4 / 4
4
しおりを挟む
その日。
京橋の店に詰めているはずの清太郎が、やってきた。
呼ばれた石榴が座敷に行くと、善右ヱ門と、何やら深刻な顔をして話し込んでいた。
「実はねぇ、石榴さん」
善右ヱ門が、困ったようにこちらを見る。
「店で何かあったのか?」
「いえね。うちのお得意先の若君から、顔を見せに来いとの使いが来ましてね。それが、あなたも連れてくるようにとの事で」
「何故、俺の事を知っているんだ?」
「ほら。以前、街道で会いましたでしょう。乗物の若君と」
「あ…」
あの時の、と思い出す。石榴の事を、獣みたいだと言った若者か。
「俺みたいなモンを、なんで呼ぶ」
「それは私が、自慢したからじゃないかと思うんです」
「自慢?」
「ええ。薬草採りのときも頼りになるし、獣よりも強いですよと、つい」
それで、おそらく。と善右ヱ門はため息をついた。
「また、大袈裟な事を」
「本当の事を言ったまでです」
善右ヱ門は、心外だと言わんばかりに語気を強めたものの、困りましたねぇ…と、再度ため息をつく。
「お寂しいのも、わかるんですけどねぇ」
「寂しい?若君なら、周りに人はたくさん居るだろう」
人数だけなら。と呟く善右ヱ門の声には、妙に実感があった。
あの若君は、さる大名の嫡男で跡取りなのだが、身体が弱く、病がちだった。
それ故、何かと忙しない上屋敷より、人の出入りの少ない中屋敷で生活していた。
「病がち?とてもそんなふうには、見えなかったが」
乗物の中から、こちらを見ていた姿を思い出す。たしかに蒲柳のたちではありそうだったが。
「最近はお元気になられましてね。私共であつらえた薬湯が、体質に合ったようでして」
近々、上屋敷の方に戻るという。
「良かったじゃないか」
「そうなんですよ。母君や幼い弟君らとも一緒に暮らせます。でもそうなると、もう今までのように、自由に行き来はできなくなる。その前に、という事なんでしょう」
「武家は、面倒だな」
「ええ。まったく」
善右ヱ門の声には、やはり実感がこもっていた。
「それで?どうする」
「どうするも、こうするもありませんよ。お断りします」
見世物じゃありませんから。そう聞こえた。
「店のお得意様なんだろう」
「それはまぁ」
「だったら、断るのは拙いだろう」
「そうですよ。私が参ります。いつもお相手しているのも、私ですし」
そうしましょう。と提案する清太郎の表情は真剣だ。
「こういう時のために、私がいるのですから。お任せください」
清太郎は、善右ヱ門に面会を求める者たちを、阻むのが役目だ。
「いえ。もう決めました」
「しかし」
言い合う二人の間に、石榴は、まぁまぁ。と割って入った。
「殿様なんてのはさ。自分お抱えの相撲取りや、刀や何やを見せびらかしたりしてるんだろう?それと同じだと思えばいいじゃないか」
「私は、そんなつもりじゃ」
「知ってるよ。あんたは殿様じゃねえ。商家の大旦那だ。商人なら、お得意様の機嫌を損ねるのは、良くないよな」
「いいのですか?あなたは、それで」
「ああ。あんたの行くところには、どこにだって付いてゆくぜ」
それが用心棒の仕事だ。
「仕事、だからですか?」
表情のくもる善右ヱ門に、まぁ今のところはな。と石榴は笑いかけた。
いろいろと理由をつけ、五日の猶予をもらった、今日。
並んで歩く二人の後を、清太郎と手代の正吉を含む四人の供がついてきていた。
背にはそれぞれ長い袋を背負っている。中には乾燥させた薬草が入っているという事だった。
若君のお屋敷は、赤坂にあるという。
この辺りには武家屋敷が多く、門は閉じられていて、表札などは無い。
ただ、ただ、長い塀ばかりが続いている。
内には、参勤交代の藩主と共に国元から来た、家臣たちの住む長屋もあるのだ。
「こん中に、詰め込まれて過ごすのかよ」
「門限もあるんですよ」
「窮屈だな」
呆れたように石榴が言うと、本当に。と善右ヱ門も応えた。
本日は武家屋敷に行くという事で、善右ヱ門は羽織袴の正装だった。
隣を歩く石榴は相変わらずの暗色の着流し姿だが、その着物は真新しい。
いつの間に仕立てたのか。今朝がた、上から下まで、ひと揃いを渡された。
ご丁寧に足袋まであった。
たしかに、若君様の前に出るのに、着古した着物では失礼になるのか、と思ったが。
そのわりに下に着る襦袢は縮緬で、鮮やかな萌黄色をしていた。
「この色は、あんたの趣味かい」
「綺麗でしょう。草の萌える色で、私のいちばん好きな色なんです。良く、お似合いですよ」
「そうかい」
なんだか妙な具合だ。うしろで正吉が、笑いをこらえているのがわかった。
約束の時間に合わせ、先を急ぐ。
