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第5章
3話 【黒弧族】
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二学期に入って数日後の、理科の授業の時間だった。担当の教師が、
「よーし、今日は天気がいいから、外へ出て植物の観察をするぞ。それぞれ班に分かれて、学校の周りの植物を調べるように」
と言って、いっせいに生徒たちを外へ出した。
ひとつの班は、男女が三人ずつの、計六人で構成されていた。
希和の班は、女子は希和とみゆき、それに留美の三人だったが、亡くなった留美の代わりに転校生の黒柳が入り、女子二人・男子四人での計六人の班だった。
当然、希和はみゆきと二人で行動した。
男子四人は、後ろを歩いていた子が、前を歩いている子のワイシャツの首の後ろに抜いた雑草を入れたりして、ふざけ合っていた。
時々、教師に叱られたりしながら、天気の良い、野外での授業を満喫していた。
希和が見るところ、転校生の黒柳は、すっかりクラスの男子となじんでいるように見えた。女子と違って、グループを作ったりしない、男子の無邪気さが良かったのかもしれない。
この頃になると、黒柳は皆と同じように、新調した詰襟を着ていた。
一瞬、陽が翳り、冷たい風が吹いた。
希和とみゆきが校庭の脇の草むらに腰掛けて、観察した草花をノートに描いていると、そこへ黒柳がやって来て、
「小川さん。あっちで、先生が呼んでるよ」
と、みゆきに声を掛けた。
「えっ? あたし? 何かなあ」
と、みゆきは言いながら、黒柳が指し示すほうへ小走りで行った。
一人になった希和に、黒柳は片方の口角を上げてニヤリとしながら、
「やっと、見つけた」
と、意味不明な言葉をつぶやいた。
その時だった。
突然、希和の畑仕事への行き来に、お供をしてくれる猫のブゥちゃんが、どこからともなく現れ、黒柳に向かって、
「シャーッ、ハァーッ」
と、全身総毛立てて、牙をむいた。
「ブゥちゃん……?」
普段は大人しい猫の尋常ではない様子に、希和はビックリして状況が掴めないでいた。すぐに、陽を隠していた雲が去り太陽が顔を出すと、希和は、
「あっ!」
と、両手を口に当てながら、小さな驚きの声を上げた。
「よーし、今日は天気がいいから、外へ出て植物の観察をするぞ。それぞれ班に分かれて、学校の周りの植物を調べるように」
と言って、いっせいに生徒たちを外へ出した。
ひとつの班は、男女が三人ずつの、計六人で構成されていた。
希和の班は、女子は希和とみゆき、それに留美の三人だったが、亡くなった留美の代わりに転校生の黒柳が入り、女子二人・男子四人での計六人の班だった。
当然、希和はみゆきと二人で行動した。
男子四人は、後ろを歩いていた子が、前を歩いている子のワイシャツの首の後ろに抜いた雑草を入れたりして、ふざけ合っていた。
時々、教師に叱られたりしながら、天気の良い、野外での授業を満喫していた。
希和が見るところ、転校生の黒柳は、すっかりクラスの男子となじんでいるように見えた。女子と違って、グループを作ったりしない、男子の無邪気さが良かったのかもしれない。
この頃になると、黒柳は皆と同じように、新調した詰襟を着ていた。
一瞬、陽が翳り、冷たい風が吹いた。
希和とみゆきが校庭の脇の草むらに腰掛けて、観察した草花をノートに描いていると、そこへ黒柳がやって来て、
「小川さん。あっちで、先生が呼んでるよ」
と、みゆきに声を掛けた。
「えっ? あたし? 何かなあ」
と、みゆきは言いながら、黒柳が指し示すほうへ小走りで行った。
一人になった希和に、黒柳は片方の口角を上げてニヤリとしながら、
「やっと、見つけた」
と、意味不明な言葉をつぶやいた。
その時だった。
突然、希和の畑仕事への行き来に、お供をしてくれる猫のブゥちゃんが、どこからともなく現れ、黒柳に向かって、
「シャーッ、ハァーッ」
と、全身総毛立てて、牙をむいた。
「ブゥちゃん……?」
普段は大人しい猫の尋常ではない様子に、希和はビックリして状況が掴めないでいた。すぐに、陽を隠していた雲が去り太陽が顔を出すと、希和は、
「あっ!」
と、両手を口に当てながら、小さな驚きの声を上げた。
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