半端なあくびになった。フードを脱ぎ、髪の毛を軽くかきむしると、惣助の髪の毛と同じ匂いがほのかに漂った。
滑り落ちるようにベッドから下りると、目の前はちゃぶ台だ。
クリームパンの袋を手にとり、裏返す。カロリーは三百と少し。コーヒー牛乳パックを開封し、一口飲む。はぁ、とため息。左見右見する。
「……スマホ」
仕方なしに、ジーンズのポケットから通話専用のスマホを取り出したが、すぐにしまった。
*
コンビニの自動ドアを潜り、レジの前を通過する。背中を向けてなにやら作業していた女性店員が、いらっしゃいませー、と挨拶をした。髪の毛をトリコロールに染めた若い女性だ。
クリームパンはあった。からあげもあった。飲み物には紙パックのコーヒー牛乳を選ぶ。
「ポイントカードはお持ちですか」
「いえ」
「袋、ごいっしょでもよろしいですか」
「はい」
「レシートはどうされますか」
「いらないです」
「ありがとうございましたー」
*
「おーそーい」
ベッドの縁に腰かけて弾み、スプリングをぎいぎいと鳴らす。ほどなくそれにも飽きて、ぴょんとベッドから跳び下りて直立する。はあ、とため息。
室内を見回しているうちに、本棚に視線が留まった。歩み寄り、ざっと眺める。『鬼滅の刃』のコミックが一巻から最新巻まで、左から順に並べられている。その一巻を手にとり、ページをめくる。
はらり、となにかが足元に落ちた。
コミックを閉じ、落ちたものを拾い上げる。メモ帳サイズの紙きれだ。文字が書いてある。
『学生相談室 → 入りづらい雰囲気。。。
オンライン相談 → 有料! 高い!』
アラバマは顔を上げ、廊下と部屋を仕切るドアを見つめる。百八十度首を回して、ベランダに通じる掃き出し窓を見る。『鬼滅の刃』一巻を本棚に戻す。紙をもう一度見つめ、ジーンズのポケットに押しこむ。
掃き出し窓を開けてベランダに出る。空気は冷たい。なにも置かれていない、狭いベランダ。空は晴れていて、どこからか布団を叩く音がする。
少し背伸びをして景色を眺める。道のずっと先にコンビニを見つけ、じっと見つめる。
背伸びするのをやめ、ジーンズのポケットから紙を取り出す。
『学生相談室 → 入りづらい雰囲気。。。
オンライン相談 → 有料! 高い!』
ていねいに四つ折りにして、元の場所にしまう。それからまた景色を眺める。
まだ眠気がとれないのか、ジーンズを足に通したところで力尽き、ベッドの上でぼーっとしているアラバマに声をかける。クリームパンが入ったレジ袋をちゃぶ台の上に置く。
「ほら、僕が買い物に行っているあいだ、アラバマはやることないから。どうする?」
「うん、食べる」
「じゃあ、ここに置いてあるから。ほしいものがあるならいっしょに買ってくるけど、なにかある?」
「食べ物?」
「食べ物でもいいし、それ以外でもいいし」
「んーとね、からあげ食べたい」
「からあげ? クリームパンにからあげは――まあ、いいか。飲み物用意するね」
冷蔵庫からコーヒー牛乳をとって戻ってくると、アラバマはなぜかシャツを脱ごうとしている。コーヒー牛乳の紙パックをちゃぶ台に置いたその手で、裾を掴んで阻止する。
「ちょっと。脱ぐんじゃなくて、着る。ほら、パーカー」
「うー……」
「徒歩五分もかからないから、アラバマが着替え終わるよりも帰ってくるほうが早いかもね。それじゃあ、行ってくる」
*
ドアが閉まる音。ドアが施錠される音。遠ざかる足音は聞こえない。
静かになったのに前後して、眠気は消えてなくなった。
なんとなくパーカーのフードを被り、あくびをしてみる。眠気はまったくないので、中途半端なあくびになった。フードを脱ぎ、髪の毛を軽くかきむしると、惣助の髪の毛と同じ匂いがほのかに漂った。
滑り落ちるようにベッドから下りると、目の前はちゃぶ台だ。
クリームパンの袋を手にとり、裏返す。カロリーは三百と少し。コーヒー牛乳パックを開封し、一口飲む。はぁ、とため息。左見右見する。
「……スマホ」
仕方なしに、ジーンズのポケットから通話専用のスマホを取り出したが、すぐにしまった。
*
コンビニの自動ドアを潜り、レジの前を通過する。背中を向けてなにやら作業していた女性店員が、いらっしゃいませー、と挨拶をした。髪の毛をトリコロールに染めた若い女性だ。
クリームパンはあった。からあげもあった。飲み物には紙パックのコーヒー牛乳を選ぶ。
「ポイントカードはお持ちですか」
「いえ」
「袋、ごいっしょでもよろしいですか」
「はい」
「レシートはどうされますか」
「いらないです」
「ありがとうございましたー」
*
「おーそーい」
ベッドの縁に腰かけて弾み、スプリングをぎいぎいと鳴らす。ほどなくそれにも飽きて、ぴょんとベッドから跳び下りて直立する。はあ、とため息。
室内を見回しているうちに、本棚に視線が留まった。歩み寄り、ざっと眺める。『鬼滅の刃』のコミックが一巻から最新巻まで、左から順に並べられている。その一巻を手にとり、ページをめくる。
はらり、となにかが足元に落ちた。
コミックを閉じ、落ちたものを拾い上げる。メモ帳サイズの紙きれだ。文字が書いてある。
『学生相談室 → 入りづらい雰囲気。。。
オンライン相談 → 有料! 高い!』
アラバマは顔を上げ、廊下と部屋を仕切るドアを見つめる。百八十度首を回して、ベランダに通じる掃き出し窓を見る。『鬼滅の刃』一巻を本棚に戻す。紙をもう一度見つめ、ジーンズのポケットに押しこむ。
掃き出し窓を開けてベランダに出る。空気は冷たい。なにも置かれていない、狭いベランダ。空は晴れていて、どこからか布団を叩く音がする。
少し背伸びをして景色を眺める。道のずっと先にコンビニを見つけ、じっと見つめる。
背伸びするのをやめ、ジーンズのポケットから紙を取り出す。
『学生相談室 → 入りづらい雰囲気。。。
オンライン相談 → 有料! 高い!』
ていねいに四つ折りにして、元の場所にしまう。それからまた景色を眺める。
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