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崖っぷち

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 「なるほどね。確かに若い女の子ってのは無理ね。じゃぁ、高橋さんは、私のように隆司みたいなのでもいいって思ってる変わり者って線は残るね。」

 今日の妻は、一味も二味も切れ味が鋭い。

 「それに、5つも歳上か。なら、年齢では隆司をストライクゾーンと見れるわけか。それに、その歳なら、お金も無い顔も悪い中年でも、八方美人で傍目には人当たりの良い人畜無害そうな男を好むってありそうね。」

 妻の言いように、流石に腹がたった、
 「お前さぁ、それは俺にも高橋さんにも失礼じゃね?」

 嫌気がさしたような口調で言い放った瞬間に後悔する。目の前で妻は赤鬼化してしまった。

 「じゃあこれは何よ。」
 妻が怒鳴って叩きつけてきたのは、クレジットカードの明細だ。

 「ピザリアン、インドカレーチャイ、カフェデリー。確かにあんたの小遣いで行ける店。あんたがこんな女性受けする店に行くなんて知らなかった。でも、安さが売りの店なのに、どう見たって一人で食べた値段じゃないわよね。これは二人前かしら?」

 言葉を失った俺に、妻がとどめを刺す。

 「スマホ見せなさい。見せなきゃすぐ、これ。見せるなら、もう少し考えてやる。」

 そう言った妻は、半分書き終えてある離婚届を俺に突きつけた。
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