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クリスマスの約束

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「用事できたから遅れる。」

そのlineが届いたのは、午前16時半。
隆司の住むマンションの前に、私が到着した時だ。

それを読んだ私は、ふぅとため息を吐いた。
真っ白なため息は、冬の冷たい空気に紛れて消えた。


今日はクリスマスイブ。
午後から一緒に出掛ける約束。
準備が出来たら待ち合わせ時間と場所を、隆司から連絡してくれることになっていた。

イブの午後をどうするのか内緒にしている隆司に、久々に期待していた。
11時過ぎにはメイクも着替えも終えてずっと隆司の連絡を待っていた。

16時、しびれをきらして連絡しても返事がない。
しかたがないので隆司の住むワンルームマンションまで来たその時、やっと届いた返信。
それは、遅れることを告げるそれだった。



インターフォンを鳴らしたが返事はない。

『用事が出来た』とか言って本当は居眠りでもしているんだろう。
そう思いながら合鍵で彼の部屋に入る。
しかし、散らかったワンルーム。
そこに彼の姿は無い。

本当に急な仕事でも入ったのかもしれない。
そう思いながら、彼のベッドに腰掛ける。


狭い部屋の中央、無造作に置かれたノートパソコン。
その下敷きになるように、不動産屋のパンフレットがある。
それを引き抜くと、私は再びため息をついた。


隆司とは大学の同級生で付き合い始めた。
お互い社会人になった1年目、去年のクリスマスに隆司がいった言葉。

「来年のクリスマスは、一緒に生活する部屋で迎えよう。」

その時は嬉しかった。結婚するなら隆司って決めいていた。
それからしばらくして、私は隆司の変化に気づいた。

隆司はかなりものぐさな性格。
今日できることは明日もしない という主義。
表面的に見ればかなりだらしない。

しかし、大切なことは誰よりも完璧にこなす。
そんなギャップが隆司の魅力だ。

でも、あれから一年。
隆司は私と一緒に住むことについて、後回しにし続けた。

つまり、去年のクリスマスに隆司が言った約束は、今の隆司にとって 大切なこと ではない ということになる。


そんなことを考えながらため息をついたら、玄関ドアがガチャと音をたてた。

「美樹、来てたのか。遅くなってごめんね。」

隆司は部屋に入ると、私が手に持っている不動産屋のパンフレットに目線を向けた。
しかし、すぐに視線を外し、何も気づかなかったかのように言った。

「さぁ、出かけようか。」
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