上 下
9 / 23

かわいい父と強い母と観察する私と③

しおりを挟む
 車に3人で戻りました。
 
 相変わらず、母は黙り込んだままです。静かにシートベルトを締めると、フロントガラスの方を見つめています。

 父は、母を怒らせてしまったと思い、シートベルトをガチャガチャさせて、締めるのに難儀しています。

 私が、そんな2人を後部座席でハラハラしながら見ていたら、

 突然、母が歌い出しました。


 ♪わたしは あなたの虜なのに

 あなたは わたしを疑っている

 それが どんなに悲しいか

そして、後部座席の私を振り返り

 ♪こんな素晴らしい愛の結晶も

 授かったのだから

 どうか わたしを信じてほしい

 わたしは あなたの虜なの

 わたしは~

母は私を手招きして、一緒に歌って欲しいサインを出します。仕方がないので、サビの部分らしき所を一緒に歌います。

 ♪わたしは~あなたの~

 と~り~こ~な~の~

歌い終わると、母は父の方を見つめてニッコリ微笑みます。

 これで、父という大きな山は陥落です。

 それからの父は、ニコニコ嬉しそうにハンドルも軽く、鼻歌まじりに運転しています。

 いやはや、母を「天性のツンデレちゃん」だと思ってしまった一件でした。
しおりを挟む

処理中です...