余裕をみて出てきてはいるのだが、長々と続く塀はどこまでいっても終わりが無いようで、土地勘が無い者を戸惑わせる。誰かに尋ねようにも、まったく人通りは無い。白々白々と陽が射すばかりだ。
行く手に、こんもりと樹が茂っているのが見えた。鎮守の森のようだ。社があるのだろう。
若君の屋敷は、それを過ぎた所だった。
やれやれと息をついた石榴は、目の端に何かをとらえた。
うなじの毛が逆立つ。あの、嫌な気配がした。
樹の作る影の中に、黒い塗笠をかぶった、黒づくめの男が立っていた。
裾のすぼまった裁付袴に、袖なしの羽織という軽装だ。
「奴だ」
「え?」
善右ヱ門の盾になるように立ち止まった石榴に、後ろの四人も身構えた。
「京橋の店の前で、見た奴だ」
「あれが…」
「知り合いか?」
いいえ。と答える善右ヱ門を囲むようにして、じりじりと移動してゆく。
「奴が動いたら、俺が相手をする。あんたたちは大旦那を連れて、早く若君の屋敷に入ってくれ」
小声でそう言って、丸めて持っていた頭陀袋から三節棍を引き抜いた。
「わかりました」
固い声で、清太郎が答えた。
砂利を踏む音がして、塗笠の男が一気に動いた。抜き放った刀が冷たい光を弾き、振り下ろされる。それを石榴は、三節棍で真正面から受け止めた。
「行け!」
石榴の声に、供の四人は善右ヱ門を連れて走り出す。
すると。森の中から、刀を手にした男たちが現れて行く手を阻んだ。皆、浪人のようだ。
「くそっ!」
駈けつけようにも、塗笠の男のふるう刃を防ぐのが、やっとの状況だった。
強い相手だ。一瞬たりとも気が抜けない。
善右ヱ門に斬りかかる浪人を、正吉が背負っていた袋で殴り、素早く中身を取り出した。
乾燥した薬草ではなく、使い込まれた拵えの刀だ。
同じく、清太郎も刀を手にしていた。
キン!という金属のぶつかり合う硬質の音が、いくつも塀の間にこだまする。
この騒ぎを聞きつけて、早く誰か出てきてくれないかと思う。
正吉たち、店の者はなかなかの遣い手だった。
善右ヱ門を護りながら、次々と襲撃者を倒してゆく。
旦那の清太郎もなかなかの腕だ。その辺の用心棒などより、よほど役に立つ。
皆、元武士だったのだと、石榴は今更ながら納得した。
森のむこうに続く塀の中ほどに門が見えた。
襲撃が長引いている事に焦り出したのか、塗笠の男の動きが激しくなった。
しかし間合いは刀よりも、三節棍の方が長い。
睨み合っていると、ふいに踵を返して、善右ヱ門たちを追い、走りだした。
「待ちやがれっ!」
化鳥のよう迫る塗笠の男に追いつかれ、後ろを護っていた正吉が斬られそうになる。
石榴はとっさに三節棍を投げつけた。
それは見事に足に絡みつき、男の動きがそがれた隙に、善右ヱ門たちは門の所まで辿り着いて、助けを求める。
塀の中でも騒ぎに気付いていたらしく、すぐに門は開かれた。
あとを追う石榴を、塗笠の男は道の真ん中に立ちはだかって待っていた。
この両側が塀に囲まれた道の幅では、避けようはずもない。三節棍は投げてしまい、今の石榴は丸腰だ。
そんな事にはお構いなしに、突っ込んでいった。
袈裟懸けに振り下ろされた刀をくぐって避ける。右肩に痛みが走ったが、かまわず地面に転がった。
落ちていた三節棍を拾い、すぐさま突いてきた切っ先を受けると、そのまま刀に絡ませた。
肩から血が滴るのにもおかまいなしに、力を込める。
刹那。高い音とともに、刀が折れた。
返す拳で、驚いたような男の横っ面を張り飛ばすと、塀に当たってずるずるとへたり込む。
そのまま動かなくなった。
石榴は、獅子の如く雄叫びをあげた。
「石榴さん!」
善右ヱ門が転がるように、こちらに走ってくるのが見える。
あとを追う正吉たちの後に、何人かの侍の姿も見えた。
ああ、無事だったか。と思ったら、安堵の息が漏れた。
途端。汗が急にふきだしてきて、右肩やそこいら中に痛みがはしる。
足の力が抜け、立っておれずに、その場に座りこんだ。
「大丈夫ですか!」
動けないでいる石榴の前に、善右ヱ門は膝をつく。
「ああ。血がこんなに。どこを斬られたんです」
「大丈夫だ。たいした傷じゃあねぇよ」
それに。と、心配そうに覗きこむ善右ヱ門の顔を見て、にやりと笑う。
「腕の一本や二本。斬り落されても、あんたが縫い付けてくれるんだろう?」
だから大丈夫だ。と嘯(うそぶ)いた。
結局。若君との面会は、この騒ぎで取りやめとなった。
近場の医者で血止めをしてもらい、早々に帰途についた。
郊外の本宅まで、自分で歩いて帰ったまでは覚えているのだが、その後の記憶が、石榴には無い。
いつもの離れで目を覚ました時には、丸一日が経っていた。
その間、熱が高く、かなりうなされていたというが、まったく覚えが無い。
創(きず)が思いのほか酷かったとはいえ、情けない話だ。
あの若君も迷惑に思っているだろう。
