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お疲れ様、今までありがとうね。
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地震か何かでごちゃごちゃになった中、物をどかしながらチワワを探す夢を見た。
居ない居ないと探しながらふと視線をずらした先にあの子の位牌を見つけた。
そして「あ、この前死んじゃったんだった・・・」と気づいて目が覚めた。
なんて夢見だ・・・
++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++
2014年に先代の愛犬のビーグルを亡くした。
母の誕生日にプレゼントとして買って来たけど、独身で時間に余裕がある自分が一番世話をしていて、実質我が家の犬ではなく自分の犬だった。
知人からは「良い相棒になったね」と評されるくらい息の合った相手に育った。
ビーグルが来てからツーリングや飲みに行くなどしなくなり、その子と一緒に移動するために車も買った。
「車なんて一生要らない」と公言してたバイク野郎がバイクに乗らなくなったんだ。
仲よくしていた女友達とも連絡する回数が減り、いつの間にか疎遠になるくらいビーグルと過ごしていた。
そんなビーグルとの濃密な時間を過ごした15年間が、彼女の寿命で終わりを告げた。
その時点で生きようと言う意欲も失せたのだが、自分がやらないと親父の介護でそれぞれ家庭を持った兄弟が困るので死ぬわけにはいかない。
親の世話をしながら死んだ目で虚ろな日々を過ごす。
そんな時に保護施設で5歳になるチワワと出会った。
ブリーダーの繁殖引退放棄犬で、家庭犬としての経験の無い犬だった。
玩具を与えても怖がって逃げるだけ、散歩に連れ出したら遊歩道にあるグレーチングを越えられない、出来ることはただひたすら甘えるだけ。
ただただひたすら甘えてくれる姿は、先代愛犬を失い介護に疲れ生きる気力の薄れた自分に「今死ぬわけにはいかないんだ」と活力を与えてくれたんだ。
一緒に過ごすうちに歩道の段差やグレーチングも越えられるようになり、歩道にある車止めポールなどにリードを巻き付け進めなくなるルートを避けることを覚え、家庭犬としての経験を積み日々成長していく。
癒されながらも失った先代愛犬の穴を埋めることができなかった。
あの子が抜けた部分を埋めるには大きさや形が違うんだ…
愛し愛されながらも、数年そんな不誠実な気持ちで申し訳なかった。
それでもただひたすら無償の愛を向けてくれたチワワ。
いつも大きな目でアイコンタクトを送ってくれて、呼べば尻尾を振りながら尻尾を振ってくれた。
そんな彼女が13歳を迎えた頃から急に無視されるようになった。
名前を呼んでも反応しないんだ…
風呂に入れたり爪を切ったりで嫌われたのか?
そう言えば最近ヘソ天で寝るリラックスした姿を見ていない。
いつの間にか心を許してくれなくなったのだろうか?
物を落した時の大きな音にすら反応しないと気付いて、耳が遠くなっていることに気づいた。
老化の始まりだった。
++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++
気付いたら彼女も14歳の誕生日を迎えていた。
その頃から体力衰えは加速し、病院のお世話になることが増えた。
1日のほとんどを寝て過ごし、家具の隙間に顔を突っ込んだ状態で動けなくなることもあった。
入り込めそうな場所はふたをするなどの対処をしながら日々を過ごす。
トイレシーツで完璧に済ませていた排泄も間に合わないことが増えて、フローリングに粗相したりペットベッドの中でオネショをするようになった。
寝ていてもタイミングを見計らい、起こして抱き上げペットシーツに置くと何を要求されているのか理解したようで素直に排泄をする。
これからはこの子の介護生活だなと思いつつも、ここまで衰えたなら残された時間は無いと覚悟を決める。
先代のビーグルの時はタイミングがわからず「1年くらいは介護生活かな?」と油断していたらあっさりと逝ってしまった。
食欲が落ちたけど、カニ風味カマボコを喜んで食べてくれたのでそれを買いに出た時に逝ってしまった。
好きなだけ食べさせてあげようと思っていたのに、帰宅したら息をしていなかった。
あの時の喪失感は今でも忘れられない。
こんなことなら買い物に出ないで、その時間ずっと抱っこしていればよかったと後悔した。
その時の経験から、なんとなくチワワの残り時間を読むことができた。
食欲が落ちてトッピングした部分だけを舐めとりカリカリのフードを残すようになったのも、我儘ではなくカウントダウンの合図だったんだ。
食欲が乏しくても喉が渇くと自力で起き上がり水を飲んでいた。
とうとうそれもできなくなり、喉が渇くと要求をしてくるようになった。
起きあげれない体を支え、水飲み用カップを顔の高さまで運ぶとペロぺロと自力で飲んでくれる。
寝た姿勢のままスポイトで口元に垂らすより嬉しいみたいだ。
食事の方は鶏肉を茹でてほぐした物を用意しらた嬉しそうに食べてくれたが、それも食べなくなってしまった。
手を変え品を変えいろいろやっていたが、とうとうちゅーるを舐めることも困難になった。
食欲がわかないからなのか、ちゅーるを食べるのすら疲れるのか、日に日に食べる量が減っていく。
とうとうその日が来た。
いつもなら寝息やイビキが聞こえるのに、その夜不自然なくらい音が聞こえない。
目を大きく開き痙攣している。
スポイトで口に水を垂らしても舐めとろうとしない。
落ち着くまで抱いていようと胡坐の膝に乗せて撫でて過ごすと、時々思い出したように尻尾が振られる。
痙攣が止まり落ち着いたのかと思ったのだが、胸の動きがなくなり呼吸が止まった…
