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本編
第049話 交錯する思惑⑥
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「まぁここの席で、ああだこうだ言ってても仕方がない。みんなこっちの生活にも慣れてきたようだし、ここらで本格的に仕事をしますかね……」
話を一通り聞き終えたツグナは、リリアとシルヴィが見ているその場で左腕から魔書を引き抜き、お目当ての従者を召喚する。向こうの世界で幾度となく彼の《創造召喚魔法》を目にしている二人にとって、魔書《クトゥルー》による召喚の儀式は真新しいものではない。
「さぁて、こっちの世界での初仕事だ。頼むぜ――ニア」
魔書を開いた彼が召喚したのは、これまでに何度も陰ながら主を助けてきた隠密・偵察特化の従者であるニアだ。
「ふふっ……やっと私の出番ですか。転生前の主の世界――場所がいずことなろうとも、この力は我が主とともに」
青白い燐光が晴れた後に顕現したニアは、白髪に尖った犬耳、二股に分かれたふさふさの尻尾が特徴の女性である。固有スキルに「従属同調」を持つ彼女は、自らの血を飲ませた人間以外の動物や昆虫類を従属させ、その感覚に彼女が同調できるスキルを持つ。
「あぁ、宜しく頼むよ。それで呼び出して早々だが、仕事だ」
「はい。それで、どのようなことでしょうか?」
彼の言葉に、二つ返事で承諾したニアは、早速とばかりに主たるツグナから手がかりとなる情報を得ようと訊ねる。当初はその発言に子供っぽいきらいがあったニアだったが、成長しレベルアップするにつれてそうした子供っぽい発言は徐々に消えていった。
「あぁ、それは――」
ニアの発言を受け、ツグナは改めて遭遇した魔物の特徴を述べると共に、先ほどのリリアとのやり取りで見え始めた「敵」――その黒幕のおぼろげな姿までをも含めて伝える。
「……なるほど。主の話から察するに、私の能力及びスキルでもってしてもその全体像をすぐに調べ上げるのはむりそうですね」
「そうか。俺の方でも情報が入り次第、伝えるようにはする。とりあえず、分かる範囲から手をつけてみてくれ」
「承知しました。ではそのようにいたします。それでは、まず手始めにこの世界における私の『手駒』を増やすことから手をつけましょう」
ニアはそう言い残すと、夜の闇に溶けるようにスッとその姿を消した。
「ふむ。まずは情報収集というワケか?」
ツグナとニアとの会話を聞き流していたリリアが、ポツリと訊ねる。
「まぁね。まずは調べる取っ掛かりを得ようかなって思ってね」
「だが、調べるにしても、もっと効率的な方法があるのではないか? この世界にはそういった調査や分析に長けた道具があるだろう?」
普段からテレビやPCを始めとしたネットワークに触れているリリアが、彼の言葉に重ねて問いかける。だが、彼女から投げかけられた質問に対し、ツグナは頭を横に振りながら答えた。
「確かに調べるのに便利な道具はあるよ。ただし、情報統制が敷かれている可能性があるし、道具を使いこなすにはある程度の技術が必要になるからね。それなら、すぐに動かせるニアを向かわせて調べさせた方がいいかなと思ってさ。俺が現場へ行こうにも、おそらくそこには警察の人たちが大勢いるだろうから、目をつけられるかもしれない。そうなると色々動きづらくなるだろうしね……」
「なるほど。確かに情報は鮮度が命だ。ネットの検索画面に『魔煌石』と打ち込んでも、よくてファンタジー小説の文章を拾ってくるだけだろうしな」
「あー、まぁ……ね」
リリアはツグナの説明に納得顔で頷く。そんな彼女のセリフを、ツグナは「まさか、ネット小説を読み耽って、変な知識を入れてないよな?」と若干心配を覚えつつも何とか返事をする。