しかし、当の若君は、至極ご満悦だったと聞かされた。
自分の屋敷の外で行われた乱闘に気付かないはずは無く、成り行きを窺(うかが)っていたらしい。
あの雄叫びも聞いたらしく、石榴の事を、「まこと、獣よりも強い男だ」と感嘆していたという。
何故だか、善右ヱ門一行を襲った刺客を、ひとりで全員倒した事になっていた。
「倒したのは、正吉たちだろう。俺じゃない」
「いいじゃないですか、それで。武勇伝になりますよ」
目を覚ました時から、ずっと傍についている善右ヱ門は、そう言って笑った。
「何故?」
「私どもは商人ですからね。刀なんて、とてもとても」
「狡いな」
「処世術ですよ。石榴さん」
この大旦那には勝てねぇな…と思った。
しかしまぁ、皆、無事で良かった。
「若君の屋敷の奴等もさ。のんびり見物してねぇで、さっさと助けに来てくれりゃあいいのによう」
「武家とは、そういうものですよ」
下手に係わって、要らぬ遺恨を買う真似はしたくない。自分の御家が大事なのだ。
「一人の小事が、御家すべてに及ぶような大事になるやも知れず。そう簡単には」
「ふうん」
窮屈な事だ。
やれやれと身体の向きをかえようとして、顔をしかめる。
右肩の創は、結構深手だった。他にも細々とした傷が、いくつかあった。
「つつっ」
「大丈夫ですか?ああ、動かさないで下さい。創が開きます」
真新しい夜着の襟からは、右肩に巻いた布が見える。
「すまんな。せっかく仕立ててもらった着物も、台無しだな」
「そんなもの。いつでも仕立てられますから」
そうかい。と呟いて、石榴は自分の右肩を撫でる。
「今度は縫わなかったんだな。創」
「ええ」
「いいのかい?せっかく長崎から取り寄せた道具が、錆びるんじゃないのか」
冗談めかして言うと、善右ヱ門は横を向いた。
「もう、嫌なんですよ。石榴さんの創を縫うのは」
だから怪我なんて、しないで下さいよ。
そう聞こえた。
馴染みの飯屋の二階の四畳半に、石榴は胡坐をかいて座っていた。
さっきまで寝ていた布団が、丸めて後ろにつくねてある。
向かいには、文化堂の大番頭の与助が、背筋をすっと伸ばして座っていた。
「まさか、あんたまで。こんな所に来るとはね」
まいったよ。と石榴は首の後ろに手をやった。
「あなたが帰ってしまわれたので、大旦那様は大変、気落ちしておられます」
「大変」に力がこもっている。
「ああ。まぁ…用が済んだのに、いつまでも居るわけには、いかねぇだろう」
そんな事ありません。と与助は姿勢を正したまま、言った。
「だってなぁ。あの刺客雇ったのは、若君んちの御殿医とやらだったんだろ?」
「そうです」
「それに。あんたが前に居た、さる藩とやらは。別邸をそのままにしとく事になったと、言ってたじゃないか」
「ええ」
「なら、もう狙われる事は無いだろうし。用心棒はお役御免だ」
違うか?と石榴は唇を尖らせた。
ですが。と言い募ろうとする与助から目を逸らして、石榴は湯呑から茶をすする。
先刻、物見高げに覗きにきた、おれんが置いていったものだ。
粗茶の名に恥じない代物だが、この近辺ではまともな方だ。
ただ、とっくに冷めていた。
あれから、ひと月あまりが過ぎていた。
右肩の創はまだ時折痛むが、問題があるほどではない。
上げ膳据え膳の生活は、身に馴染まない。早々にお役御免を願い出て、帰ってきた。
相変わらず鋭い目付きで見ている与助に、話題をそらそうと、石榴は口を開いた。
「しかし。何だって、御殿医とやらが、大旦那を殺ろうなんて思ったのかねぇ。自分の薬より、効いたからか?」
「それもありますが。その事により、若君が藩主となられた折には、御殿医の座を奪われると考えたようです」
「あ、あ、あ。そんな噂があったわ」
石榴は、うん、うん。と頷く。
「まったく迷惑な話です。手前どもは薬種問屋です。医者になどなれませんよ」
「違うのかい?」
「違います。お医者様から出された処方箋どおりに、生薬をお出しすることはできますが、診療や治療は致しません」
「でも、あそこの若君様は、元気になったんだろう」
あんなもの。と与助は鼻で笑う。
「規則正しい生活と、適度な運動。きちんと食事をする。それだけです。もちろん、滋養に良い物とかは、お出ししましたが。あそこの方々は、若君を甘やかし過ぎるのです」
おー、怖。
きっぱりと言い切る与助に、石榴は首をすくめた。
この大番頭。かなりの忠義者だ。
主大事を隠そうともしない。
隠遁する善右ヱ門のために、文化堂の仕組みを考えたのも、この男だろう。
もしも。すべての話を聞いたうえで、やはり無理だと用心棒を断っていたら。
あの本宅から生きては出られなかったんだろうな。と気付いて、今更ながら身震いする。
