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隣に咲く花は綺麗
第一話 隣に咲く花は綺麗
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昼休み開始を告げるチャイムが鳴る。
曇り空のぱっとしない天気の中、校舎から出てプールの近くにある年季の入った木製のベンチへ。十一月にプールになど誰も近づかない。彼女と二人で昼飯を食べるにはとっておきの場所だ。とはいえ、そろそろ気温も下がって、ブレザーを羽織っているとはいえ、外で食べるのも限界だな。
高校入学して半年以上経った。学校の構造は大体わかってるけど、このベンチ以外に人が少なくて、ゆっくり昼飯食べれる良さそうな場所もないしなぁ。と考えていると、彼女がやってきた。俺は「岸野、こっち」と呼びながら手を挙げる。俺を見つけると左右の低い位置で束ねたツインテールを揺らし、駆けてきた。
「佐野くん、おまたせ。友達と喋ってて……」
「いいよ、そんな待ってないし」
岸野は俺の隣に座ると、肩にかけていたトートバッグから水玉柄の包みを取り出す。
「これ、約束してたお弁当」
「作ってきてくれてありがとうな」
「うん……」
人生初の彼女が作って来てくれた手作り弁当。
数日前、メッセージのやり取りの中で、『お弁当作って持って行ってもいい?』と言ってくれた。俺のために作ってくれるなんて嬉しすぎて、この日を楽しみにしていた。
俺と岸野の間にお弁当を広げ、つついていく。
おかずは小さいタッパーに、一つずつ小分けに入っている。からあげや一口大のハンバーグ、ボリュームのあるものばかりで食欲旺盛タイプの俺には助かる。俵型に握ったおにぎりも食べやすい大きさに握られていて、片手でも持ちやすい。味は飛びぬけてというわけではないけど、おいしい。
黙々と食べていると、
「佐野くん、もうそろそろ教室で食べない?」
「寒くなってきたもんな……」
岸野もやっぱりおんなじこと考えてたか。
「でも、教室は……その……」
教室で食べるのはクラスメイトの目があるから気が引ける。友達には付き合ってるって話はしてるけど、やっぱり照れてしまいそうで。口ごもっていると、
「じゃあ、食堂はどう?」
「食堂かぁ……、人が多いし」
岸野は箸を置く。灰色のチェックのスカートを強くつかみ、うつむく。
「私って地味だし、スタイルも良くないし、一緒にいるの恥ずかしい……? だから、こういう人気のないところの方がいいんだよね」
「は? 突然なんだよ」
「なんで教室や食堂は嫌なの?」
「それは……みんなが見てるのが嫌で……」
「クラスでも食堂でもカップルで食べてる子いるじゃん」
「いやまぁ、いるけどさ……」
「それに今日の佐野くん、いつもお弁当食べてる時の表情と違う」
「え?」
「マズいならちゃんと言ってほしい」
そう言った声は震えていた。
「いや、マズくなんて」
「そもそもお弁当持ってくる彼女なんて重かったよね……。ごめん」
食べかけのお弁当に蓋をして片していく。
「おい、待て待て。なんでそんなこと言うんだよ」
「私……本当に……ごめんなさい」
まくしたてるように言うと、去って行った。
なんかしてしまったか……? 表情がどうのって……俺、そんなに誤解招くような顔をしてたのだろうか。わからない。混乱したまま、教室に戻ると、岸野の荷物はなく、早退したことを後から知った。
翌日は登校していたが、あの一件以降、岸野が俺を避けるようになった。毎日やりとりしてたメッセージは途絶え、俺がそばに行くだけでどこかへ逃げてしまう。
「佐野~、岸野にフラれたんだって?」
お互い何も言ってないはずなのに、瞬く間にクラス中に知れ渡った。原因が弁当だったということも。
「佐野は母ちゃんの弁当が良かったんだもんなぁ」
友達からからかわれても何も返さなかった。家の弁当は美味しい。けど、そういうことじゃなかったから。
