痛覚操作でみんなの痛みを軽減して敵を瞬殺できるようにしていたのに、パーティーから追放されました~痛いのが嫌だと泣かれても戻る気はありません~

大石理蔵

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第一章

転落は止まらない

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カノスらがエストウ村でキングオーガを倒していたころ、ソークたちは王都付近にあるダンジョン『クガネ第一廃坑』の入り口にいた。



 あれからソークたちは段々と痛みに慣れてきたことにより、ようやくダンジョンに行けるようになった。



「まったく…カノスのクソ野郎め、段々と弱くなるタイプの呪いをかけやがって……」。



 ソークはいまだに自分たちが弱体化したのはカノスが呪いをかけたせいだと信じていた。



「そうだね……きっとカノスが新しいタイプの呪いをかけたんだろうね」



 残念なことに、ウニョは魔王城の一件からずっとソークが呪いをかけたという陰謀論を仲間二人から聞かされ続けたことで、刷り込まれるかのように陰謀論を信じて始めてしまった。



「いつかカノスに復讐したい……」



「そうだな」



「そうだね」



 ローゲの発言に二人も同意する。



 そんなやり取りをしながらダンジョンに入っていくと、前面からゴブリンが5匹ほど表れた。



「来たか……」



 そう言うとローゲは魔法を唱えてゴブリン全員を火あぶりにした。



 ゴブリンはE級の魔術師一人で一瞬のうちに倒せる敵だといわれている。



 たとえ五匹でもD級の魔術師なら一人で一瞬のうちに倒せる敵だ。



 しかし、ゴブリンは若干焦げた程度で生きていた。



「なんでだ…俺は冒険者ランクA級の魔術師だぞ……」



 ローゲは知らなかった。



 自分たちがカノスの痛覚増幅魔法に頼りすぎていたせいで、自分たち自身の実力が衰えていたことを。



「仕方ない!俺が一体一体切り刻んでやるぜ!」



 そう言ってソークゴブリンを一体切り殺した。



 しかし、隣にいたゴブリンから復讐とばかりに殴られた。



「ぎゃああああああ!!!!痛いよおおおおお!!!」



 多少痛みに慣れたとはいえ、まだまだ一般的な冒険者ほど痛みに強くなってなかったため、ソークはゴブリンのパンチ程度で恐ろしいほどの痛みを感じてしまい、号泣した。



「『回復魔法』発動!」



 ウニョが回復魔法をいくらかけても、痛みまではやわらげられないため、ソークはいつまでも子供みたいに泣いていた。



 やがて、ソークはゴブリンたちにタコ殴りにされ始めた。



 ローゲが助けようと幾度となく火炎魔法をかけるが、ゴブリンはなかなか息絶えてくれなかった。



「どうしよう……このままじゃソークさんが痛みのあまりショック死してしまう!」



「仕方ない。本当はこんなことで使いたくなかったが、『転移石』を使うか」



 転移石はどんなところに居ようとも、一度に複数人を最寄りの町にまで転移させてくれる力を持った石のことである。



 ただし、恐ろしく貴重な品でAランク冒険者の年収と同じくらいの値段で取引されている。



 ソークたちは以前、古代遺跡を探索した際にたまたま一つ手に入れていたのだ。



「うぎゃああああ!!!」



 ボキッ!バキッ!



 やがてソークの骨の音が折れる音が聞こえ始めた。



「……どんなに高い石でも、仲間の命には代えられない!使うぞ!」



 そう言ってローゲは転移石を割った。



 その瞬間、3人の身体は王都へと転移した。






「クソッッ…なんでだよ!!!なんで俺達の冒険は上手くかなくなってしまったんだよ!!!!」



 あれから痛みの治まったソークは、酒場にて仲間の前で愚痴をこぼしていた。



 なお、カノスを追放したときにいた酒場は、泣きさけんだせいで出禁になったため、あそことは別の酒場を使っている。



「俺は……俺たちは……Aランクの冒険者なのに……!なんでゴブリンごときに!」



 ソークたちは悔しさを全力で感じながら、酒を浴びるように一晩中飲んだのであった。
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