たぶん、あの庭で栽培されている、薬草の肥やしにでもなっていただろう。
「ねぇ。石榴さん」
「なんだ?」
急に声の調子が変わった与助に、身構える。
「大旦那様は、毎度、あなたの所在を探すのが大変だと仰ってます」
「最近は、ここを塒塒にしてるよ」
そのようですね。と与助は、煤けたような四畳半の中を見回した。
「しかし。このような場所では、込み入った話などはできませんよ」
「まぁ、そうだな」
「長屋住まいがお嫌いだというのなら。仕舞屋を一軒、通いの良い処に借りてさしあげます。何なら、身の回りの世話をする小女も雇い入れますが。如何ですか?」
石榴は片目を眇めて、与助を見返す。
「あんた。自分が何、言ってるのか、わかってるのか?」
「もちろん」
「それじゃあまるで。妾を囲うみてぇだろうが」
「妙な女に引っかかるより、余程マシです」
そう言う顔は真面目なままだったが、目は笑っていた。
階下から、「石榴さ~ん」と太平楽な声がする。
大旦那が来たようだ。
善右ヱ門と入れ替わりに、与助は帰っていった。
「与助は、何の用があったんです?」
出ていった方を見送りながら、善右ヱ門は不思議そうに訊く。
「ああ?なんか俺にさ。用心棒じゃなくて、あんたの妾にならねぇか。みたいな話を、ね」
呆れたように言う石榴に、善右ヱ門は「それもいいですねぇ」と楽しそうに笑った。
まったく。
どこまで本気なんだか。
喰えねぇ男だよ。と石榴は思った。
-了-
京橋の店に詰めているはずの清太郎が、やってきた。
呼ばれた石榴が座敷に行くと、善右ヱ門と、何やら深刻な顔をして話し込んでいた。
「実はねぇ、石榴さん」
善右ヱ門が、困ったようにこちらを見る。
「店で何かあったのか?」
「いえね。うちのお得意先の若君から、顔を見せに来いとの使いが来ましてね。それが、あなたも連れてくるようにとの事で」
「何故、俺の事を知っているんだ?」
「ほら。以前、街道で会いましたでしょう。乗物の若君と」
「あ…」
あの時の、と思い出す。石榴の事を、獣みたいだと言った若者か。
「俺みたいなモンを、なんで呼ぶ」
「それは私が、自慢したからじゃないかと思うんです」
「自慢?」
「ええ。薬草採りのときも頼りになるし、獣よりも強いですよと、つい」
それで、おそらく。と善右ヱ門はため息をついた。
「また、大袈裟な事を」
「本当の事を言ったまでです」
善右ヱ門は、心外だと言わんばかりに語気を強めたものの、困りましたねぇ…と、再度ため息をつく。
「お寂しいのも、わかるんですけどねぇ」
「寂しい?若君なら、周りに人はたくさん居るだろう」
人数だけなら。と呟く善右ヱ門の声には、妙に実感があった。
あの若君は、さる大名の嫡男で跡取りなのだが、身体が弱く、病がちだった。
それ故、何かと忙しない上屋敷より、人の出入りの少ない中屋敷で生活していた。
「病がち?とてもそんなふうには、見えなかったが」
乗物の中から、こちらを見ていた姿を思い出す。たしかに蒲柳のたちではありそうだったが。
「最近はお元気になられましてね。私共であつらえた薬湯が、体質に合ったようでして」
近々、上屋敷の方に戻るという。
「良かったじゃないか」
「そうなんですよ。母君や幼い弟君らとも一緒に暮らせます。でもそうなると、もう今までのように、自由に行き来はできなくなる。その前に、という事なんでしょう」
「武家は、面倒だな」
「ええ。まったく」
善右ヱ門の声には、やはり実感がこもっていた。
「それで?どうする」
「どうするも、こうするもありませんよ。お断りします」
見世物じゃありませんから。そう聞こえた。
「店のお得意様なんだろう」
「それはまぁ」
「だったら、断るのは拙いだろう」
「そうですよ。私が参ります。いつもお相手しているのも、私ですし」
そうしましょう。と提案する清太郎の表情は真剣だ。
「こういう時のために、私がいるのですから。お任せください」
清太郎は、善右ヱ門に面会を求める者たちを、阻むのが役目だ。
「いえ。もう決めました」
「しかし」
言い合う二人の間に、石榴は、まぁまぁ。と割って入った。
「殿様なんてのはさ。自分お抱えの相撲取りや、刀や何やを見せびらかしたりしてるんだろう?それと同じだと思えばいいじゃないか」
「私は、そんなつもりじゃ」
「知ってるよ。あんたは殿様じゃねえ。商家の大旦那だ。商人なら、お得意様の機嫌を損ねるのは、良くないよな」
「いいのですか?あなたは、それで」
「ああ。あんたの行くところには、どこにだって付いてゆくぜ」
それが用心棒の仕事だ。
「仕事、だからですか?」
表情のくもる善右ヱ門に、まぁ今のところはな。と石榴は笑いかけた。
いろいろと理由をつけ、五日の猶予をもらった、今日。
