幸福は君の為に

周乃 太葉

文字の大きさ
21 / 26

19/意外な誘い

しおりを挟む
イーサンとジュリとオリビアはイーサンの案内でお店に着いた。

イーサンはこの前の対談でパトリスが教えてくれた店だった。食事と飲み物が美味しくて、イーサンはすっかり気に入っていた。

「ここはね、こないだ仕事終わりに食べに来て美味しかったんだよ。特にこの料理がオススメだよ」

イーサンはメニューを開いて指さした。
ジュリはメニューを色々見て、ぽつりと感想をもらした。

「へぇ~美味しそうなもの食べてるのね。やっぱ売れっ子作家になると接待があるのね」

「へっ?違う違う。ここは、こないだの対談相手の子に連れてきてもらったんだよ。意気投合しちゃってさ、仕事中に即飲みに誘ったんだよ」

ジュリの片眉がピクリとして声のトーンが低くなった。

「それって女の子?」

「違う違う、男!今度、ほら、舞台やるじゃん?それの主演の子だよ。オトビス・アングラード、知らない?」

「…うそ?本当に?オトビス・アングラードと?」

「疑われて悲しいなぁ」

「うそうそ。信じてるわ」

イーサンはわざとションボリとして沈んだ声を出してジュリを抱き寄せた。その様子にジュリはポンポンとイーサンの肩を叩いて宥め、この話は終わりにすることにした。



「ふふ…ふふっ…あははっ」

イーサンとジュリのやり取りにオリビアは思わず笑ってしまった。ジュリはオリビアがあまりにも笑うので照れ隠しにイーサンに無茶振りをした。

「もう、オリビアちゃんに笑われてしまったわ。ここはイーサン、お詫びに美味しいメニューをチョイスしてオーダーして」

「かしこまりました。お嬢様方」

イーサンは店員を呼び、メニューからあれこれとオーダーをし始めた。

その間、オリビアはジュリに聞いてみた。

「お二人はいつもこんな感じなんですか?」

「そうね。大体こんな感じね」

ジュリはさらりと答えた。
オリビアは二人の雰囲気におぉ~と尊敬の眼差しを向けた。

「仲良くて羨ましいです。お二人はどんなきっかけだったんですか?」

「ん~…なんて言えばいいかな?私と彼は子供の頃一度会ってて、大人になってからばったり再会したんだけど、全然覚えてなくてね。面影なかったし。その後、実は家族ぐるみの付き合いがあるってわかってそこから一気にこうぶわわわ~って意識しちゃって。なんやかんやで今はこうなったわ」

「素敵です…。私、恋とかよくわからなくて。もう大人なのに、情けないです」

「気にしなくていいんじゃない?恋愛って人それぞれでしょ?オリビアちゃんはまだなだけよ」

「そう…ですかね?」

「そうそう。恋愛なんて何がどうなるかわからないものよ。わからないから楽しかったり、苦しかったり、色んな感情が溢れ出てくるのよ」

「そうなんですね。ありがとうございます。少し気持ちが楽になりました」

「ふふふ…オリビアちゃん…かわいい~」

ジュリがオリビアをギューッと抱きしめたところにオーダーし終えたイーサンが割り込んできた。

「なになに~?恋バナ?俺も聞きたい」

「え?え?」

ジュリがオリビアをギュッとしたままイーサンに文句を言った。

「もぅ。それはこれから聞くの。ねぇねぇオリビアちゃん、悩むってことは最近恋してるのかしら?」

「え?え?あ、いや、あの」

いきなりの質問にオリビアが動揺していると、イーサンが笑いながらオリビアの

「ははっ、オリビアちゃん動揺しすぎ。俺たちに話したところでどうとなるわけじゃないから気軽に相談してよ」

オリビアは思い切って悩んでいることを打ち明けた。

「友人が、男の人をしょっちゅう紹介してくれるんです…。それが断れなくて。お付き合いする気がないのに会うのが毎回申し訳なくて…。相手の方にも言うんですけど、それでもいいって言う方ばかりで、どうしたらいいのか…」