「さて、と。これでまず一手か……あとは――」
次の手をどうするか、その詳細を思案しつつ、ツグナはコーヒーのお代わりをシルヴィに頼むのであった。
話を一通り聞き終えたツグナは、リリアとシルヴィが見ているその場で左腕から魔書を引き抜き、お目当ての従者を召喚する。向こうの世界で幾度となく彼の《創造召喚魔法》を目にしている二人にとって、魔書《クトゥルー》による召喚の儀式は真新しいものではない。
「さぁて、こっちの世界での初仕事だ。頼むぜ――ニア」
魔書を開いた彼が召喚したのは、これまでに何度も陰ながら主を助けてきた隠密・偵察特化の従者であるニアだ。
「ふふっ……やっと私の出番ですか。転生前の主の世界――場所がいずことなろうとも、この力は我が主とともに」
青白い燐光が晴れた後に顕現したニアは、白髪に尖った犬耳、二股に分かれたふさふさの尻尾が特徴の女性である。固有スキルに「従属同調」を持つ彼女は、自らの血を飲ませた人間以外の動物や昆虫類を従属させ、その感覚に彼女が同調できるスキルを持つ。
「あぁ、宜しく頼むよ。それで呼び出して早々だが、仕事だ」
「はい。それで、どのようなことでしょうか?」
彼の言葉に、二つ返事で承諾したニアは、早速とばかりに主たるツグナから手がかりとなる情報を得ようと訊ねる。当初はその発言に子供っぽいきらいがあったニアだったが、成長しレベルアップするにつれてそうした子供っぽい発言は徐々に消えていった。
「あぁ、それは――」
ニアの発言を受け、ツグナは改めて遭遇した魔物の特徴を述べると共に、先ほどのリリアとのやり取りで見え始めた「敵」――その黒幕のおぼろげな姿までをも含めて伝える。
「……なるほど。主の話から察するに、私の能力及びスキルでもってしてもその全体像をすぐに調べ上げるのはむりそうですね」
「そうか。俺の方でも情報が入り次第、伝えるようにはする。とりあえず、分かる範囲から手をつけてみてくれ」
「承知しました。ではそのようにいたします。それでは、まず手始めにこの世界における私の『手駒』を増やすことから手をつけましょう」
ニアはそう言い残すと、夜の闇に溶けるようにスッとその姿を消した。
「ふむ。まずは情報収集というワケか?」
ツグナとニアとの会話を聞き流していたリリアが、ポツリと訊ねる。
「まぁね。まずは調べる取っ掛かりを得ようかなって思ってね」
「だが、調べるにしても、もっと効率的な方法があるのではないか? この世界にはそういった調査や分析に長けた道具があるだろう?」
普段からテレビやPCを始めとしたネットワークに触れているリリアが、彼の言葉に重ねて問いかける。だが、彼女から投げかけられた質問に対し、ツグナは頭を横に振りながら答えた。
「確かに調べるのに便利な道具はあるよ。ただし、情報統制が敷かれている可能性があるし、道具を使いこなすにはある程度の技術が必要になるからね。それなら、すぐに動かせるニアを向かわせて調べさせた方がいいかなと思ってさ。俺が現場へ行こうにも、おそらくそこには警察の人たちが大勢いるだろうから、目をつけられるかもしれない。そうなると色々動きづらくなるだろうしね……」
「なるほど。確かに情報は鮮度が命だ。ネットの検索画面に『魔煌石』と打ち込んでも、よくてファンタジー小説の文章を拾ってくるだけだろうしな」
「あー、まぁ……ね」
リリアはツグナの説明に納得顔で頷く。そんな彼女のセリフを、ツグナは「まさか、ネット小説を読み耽って、変な知識を入れてないよな?」と若干心配を覚えつつも何とか返事をする。
「さて、と。これでまず一手か……あとは――」
次の手をどうするか、その詳細を思案しつつ、ツグナはコーヒーのお代わりをシルヴィに頼むのであった。
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