並んで歩く二人の後を、清太郎と手代の正吉を含む四人の供がついてきていた。
背にはそれぞれ長い袋を背負っている。中には乾燥させた薬草が入っているという事だった。
若君のお屋敷は、赤坂にあるという。
この辺りには武家屋敷が多く、門は閉じられていて、表札などは無い。
ただ、ただ、長い塀ばかりが続いている。
内には、参勤交代の藩主と共に国元から来た、家臣たちの住む長屋もあるのだ。
「こん中に、詰め込まれて過ごすのかよ」
「門限もあるんですよ」
「窮屈だな」
呆れたように石榴が言うと、本当に。と善右ヱ門も応えた。
本日は武家屋敷に行くという事で、善右ヱ門は羽織袴の正装だった。
隣を歩く石榴は相変わらずの暗色の着流し姿だが、その着物は真新しい。
いつの間に仕立てたのか。今朝がた、上から下まで、ひと揃いを渡された。
ご丁寧に足袋まであった。
たしかに、若君様の前に出るのに、着古した着物では失礼になるのか、と思ったが。
そのわりに下に着る襦袢は縮緬で、鮮やかな萌黄色をしていた。
「この色は、あんたの趣味かい」
「綺麗でしょう。草の萌える色で、私のいちばん好きな色なんです。良く、お似合いですよ」
「そうかい」
なんだか妙な具合だ。うしろで正吉が、笑いをこらえているのがわかった。
約束の時間に合わせ、先を急ぐ。
余裕をみて出てきてはいるのだが、長々と続く塀はどこまでいっても終わりが無いようで、土地勘が無い者を戸惑わせる。誰かに尋ねようにも、まったく人通りは無い。白々白々と陽が射すばかりだ。
行く手に、こんもりと樹が茂っているのが見えた。鎮守の森のようだ。社があるのだろう。
若君の屋敷は、それを過ぎた所だった。
やれやれと息をついた石榴は、目の端に何かをとらえた。
うなじの毛が逆立つ。あの、嫌な気配がした。
樹の作る影の中に、黒い塗笠をかぶった、黒づくめの男が立っていた。
裾のすぼまった裁付袴に、袖なしの羽織という軽装だ。
「奴だ」
「え?」
善右ヱ門の盾になるように立ち止まった石榴に、後ろの四人も身構えた。
「京橋の店の前で、見た奴だ」
「あれが…」
「知り合いか?」
いいえ。と答える善右ヱ門を囲むようにして、じりじりと移動してゆく。
「奴が動いたら、俺が相手をする。あんたたちは大旦那を連れて、早く若君の屋敷に入ってくれ」
小声でそう言って、丸めて持っていた頭陀袋から三節棍を引き抜いた。
「わかりました」
固い声で、清太郎が答えた。
砂利を踏む音がして、塗笠の男が一気に動いた。抜き放った刀が冷たい光を弾き、振り下ろされる。それを石榴は、三節棍で真正面から受け止めた。
「行け!」
石榴の声に、供の四人は善右ヱ門を連れて走り出す。
すると。森の中から、刀を手にした男たちが現れて行く手を阻んだ。皆、浪人のようだ。
「くそっ!」
駈けつけようにも、塗笠の男のふるう刃を防ぐのが、やっとの状況だった。
強い相手だ。一瞬たりとも気が抜けない。
善右ヱ門に斬りかかる浪人を、正吉が背負っていた袋で殴り、素早く中身を取り出した。
乾燥した薬草ではなく、使い込まれた拵えの刀だ。
同じく、清太郎も刀を手にしていた。
キン!という金属のぶつかり合う硬質の音が、いくつも塀の間にこだまする。
この騒ぎを聞きつけて、早く誰か出てきてくれないかと思う。
正吉たち、店の者はなかなかの遣い手だった。
善右ヱ門を護りながら、次々と襲撃者を倒してゆく。
旦那の清太郎もなかなかの腕だ。その辺の用心棒などより、よほど役に立つ。
皆、元武士だったのだと、石榴は今更ながら納得した。
森のむこうに続く塀の中ほどに門が見えた。
襲撃が長引いている事に焦り出したのか、塗笠の男の動きが激しくなった。
しかし間合いは刀よりも、三節棍の方が長い。
睨み合っていると、ふいに踵を返して、善右ヱ門たちを追い、走りだした。
「待ちやがれっ!」
化鳥のよう迫る塗笠の男に追いつかれ、後ろを護っていた正吉が斬られそうになる。
石榴はとっさに三節棍を投げつけた。
それは見事に足に絡みつき、男の動きがそがれた隙に、善右ヱ門たちは門の所まで辿り着いて、助けを求める。
塀の中でも騒ぎに気付いていたらしく、すぐに門は開かれた。
あとを追う石榴を、塗笠の男は道の真ん中に立ちはだかって待っていた。
この両側が塀に囲まれた道の幅では、避けようはずもない。三節棍は投げてしまい、今の石榴は丸腰だ。
そんな事にはお構いなしに、突っ込んでいった。
袈裟懸けに振り下ろされた刀をくぐって避ける。右肩に痛みが走ったが、かまわず地面に転がった。
落ちていた三節棍を拾い、すぐさま突いてきた切っ先を受けると、そのまま刀に絡ませた。
肩から血が滴るのにもおかまいなしに、力を込める。
刹那。高い音とともに、刀が折れた。