「モテるんだね。色んな人と会ってなんか、こう、ビビッとくる相手はいなかった?」

オリビアは記憶を辿って今まで会った人たちを思い出してみた。

「そうですね…いないかな?なんか、かなりの頻度で相手の方はビビッと来るみたいで、すぐホテルに誘われるんですけど、門限があるんで、毎回お断りしてて…。別の友人には身体から始まることもあると怒られるんですけど、なかなか…」

オリビアの話の途中からジュリの顔がどんどん険しくなっていった。
ジュリの表情の変化を横目で見ていたイーサンはジュリの口に野菜スティックを突っ込んで喋らせないようにして、

「うんうん、それで?」

隣でジュリが野菜スティックをバリッボリッと音を立てて食べている…。
オリビアは首を傾げて友達たちのアドバイスを思い出して口にした。

「また別の友人は、それは違うんじゃないかって。やっぱ心からだって。若いうちに色々経験したら?とか…色々な友人に聞いたけど、逆によくわからなくなっちゃって…」

イーサンはジュリの野菜スティックを追加して!オリビアに話の続きを促した。

「うんうん」

「あとですね。あの…あの、ですね。男の人が好きって面と向かって言うのはどのくらい本気のときでしょう…?あの、すごく積極的にアプローチされているのはわかるんですけど、その、誰にでも優しい人なので、真意がわからなくて…」

オリビアの心底困っている様子にイーサンがポンと手を叩いた。

「わかった。オリビアちゃん、今度、僕たちと舞台観に行こう」

「え?」

「ゴクン…。ちょっと、イーサン、なんでそうなるのよ?」

「ん~オリビアちゃん、頭でアレコレ考えちゃって心が追いついてない感じだから舞台観て心を刺激したほうがいいかなって」

イーサンの思いがけない提案にオリビアは目をパチクリとさせた。

「ぶ、舞台ですか?」

イーサンはウンウンと頷きながらオリビアを改めて誘った。

「そ、招待されているから一緒に行こう?ジュリも一緒だから安心して」

ジュリはイーサンの意図を理解したようで、呆れつつもオリビアのためになりそうだとイーサン側につくことにした。

「はぁ~随分荒治療ね。まぁ言い出したら聞かないから、オリビアちゃんが良ければ一緒に行かない?ね?」

「は、はい。ご一緒するのは嬉しいですが、お邪魔じゃありません?」

オリビアは仲の良い2人の邪魔になるのではと恐縮したが、ジュリはふふっとオリビアの心配を除いた。

「大丈夫。この人仕事であちこち挨拶しないとだから私1人で暇になるのよ。相手してくれたら私も楽しいわ。ね?」

「むむむ…わかりました。ジュリさんがそこまで言うのであれば…」

「はい、決まり!じゃあ、明後日でいい?」

「はい、大丈夫です」

オリビアはジュリの押しに負け、舞台に一緒に行くことに決めた。実のところ、オリビアもこの舞台に興味を持っていたから、誘われて嬉しい気持ちでいっぱいだった。

話がまとまったのを察したイーサンが、オリビアとジュリのグラスを確認した。

「よし、じゃあ、おかわりは?もっと飲むでしょ?」

「はい、じゃあ、同じのをお願いします」

「オッケー」

イーサンは空のグラスを持っておかわりを頼みに席を立った。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ちょっと大人な物語はこちらです

神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な短編物語集です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

王太子妃専属侍女の結婚事情

蒼あかり
恋愛
伯爵家の令嬢シンシアは、ラドフォード王国 王太子妃の専属侍女だ。 未だ婚約者のいない彼女のために、王太子と王太子妃の命で見合いをすることに。 相手は王太子の側近セドリック。 ところが、幼い見た目とは裏腹に令嬢らしからぬはっきりとした物言いのキツイ性格のシンシアは、それが元でお見合いをこじらせてしまうことに。 そんな二人の行く末は......。 ☆恋愛色は薄めです。 ☆完結、予約投稿済み。 新年一作目は頑張ってハッピーエンドにしてみました。 ふたりの喧嘩のような言い合いを楽しんでいただければと思います。 そこまで激しくはないですが、そういうのが苦手な方はご遠慮ください。 よろしくお願いいたします。

