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SS6

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今回は別に補足するようなことはないよな。

「いえ、ひとつ買い忘れたものがあったのよね。それだけがどうにも心残りだわ」

そうか。じゃあ、今日はこのへんで……。

「ちょっと待って! どうして聞いてくれないの? これはとても大事な話なのよ」

お前が言う大事な話が大事だった試しがないんだが……。

「安心して。決して後悔はさせないから」

地雷臭しかしないが、そこまで言うなら聞こう。
聞きたくないけど、聞こう。
あーいやだなー。嫌な予感しかしないなー。

「スケベ椅子を買っておくべきだったわ」

じゃあ聞いてくれ。俺のトラウマは3つあるんだ。

「ちょっと待って。以前2つだと言ってなかったかしら。どうして今になって1つ増えているの?」

リアルタイムで1つ増えてしまったからな。これは仕方なかった。
どうしようもなかったな。うん。

「どうして? 全ての男性の憧れでしょう? スケベ椅子であれやこれやしたりされたりするのが、男のロマンなのではないの?」

いや、もちろんそういう憧れのある男性もいるんだろうけども。
少なくとも普通は憧れはしないと思うぞ。

「おかしいわ。もしかして、私はわたしの知らない世界線に来てしまっていたのかしら」

そんなSF用語出してこなくてもだいじょうぶだぞ。
おかしいのは世界線じゃなくて、お前の中の常識だけだから。

「けど、白里くん。ひとつだけ聞かせてちょうだい」

なんでせう?

「して欲しい? して欲しくない? どっちなのかしら」

その質問はズルいだろう。

「良いから答えて」

別に取り立てて特別して欲しいわけじゃないけども、まぁそれでもあえて答えるとするなら、あえて答えるならの話だけど……。
……どっちかと言うと。
……。
……………………して欲しいです。

「ふふん、聞けて良かったわ。いつか買って試しましょうね」

…………ああ、そうだな。
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