返す拳で、驚いたような男の横っ面を張り飛ばすと、塀に当たってずるずるとへたり込む。
そのまま動かなくなった。
石榴は、獅子の如く雄叫びをあげた。
「石榴さん!」
善右ヱ門が転がるように、こちらに走ってくるのが見える。
あとを追う正吉たちの後に、何人かの侍の姿も見えた。
ああ、無事だったか。と思ったら、安堵の息が漏れた。
途端。汗が急にふきだしてきて、右肩やそこいら中に痛みがはしる。
足の力が抜け、立っておれずに、その場に座りこんだ。
「大丈夫ですか!」
動けないでいる石榴の前に、善右ヱ門は膝をつく。
「ああ。血がこんなに。どこを斬られたんです」
「大丈夫だ。たいした傷じゃあねぇよ」
それに。と、心配そうに覗きこむ善右ヱ門の顔を見て、にやりと笑う。
「腕の一本や二本。斬り落されても、あんたが縫い付けてくれるんだろう?」
だから大丈夫だ。と嘯(うそぶ)いた。
結局。若君との面会は、この騒ぎで取りやめとなった。
近場の医者で血止めをしてもらい、早々に帰途についた。
郊外の本宅まで、自分で歩いて帰ったまでは覚えているのだが、その後の記憶が、石榴には無い。
いつもの離れで目を覚ました時には、丸一日が経っていた。
その間、熱が高く、かなりうなされていたというが、まったく覚えが無い。
創(きず)が思いのほか酷かったとはいえ、情けない話だ。
あの若君も迷惑に思っているだろう。
しかし、当の若君は、至極ご満悦だったと聞かされた。
自分の屋敷の外で行われた乱闘に気付かないはずは無く、成り行きを窺(うかが)っていたらしい。
あの雄叫びも聞いたらしく、石榴の事を、「まこと、獣よりも強い男だ」と感嘆していたという。
何故だか、善右ヱ門一行を襲った刺客を、ひとりで全員倒した事になっていた。
「倒したのは、正吉たちだろう。俺じゃない」
「いいじゃないですか、それで。武勇伝になりますよ」
目を覚ました時から、ずっと傍についている善右ヱ門は、そう言って笑った。
「何故?」
「私どもは商人ですからね。刀なんて、とてもとても」
「狡いな」
「処世術ですよ。石榴さん」
この大旦那には勝てねぇな…と思った。
しかしまぁ、皆、無事で良かった。
「若君の屋敷の奴等もさ。のんびり見物してねぇで、さっさと助けに来てくれりゃあいいのによう」
「武家とは、そういうものですよ」
下手に係わって、要らぬ遺恨を買う真似はしたくない。自分の御家が大事なのだ。
「一人の小事が、御家すべてに及ぶような大事になるやも知れず。そう簡単には」
「ふうん」
窮屈な事だ。
やれやれと身体の向きをかえようとして、顔をしかめる。
右肩の創は、結構深手だった。他にも細々とした傷が、いくつかあった。
「つつっ」
「大丈夫ですか?ああ、動かさないで下さい。創が開きます」
真新しい夜着の襟からは、右肩に巻いた布が見える。
「すまんな。せっかく仕立ててもらった着物も、台無しだな」
「そんなもの。いつでも仕立てられますから」
そうかい。と呟いて、石榴は自分の右肩を撫でる。
「今度は縫わなかったんだな。創」
「ええ」
「いいのかい?せっかく長崎から取り寄せた道具が、錆びるんじゃないのか」
冗談めかして言うと、善右ヱ門は横を向いた。
「もう、嫌なんですよ。石榴さんの創を縫うのは」
だから怪我なんて、しないで下さいよ。
そう聞こえた。
馴染みの飯屋の二階の四畳半に、石榴は胡坐をかいて座っていた。
さっきまで寝ていた布団が、丸めて後ろにつくねてある。
向かいには、文化堂の大番頭の与助が、背筋をすっと伸ばして座っていた。
「まさか、あんたまで。こんな所に来るとはね」
まいったよ。と石榴は首の後ろに手をやった。
「あなたが帰ってしまわれたので、大旦那様は大変、気落ちしておられます」
「大変」に力がこもっている。
「ああ。まぁ…用が済んだのに、いつまでも居るわけには、いかねぇだろう」
そんな事ありません。と与助は姿勢を正したまま、言った。
「だってなぁ。あの刺客雇ったのは、若君んちの御殿医とやらだったんだろ?」
「そうです」
「それに。あんたが前に居た、さる藩とやらは。別邸をそのままにしとく事になったと、言ってたじゃないか」
「ええ」
「なら、もう狙われる事は無いだろうし。用心棒はお役御免だ」
違うか?と石榴は唇を尖らせた。
ですが。と言い募ろうとする与助から目を逸らして、石榴は湯呑から茶をすする。
先刻、物見高げに覗きにきた、おれんが置いていったものだ。
粗茶の名に恥じない代物だが、この近辺ではまともな方だ。
ただ、とっくに冷めていた。
あれから、ひと月あまりが過ぎていた。
右肩の創はまだ時折痛むが、問題があるほどではない。
上げ膳据え膳の生活は、身に馴染まない。早々にお役御免を願い出て、帰ってきた。