捨てられ侯爵令嬢ですが、逃亡先で息子と幸せに過ごしていますので、邪魔しないでください。

蒼月柚希
恋愛
公爵様の呪いは解かれました。 これで、貴方も私も自由です。 ……だから、もういいですよね? 私も、自由にして……。 5年後。 私は、ある事情から生まれ育った祖国を離れ、 親切な冒険者パーティーと、その地を治める辺境伯様のご家族に守られながら、 今日も幸せに子育てをしています。 だから貴方も勝手に、お幸せになってくださいね。 私のことは忘れて……。 これは、お互いの思いがこじれ、離れ離れになってしまった一組の夫婦の物語。 はたして、夫婦は無事に、離婚を回避することができるのか?

【完結】仰る通り、貴方の子ではありません

ユユ
恋愛
辛い悪阻と難産を経て産まれたのは 私に似た待望の男児だった。 なのに認められず、 不貞の濡れ衣を着せられ、 追い出されてしまった。 実家からも勘当され 息子と2人で生きていくことにした。 * 作り話です * 暇つぶしにどうぞ * 4万文字未満 * 完結保証付き * 少し大人表現あり

【完結・おまけ追加】期間限定の妻は夫にとろっとろに蕩けさせられて大変困惑しております

紬あおい
恋愛
病弱な妹リリスの代わりに嫁いだミルゼは、夫のラディアスと期間限定の夫婦となる。 二年後にはリリスと交代しなければならない。 そんなミルゼを閨で蕩かすラディアス。 普段も優しい良き夫に困惑を隠せないミルゼだった…

白い結婚を捨てた王妃は、もう二度と振り向かない ――愛さぬと言った王子が全てを失うまで』

鍛高譚
恋愛
「私は王妃を愛さない。彼女とは白い結婚を誓う」 華やかな王宮の大聖堂で交わされたのは、愛の誓いではなく、冷たい拒絶の言葉だった。 王子アルフォンスの婚姻相手として選ばれたレイチェル・ウィンザー。しかし彼女は、王妃としての立場を与えられながらも、夫からも宮廷からも冷遇され、孤独な日々を強いられる。王の寵愛はすべて聖女ミレイユに注がれ、王宮の権力は彼女の手に落ちていった。侮蔑と屈辱に耐える中、レイチェルは誇りを失わず、密かに反撃の機会をうかがう。 そんな折、隣国の公爵アレクサンダーが彼女の前に現れる。「君の目はまだ死んでいないな」――その言葉に、彼女の中で何かが目覚める。彼はレイチェルに自由と新たな未来を提示し、密かに王宮からの脱出を計画する。 レイチェルが去ったことで、王宮は急速に崩壊していく。聖女ミレイユの策略が暴かれ、アルフォンスは自らの過ちに気づくも、時すでに遅し。彼が頼るべき王妃は、もはや遠く、隣国で新たな人生を歩んでいた。 「お願いだ……戻ってきてくれ……」 王国を失い、誇りを失い、全てを失った王子の懇願に、レイチェルはただ冷たく微笑む。 「もう遅いわ」 愛のない結婚を捨て、誇り高き未来へと進む王妃のざまぁ劇。 裏切りと策略が渦巻く宮廷で、彼女は己の運命を切り開く。 これは、偽りの婚姻から真の誓いへと至る、誇り高き王妃の物語。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

白椿の咲く日~遠い日の約束

紫さゆり
恋愛
結婚を控えた真由子は、久しぶりに姉の稚子(わかこ)と会う。真由子の母、雪江は妻を亡くした水上実之(みなかみさねゆき)の後添いとして水上家に嫁いだ。実之には俊之、稚子、靖之の三人の子がいた。 稚子が話す庭の白椿のことを聞くうちに、真由子は雪江と白椿に何か関係があることに気がつき…… 大人の恋物語です。

処理中です...