人が神を越えるとき

やっさん@ゆっくり小説系Vtuber

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出会い ー 2

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 惣菜店の外で、女性に質問した。
「何してるんですか?」

「これを食べてます。」

 とりあえず日本語は通じて良かったと思う。常識は通じないようだが。
「なんでチキンを食べてるんですか?」

「お腹がすいてたんです。これ、チキンと言うんですか。美味しいですね、チキン。」

 そう言って、満面の笑顔でチキンにかぶりつく様子が、空腹だったことを証明している。ただ、聞きたいのはそんなことではない。

「キミは誰ですか? なんで勝手に僕に支払わせたんですか? どういうつもりなんですか?」

 僕は思わず、疑問と不満を込めて立て続けに口にした。女性は、食べかけのチキンを口から放し、僕の顔をマジマジと見つめてくる。
 童顔な日本人でもあるようで、どことなくエキゾチックな雰囲気もある。

「わたしは…。」
「しょぼい男がイイ女連れてやがる。」

 女性が何か言おうとしたその時、野太い声が聴こえた。振り替えると、4人組の男達がいる。男達が現れた瞬間、目の前の惣菜店のおばさんは慌ててシャッターを閉じた。この近所では有名なゴロツキだ。

 僕は、女性に対して意識を向けすぎて、周囲への警戒を怠っていたことを後悔する。自分一人なら逃がれるくらい簡単だが、この女性を連れては難しい。

 ゴロツキのリーダーと思われる男が女性に近づき、まだ食べていない方のチキンを奪い取った。

「わたしのチキン!」

 驚く様子の女性を無視し、男はチキンに大きく一口頬張る。クチャクチャと噛みながら女性を舐め回すように見てから、ニヤリと笑った。

「チキン…。」

 男はゴクリとチキンを飲み込むと、残りを道端に投げ捨て僕に詰め寄って来る。
「女はもらっていくぜ。お前の女ってことはねーだろ。」

「だ、だめだ、この子は僕の彼女だ。」

 絞り出すようにそう答える。この女性が誰なのか知らないが、彼らに渡すのはまずい。
 男は僕の胸ぐらを掴み、至近距離で睨みつける。

 こうなっては仕方がない。覚悟を決めて、ポケットに手を入れ、中にある物を握った。その時…。

「チキーン!」

 女性が大きな声を上げた。すると、男は不機嫌そうな表情で女性を睨みつける。
「おい、チキンチキンって、ずいぶんな言葉を俺に言ってくれるじゃねえか。口の悪い女は俺がしつけてやろう。」

 男は僕から手を放し女性に一歩詰め寄る。すると女性は身体を低く身構えた。その表情は、先ほどまでとは別人のように鋭い目付きに変わる。

 ズン

 男が踏み込もうとしたその瞬間、女性の右肘が男の腹部にめり込み、鈍い音を立てた。そして、男が膝から崩れる。
 連れの男3人は、咄嗟の出来事に呆然としている中、女性は捨てられたチキンを拾い上げる。

「私のチキン…。」

 泥にまみれたそれを悲しそうに見つめる女性からは、既に鋭い表情は消えていた。
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