昼休みも、弁当を開くのも嫌になった。だけど、捨てることは絶対にしたくなくて、とにかく胃袋に収める。美味しいのに美味しいと思えない。それもつらかった。
曇り空のぱっとしない天気の中、校舎から出てプールの近くにある年季の入った木製のベンチへ。十一月にプールになど誰も近づかない。彼女と二人で昼飯を食べるにはとっておきの場所だ。とはいえ、そろそろ気温も下がって、ブレザーを羽織っているとはいえ、外で食べるのも限界だな。
高校入学して半年以上経った。学校の構造は大体わかってるけど、このベンチ以外に人が少なくて、ゆっくり昼飯食べれる良さそうな場所もないしなぁ。と考えていると、彼女がやってきた。俺は「岸野、こっち」と呼びながら手を挙げる。俺を見つけると左右の低い位置で束ねたツインテールを揺らし、駆けてきた。
「佐野くん、おまたせ。友達と喋ってて……」
「いいよ、そんな待ってないし」
岸野は俺の隣に座ると、肩にかけていたトートバッグから水玉柄の包みを取り出す。
「これ、約束してたお弁当」
「作ってきてくれてありがとうな」
「うん……」
人生初の彼女が作って来てくれた手作り弁当。
数日前、メッセージのやり取りの中で、『お弁当作って持って行ってもいい?』と言ってくれた。俺のために作ってくれるなんて嬉しすぎて、この日を楽しみにしていた。
俺と岸野の間にお弁当を広げ、つついていく。
おかずは小さいタッパーに、一つずつ小分けに入っている。からあげや一口大のハンバーグ、ボリュームのあるものばかりで食欲旺盛タイプの俺には助かる。俵型に握ったおにぎりも食べやすい大きさに握られていて、片手でも持ちやすい。味は飛びぬけてというわけではないけど、おいしい。
黙々と食べていると、
「佐野くん、もうそろそろ教室で食べない?」
「寒くなってきたもんな……」
岸野もやっぱりおんなじこと考えてたか。
「でも、教室は……その……」
教室で食べるのはクラスメイトの目があるから気が引ける。友達には付き合ってるって話はしてるけど、やっぱり照れてしまいそうで。口ごもっていると、
「じゃあ、食堂はどう?」
「食堂かぁ……、人が多いし」
岸野は箸を置く。灰色のチェックのスカートを強くつかみ、うつむく。
「私って地味だし、スタイルも良くないし、一緒にいるの恥ずかしい……? だから、こういう人気のないところの方がいいんだよね」
「は? 突然なんだよ」
「なんで教室や食堂は嫌なの?」
「それは……みんなが見てるのが嫌で……」
「クラスでも食堂でもカップルで食べてる子いるじゃん」
「いやまぁ、いるけどさ……」
「それに今日の佐野くん、いつもお弁当食べてる時の表情と違う」
「え?」
「マズいならちゃんと言ってほしい」
そう言った声は震えていた。
「いや、マズくなんて」
「そもそもお弁当持ってくる彼女なんて重かったよね……。ごめん」
食べかけのお弁当に蓋をして片していく。
「おい、待て待て。なんでそんなこと言うんだよ」
「私……本当に……ごめんなさい」
まくしたてるように言うと、去って行った。
なんかしてしまったか……? 表情がどうのって……俺、そんなに誤解招くような顔をしてたのだろうか。わからない。混乱したまま、教室に戻ると、岸野の荷物はなく、早退したことを後から知った。
翌日は登校していたが、あの一件以降、岸野が俺を避けるようになった。毎日やりとりしてたメッセージは途絶え、俺がそばに行くだけでどこかへ逃げてしまう。
「佐野~、岸野にフラれたんだって?」
お互い何も言ってないはずなのに、瞬く間にクラス中に知れ渡った。原因が弁当だったということも。
「佐野は母ちゃんの弁当が良かったんだもんなぁ」
友達からからかわれても何も返さなかった。家の弁当は美味しい。けど、そういうことじゃなかったから。
昼休みも、弁当を開くのも嫌になった。だけど、捨てることは絶対にしたくなくて、とにかく胃袋に収める。美味しいのに美味しいと思えない。それもつらかった。
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