今まで生きてきて、最期の瞬間を看取ることができたのはこの子が初めてだった。
お疲れ様、今までありがとうね。
居ない居ないと探しながらふと視線をずらした先にあの子の位牌を見つけた。
そして「あ、この前死んじゃったんだった・・・」と気づいて目が覚めた。
なんて夢見だ・・・
++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++
2014年に先代の愛犬のビーグルを亡くした。
母の誕生日にプレゼントとして買って来たけど、独身で時間に余裕がある自分が一番世話をしていて、実質我が家の犬ではなく自分の犬だった。
知人からは「良い相棒になったね」と評されるくらい息の合った相手に育った。
ビーグルが来てからツーリングや飲みに行くなどしなくなり、その子と一緒に移動するために車も買った。
「車なんて一生要らない」と公言してたバイク野郎がバイクに乗らなくなったんだ。
仲よくしていた女友達とも連絡する回数が減り、いつの間にか疎遠になるくらいビーグルと過ごしていた。
そんなビーグルとの濃密な時間を過ごした15年間が、彼女の寿命で終わりを告げた。
その時点で生きようと言う意欲も失せたのだが、自分がやらないと親父の介護でそれぞれ家庭を持った兄弟が困るので死ぬわけにはいかない。
親の世話をしながら死んだ目で虚ろな日々を過ごす。
そんな時に保護施設で5歳になるチワワと出会った。
ブリーダーの繁殖引退放棄犬で、家庭犬としての経験の無い犬だった。
玩具を与えても怖がって逃げるだけ、散歩に連れ出したら遊歩道にあるグレーチングを越えられない、出来ることはただひたすら甘えるだけ。
ただただひたすら甘えてくれる姿は、先代愛犬を失い介護に疲れ生きる気力の薄れた自分に「今死ぬわけにはいかないんだ」と活力を与えてくれたんだ。
一緒に過ごすうちに歩道の段差やグレーチングも越えられるようになり、歩道にある車止めポールなどにリードを巻き付け進めなくなるルートを避けることを覚え、家庭犬としての経験を積み日々成長していく。
癒されながらも失った先代愛犬の穴を埋めることができなかった。
あの子が抜けた部分を埋めるには大きさや形が違うんだ…
愛し愛されながらも、数年そんな不誠実な気持ちで申し訳なかった。
それでもただひたすら無償の愛を向けてくれたチワワ。
いつも大きな目でアイコンタクトを送ってくれて、呼べば尻尾を振りながら尻尾を振ってくれた。
そんな彼女が13歳を迎えた頃から急に無視されるようになった。
名前を呼んでも反応しないんだ…
風呂に入れたり爪を切ったりで嫌われたのか?
そう言えば最近ヘソ天で寝るリラックスした姿を見ていない。
いつの間にか心を許してくれなくなったのだろうか?
物を落した時の大きな音にすら反応しないと気付いて、耳が遠くなっていることに気づいた。
老化の始まりだった。
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気付いたら彼女も14歳の誕生日を迎えていた。
その頃から体力衰えは加速し、病院のお世話になることが増えた。
1日のほとんどを寝て過ごし、家具の隙間に顔を突っ込んだ状態で動けなくなることもあった。
入り込めそうな場所はふたをするなどの対処をしながら日々を過ごす。
トイレシーツで完璧に済ませていた排泄も間に合わないことが増えて、フローリングに粗相したりペットベッドの中でオネショをするようになった。
寝ていてもタイミングを見計らい、起こして抱き上げペットシーツに置くと何を要求されているのか理解したようで素直に排泄をする。
これからはこの子の介護生活だなと思いつつも、ここまで衰えたなら残された時間は無いと覚悟を決める。
先代のビーグルの時はタイミングがわからず「1年くらいは介護生活かな?」と油断していたらあっさりと逝ってしまった。
食欲が落ちたけど、カニ風味カマボコを喜んで食べてくれたのでそれを買いに出た時に逝ってしまった。
好きなだけ食べさせてあげようと思っていたのに、帰宅したら息をしていなかった。
あの時の喪失感は今でも忘れられない。
こんなことなら買い物に出ないで、その時間ずっと抱っこしていればよかったと後悔した。
その時の経験から、なんとなくチワワの残り時間を読むことができた。
食欲が落ちてトッピングした部分だけを舐めとりカリカリのフードを残すようになったのも、我儘ではなくカウントダウンの合図だったんだ。
食欲が乏しくても喉が渇くと自力で起き上がり水を飲んでいた。
とうとうそれもできなくなり、喉が渇くと要求をしてくるようになった。
起きあげれない体を支え、水飲み用カップを顔の高さまで運ぶとペロぺロと自力で飲んでくれる。
寝た姿勢のままスポイトで口元に垂らすより嬉しいみたいだ。
食事の方は鶏肉を茹でてほぐした物を用意しらた嬉しそうに食べてくれたが、それも食べなくなってしまった。
手を変え品を変えいろいろやっていたが、とうとうちゅーるを舐めることも困難になった。
食欲がわかないからなのか、ちゅーるを食べるのすら疲れるのか、日に日に食べる量が減っていく。
とうとうその日が来た。
いつもなら寝息やイビキが聞こえるのに、その夜不自然なくらい音が聞こえない。
目を大きく開き痙攣している。
スポイトで口に水を垂らしても舐めとろうとしない。
落ち着くまで抱いていようと胡坐の膝に乗せて撫でて過ごすと、時々思い出したように尻尾が振られる。
痙攣が止まり落ち着いたのかと思ったのだが、胸の動きがなくなり呼吸が止まった…
今まで生きてきて、最期の瞬間を看取ることができたのはこの子が初めてだった。
お疲れ様、今までありがとうね。
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