努力の天才レフティー

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第3章なんでお前がいるんだ

ハイレベルな紅白戦 ~純~

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「ピィィー」

乾いた空に鳴り響く。
紅白戦の開始の笛、東陸堂では、毎月チーム事にコンセプトをきめる。
そのコンセプトに沿っての練習意識を高め、紅白戦では、コンセプトを尊重しつつ個を伸ばす。
年が明け、純やその他の特待生は東陸堂で練習していた。
すでに4か月間この練習を繰り返してきたわけだ。
成長を実感できるもの、慣れずもがくもの、それぞれが悩みながらも前に進み、脱落者は未だに0だ。
大抵の学校であれば、入学早々にノックアウトしてしまう。
しかし、ここに来る選手の多くはトップに上がり、プロを目指している。
例え3軍といえど県でベスト4のチームを倒すだけの力がある。
それだけのメンバーが揃い、統率が取れるのも、この東陸堂ならではの、チームコンセプトに向けて足並みをそろえ練習ができるからであろう。
チーム力。
サッカーは1人ではできない。10人でも本当のチーム力引き出せないのだ。
たたった1人だが、そこには協力をすることによって生み出される力の大きさを責任を一人一人がこのチームに来て自覚する。
純もそんな中の1人だ。
壮行試合での得点の1点目は、自ら仕掛け流れを掴み、その流れの中でのコーナーを決めた。
2点目もパスは出すが、最後には自ら仕掛けゴールをこじ開けた。
これは全て純が、小学校の頃からの悔しさをバネに毎日練習をし、決して諦めなかった結果だろう。
技術の成長、忍耐、一歩を踏み出す勇気。
誰にでも身につけられるものではない。
多くは、才能だのセンスだの言い訳をいい諦める。
そこで諦めるの、諦めずやるのかの違いだ。
最後まで自分を信じた、信念を貫いたものだけが手にできる栄光。
純は、そんな中の1人だ。
しかし、純はこのチームで少し変わった。
どこか1人で打開するような強引な所がなくなった。
それは山田から、チームのコンセプトとは別に、設けられた、純へのコンセプトだった。
シュート禁止だ。
純は訳がわからなかった。
シュートが打てない、点を取れない、そのもどかしさに、最初は訳がわからなかった。
しかし、落ち着いて見たときに純の中で1つの答えがでた。
アシストをする事を。
最初の1か月、紅白戦とは言えど、純のチームは点がとなかった。
ダブルスコアとは言わないが、30分2本の試合で大差がついて負けていた。
純の中では、これもまた負けることが苦痛でしかなかった。
その中で見つけた1つの答えは、自らが指揮をとり、チームを動かす事だった。
そのうち、2年3年が主体の2軍の紅白戦は接戦となったのだった。
純へのシュート禁止はある時にとけた。

そしてこの日も同じだった。
1年主体の純のチームは、純にボールが渡ると周りが仕掛け出すのだ。
純が仕掛ければ他の1年へのマークが散漫になり、他の1年へのマークが厳しくなれば純が仕掛けた。
時には声を出し、チームを引っ張っていったのだ。
「パスよこせ!!」
純の一声につられた2年はマークに迷いが出た。
その隙に、ボールは純ではなくフォワードへと回った。
すかさず純も上がる。
ペナルティーエリア手前、ボールを持つフォワードの横に外から純が駆け上がって来るのを確認しパスを出す。
ボールを受ける純はペナルティーエリアの左外からシュート体制に入ったが、シュートは打たず、ブロックに来たディフェンスをかわし低か鋭いセンタリングを挙げた。
そこに詰めていた選手が頭で押し込み得点を挙げたのだった。

「ビューティフォー」
1軍と2軍のグラウンドの間で見ていた孫監督が呟く。
「ようやく1つ前に進んだようですね。努力の天才天堂 純。面白い選手だ全く。」
そして何事もなかったように他のグラウンドをみてまわった。

紅白戦は、その後に2年3年チームに1点を返され同点で折り返した。

「しっかり水分取れよ。5分後に2本目を行うからな。」
2軍コーチの指示に対し「はいっ!」と全員が返事をした。
この給水の時間も1年同士、2年3年からも試合の中で気づいた事を意見交換し、その逆に1年から意見をしたりもした。
最強たる所以は、ここにあるのかもしれない。
年が下だからと意見を聞かないのではなく、しっかりと意見を聞き、お互い意見をまとめることのできるチームの力は、お互いの引き出しの幅をひろげた。
純は率先して言うタイプではなかったが、純からも意見をあげていた。

「よーしっ、2本目始めるぞ。」
コーチの指示で選手がグラウンドにちる。

「ピィィー」
後半が始まった。
1年チームが勝ったことは何度かある。
2年3年チームの人数が多いために入れ替えたことによる影響もあるが、今日は入れ替えなかった。
それは、孫監督のしじだった。
孫監督は珍しいタイプの監督だった。
総監督という立場でありながらも、グラウンドが4面繋がっていることもあり、全てのチームをみるのだ。
過去に3軍からの飛び級をした選手もいた。
そして、シュート禁止を純に与えたのも総監督が山田に伝えるようにいっていたのだった。

試合は膠着した。
シュートまでどちらのチームも持ち込めない。
それだけ必死だった。
紅白戦のレベルではない。
何かの大会の決勝かのような試合展開だった。
2本目の15分が過ぎたあたりだった。
ボールが純に渡った。
ボールを受けたのはセンターライン。
パスでの攻めも考えた。しかし、純は攻め方を変えた。
「あれだけパスで攻め立てたんだから、これにはついてこれないだろう。」
今までのパスからの攻め立てを布石にドリブルで切れ込んで行く。
これはにはさすがに対応が遅れ、あっさりとペナルティエリアのまえまで運ばれた。
2年3年も流石にやられっぱなしではなかった。
純へのプレスに人数をかけて来た。
しかし、ここからはいつも通りだった。
味方へのパスからの展開に、純自身も攻撃参加をする。
そんな純につられてディフェンスがついてくるが、他の1年が空いた所にボールをいれた。
これにつられゴール前でフリーになった純にボールが上がる。
純のやや後ろ、ヘディングでは届かない。
だが、純の後ろにいる選手はがっちりマークされていたのをみると、純は体を反転させ足を上げた。
そしてその体制のままボールに合わせ振り抜いた。
ヨーロッパの選手かのようなしなやかな身のこなしのジャンピングボレーだった。
ボールは綺麗にゴール右隅に沈み込みここで勝ち越した。
試合はこのまま終わり、2-1で1年チームが勝った。

「なんて身体能力の高さだ。毎日毎日驚かされる。
だからこそ、君が本当の司令塔になるのを楽しみにしているよ。」
孫監督は純のゴールをみていた。
孫監督の求める本当の司令塔とはなんだろうか。
やはりよめなかった…

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感想 1

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みんなの感想(1件)

葵里
2018.08.15 葵里

純君の努力が徐々に実って結果に現れてきたのに感動しました!!

早く一軍に上がれるようになって欲しいです!
思わず応援したくなっちゃいます笑笑

解除

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