相変わらず鋭い目付きで見ている与助に、話題をそらそうと、石榴は口を開いた。
「しかし。何だって、御殿医とやらが、大旦那を殺ろうなんて思ったのかねぇ。自分の薬より、効いたからか?」
「それもありますが。その事により、若君が藩主となられた折には、御殿医の座を奪われると考えたようです」
「あ、あ、あ。そんな噂があったわ」
石榴は、うん、うん。と頷く。
「まったく迷惑な話です。手前どもは薬種問屋です。医者になどなれませんよ」
「違うのかい?」
「違います。お医者様から出された処方箋どおりに、生薬をお出しすることはできますが、診療や治療は致しません」
「でも、あそこの若君様は、元気になったんだろう」
あんなもの。と与助は鼻で笑う。
「規則正しい生活と、適度な運動。きちんと食事をする。それだけです。もちろん、滋養に良い物とかは、お出ししましたが。あそこの方々は、若君を甘やかし過ぎるのです」
おー、怖。
きっぱりと言い切る与助に、石榴は首をすくめた。
この大番頭。かなりの忠義者だ。
主大事を隠そうともしない。
隠遁する善右ヱ門のために、文化堂の仕組みを考えたのも、この男だろう。
もしも。すべての話を聞いたうえで、やはり無理だと用心棒を断っていたら。
あの本宅から生きては出られなかったんだろうな。と気付いて、今更ながら身震いする。
たぶん、あの庭で栽培されている、薬草の肥やしにでもなっていただろう。
「ねぇ。石榴さん」
「なんだ?」
急に声の調子が変わった与助に、身構える。
「大旦那様は、毎度、あなたの所在を探すのが大変だと仰ってます」
「最近は、ここを塒塒にしてるよ」
そのようですね。と与助は、煤けたような四畳半の中を見回した。
「しかし。このような場所では、込み入った話などはできませんよ」
「まぁ、そうだな」
「長屋住まいがお嫌いだというのなら。仕舞屋を一軒、通いの良い処に借りてさしあげます。何なら、身の回りの世話をする小女も雇い入れますが。如何ですか?」
石榴は片目を眇めて、与助を見返す。
「あんた。自分が何、言ってるのか、わかってるのか?」
「もちろん」
「それじゃあまるで。妾を囲うみてぇだろうが」
「妙な女に引っかかるより、余程マシです」
そう言う顔は真面目なままだったが、目は笑っていた。
階下から、「石榴さ~ん」と太平楽な声がする。
大旦那が来たようだ。
善右ヱ門と入れ替わりに、与助は帰っていった。
「与助は、何の用があったんです?」
出ていった方を見送りながら、善右ヱ門は不思議そうに訊く。
「ああ?なんか俺にさ。用心棒じゃなくて、あんたの妾にならねぇか。みたいな話を、ね」
呆れたように言う石榴に、善右ヱ門は「それもいいですねぇ」と楽しそうに笑った。
まったく。
どこまで本気なんだか。
喰えねぇ男だよ。と石榴は思った。
-了-
0
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
与兵衛長屋つれあい帖 お江戸ふたり暮らし
かずえ
歴史・時代
旧題:ふたり暮らし
長屋シリーズ一作目。
第八回歴史・時代小説大賞で優秀短編賞を頂きました。応援してくださった皆様、ありがとうございます。
十歳のみつは、十日前に一人親の母を亡くしたばかり。幸い、母の蓄えがあり、自分の裁縫の腕の良さもあって、何とか今まで通り長屋で暮らしていけそうだ。
頼まれた繕い物を届けた帰り、くすんだ着物で座り込んでいる男の子を拾う。
一人で寂しかったみつは、拾った男の子と二人で暮らし始めた。
江戸の夕映え
大麦 ふみ
歴史・時代
江戸時代にはたくさんの随筆が書かれました。
「のどやかな気分が漲っていて、読んでいると、己れもその時代に生きているような気持ちになる」(森 銑三)
そういったものを選んで、小説としてお届けしたく思います。
同じ江戸時代を生きていても、その暮らしぶり、境遇、ライフコース、そして考え方には、たいへんな幅、違いがあったことでしょう。
しかし、夕焼けがみなにひとしく差し込んでくるような、そんな目線であの時代の人々を描ければと存じます。
二重のカーテン (スカートの下の黒い意志)
MisakiNonagase
青春
洗濯物の隙間に隠したのは、母としての祈りと、娘のプライド。
かつて、女子高生という生き物はもっと無防備で、自由だった。
44歳の主婦、愛子が朝のベランダで手にするのは、娘たちが毎日履き替える漆黒のオーバーパンツ、通称「黒パン」。それは、令和を生きる娘たちが自らの尊厳を守るために身に着ける、鉄壁の「鎧」だった。
小学校時代のママ友たちとのランチ会。そこで語られるのは、ブルセラショップに下着を売っていた奔放な50代、無防備なまま凛と歩くしかなかった40代、そして「見せないこと」に命を懸ける10代の、あまりに深い断絶。さらには、階段で石像のように固まる父、生徒の背後に立たないよう神経を削る教師……。
一枚の黒い布を通して浮き彫りになる、現代社会の歪さと、その根底にある不器用なまでの「優しさ」。
ベランダに干された黒いカーテンの向こう側に、あなたは何を見ますか?
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
別れし夫婦の御定書(おさだめがき)
佐倉 蘭
歴史・時代
★第11回歴史・時代小説大賞 奨励賞受賞★
嫡男を産めぬがゆえに、姑の策略で南町奉行所の例繰方与力・進藤 又十蔵と離縁させられた与岐(よき)。
離縁後、生家の父の猛反対を押し切って生まれ育った八丁堀の組屋敷を出ると、小伝馬町の仕舞屋に居を定めて一人暮らしを始めた。
月日は流れ、姑の思惑どおり後妻が嫡男を産み、婚家に置いてきた娘は二人とも無事与力の御家に嫁いだ。
おのれに起こったことは綺麗さっぱり水に流した与岐は、今では女だてらに離縁を望む町家の女房たちの代わりに亭主どもから去り状(三行半)をもぎ取るなどをする「公事師(くじし)」の生業(なりわい)をして生計を立てていた。
されどもある日突然、与岐の仕舞屋にとっくの昔に離縁したはずの元夫・又十蔵が転がり込んできて——
※「今宵は遣らずの雨」「大江戸ロミオ&ジュリエット」「大江戸シンデレラ」「大江戸の番人 〜吉原髪切り捕物帖〜」にうっすらと関連したお話ですが単独でお読みいただけます。
主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します
白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。
あなたは【真実の愛】を信じますか?
そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。
だって・・・そうでしょ?
ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!?
それだけではない。
何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!!
私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。
それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。
しかも!
ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!!
マジかーーーっ!!!
前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!!
思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。
世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。
サレ妻の娘なので、母の敵にざまぁします
二階堂まりい
大衆娯楽
大衆娯楽部門最高記録1位!
※この物語はフィクションです
流行のサレ妻ものを眺めていて、私ならどうする? と思ったので、短編でしたためてみました。
当方未婚なので、妻目線ではなく娘目線で失礼します。
石榴(ざくろ)の月~愛され求められ奪われて~
めぐみ
歴史・時代
お民は江戸は町外れ徳平店(とくべいだな)に夫源治と二人暮らし。
源治はお民より年下で、お民は再婚である。前の亭主との間には一人息子がいたが、川に落ちて夭折してしまった。その後、どれだけ望んでも、子どもは授からなかった。
長屋暮らしは慎ましいものだが、お民は夫に愛されて、女としても満ち足りた日々を過ごしている。
そんなある日、徳平店が近々、取り壊されるという話が持ちあがる。徳平店の土地をもっているのは大身旗本の石澤嘉門(いしざわかもん)だ。その嘉門、実はお民をふとしたことから見初め、お民を期間限定の側室として差し出すなら、長屋取り壊しの話も考え直しても良いという。
明らかにお民を手に入れんがための策略、しかし、お民は長屋に住む皆のことを考えて、殿様の取引に応じるのだった。
〝行くな!〟と懸命に止める夫に哀しく微笑み、〝約束の1年が過ぎたから、きっとお前さんの元に帰ってくるよ〟と残して―。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる