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8.父のお見舞い
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コンコン
「はい?」
ドアをノックすると中から返事があった。
「やぁ、父さん、調子はどう?」
「やぁ、イーサン。よく来てくれたね」
ベッドの上でイーサンによく似た父のカリムが足を吊った状態で横になっていた。
カリムは困ったような顔をして
「ははっ、父さんドジッちゃったよ」
「連絡来て、驚…きはしなかったけど、心配はしたよ」
「母さんにもいい年してって呆れられたよ」
「だろうね。はい、暇だろ?これ差し入れ」
イーサンは差し入れに本を渡した。
「あぁ、ありがとう。今回はどんな話かな」
本をペラペラ見てからカリムは病室の入口で控えていたジュリに気付き、イーサンに尋ねた。
「おや?そちらのお嬢さんは?」
「あぁ、俺のいる街の病院に派遣されてる先生だよ。先生はここ出身で里帰りするって言うから一緒に来たんだよ」
「おや?それはそれはどうも。こんな姿で申し訳ない。私はイーサンの父のカリム・シェルバです」
「はじめまして、私はジュリ・リヴリーです。イーサンさんにはいつもお世話になっています」
「こちらこそ、息子がいつもお世話になっているようで。これからもどうぞよろしく」
「いえ、こちらこそよろしくお願いします」
カリムとジュリがお互いにペコペコしていると、背後から
「なんだい?かしこまっちゃって。イーサン結婚するんだっけ?」
と声がした。イーサンは予想外の声の主に驚き、勢いよく振り返った。
そこにいたのは母のリディだった。
「なっ!何言ってるんだよ、母さん」
リディはイーサンを押し退けてジュリに話しかけた。
「お嬢さん、はじめまして。母のリディ・シェルバです。わざわざ有難うね」
「は、はい。あ、あの、私、イーサンとは、その、友達でして…」
「ははっ、そんなことだろうと思ったよ。ヘタレめ…。いやいや、可愛らしいお嬢さんだね。うんうん、リヴリー先生によく似てるね」
「えっと…それはどの…?」
「あぁ、リヴリー先生はいっぱいいるからね。ニコラ先生だよ」
「えっ?祖母とお知り合いなんですか?」
「知り合いというか…。イーサンの主治医だからね。付き合いは長いよ」
「そうなんですか!?」
「昔からイーサンは身体が弱くてね。先生には良くしてもらっているよ」
「か、母さん!」
イーサンが慌てて口を挟んだ。するとリディはイーサンのほうに振り向き、眉間にシワを寄せた。
「イーサン、お前、定期検診サボっているんだって?先生が嘆いていたぞ」
「サボってなんか…ちょっと都合がつかなくて…予定より遅れているだけだよ…」
「それをサボっているんだよ。今はすっかり丈夫になったけど、何かあったら母さんは心配で心配で………お前の家に住み着くよ?」
「うわっ!それは勘弁して!」
「なら、ちゃんと受けなさい」
「わ、わかったよ」
イーサンはリディに言い負かされタジタジになった。
リディはそんなこと気にもとめず、イーサンに
「まったく。それにしてもアンタ気付かなかったのかい?」
と呆れたように言った。
イーサンは顎に手を当て、
「そういえばジュリの家名聞いたの初めてだな」
イーサンの答えにリディは呆れながらやれやれと軽く息を吐いた。
「まったく、その抜けているとこ父さんソックリだね」
「ひどいなぁ~」
とばっちりを受けたカリムが呟いた。
リディはそんなカリムの呟きを聞かなかったことにしてイーサンに近況を尋ねた。
「んで、最近はどうなんだい?」
「問題ないよ」
「仕事は?」
「順調だよ」
「ならいい」
すると、カリムは唐突に
「そういえば、おばちゃんから連絡もらったけど、イーサンお前、婚約してたんだって?」
「え?あ、あぁ」
「そのお嬢さんはジュリさん?あれ?でも、“してた”ってことは別れたの?あれ?でも今一緒にいるし…?」
カリムが独り言なのか、質問なのかわからないような声でブツブツ言っていると、
ゴチン!
病室に鈍い音が響いた。
「お前さんはデリカシーがないね」
リディが心底呆れた声で
「その件は先週話しただろう?バカ息子がネタ欲しさにやったって。まったく。イーサン、お前もネタの為なら無茶苦茶するのはやめなさい。今回は偽だって周囲の人間もわかっていたから良かったもののこんなこと続けてたら信用問題にもなるんだからな」
「うっ…わかったよ」
リディにキツく叱られたイーサンは反省した。
キーンコーンカーンコーン
その時面会終了を知らせるチャイムが鳴った。
イーサンとジュリとリディはカリムに挨拶し、病室を後にした。
「はい?」
ドアをノックすると中から返事があった。
「やぁ、父さん、調子はどう?」
「やぁ、イーサン。よく来てくれたね」
ベッドの上でイーサンによく似た父のカリムが足を吊った状態で横になっていた。
カリムは困ったような顔をして
「ははっ、父さんドジッちゃったよ」
「連絡来て、驚…きはしなかったけど、心配はしたよ」
「母さんにもいい年してって呆れられたよ」
「だろうね。はい、暇だろ?これ差し入れ」
イーサンは差し入れに本を渡した。
「あぁ、ありがとう。今回はどんな話かな」
本をペラペラ見てからカリムは病室の入口で控えていたジュリに気付き、イーサンに尋ねた。
「おや?そちらのお嬢さんは?」
「あぁ、俺のいる街の病院に派遣されてる先生だよ。先生はここ出身で里帰りするって言うから一緒に来たんだよ」
「おや?それはそれはどうも。こんな姿で申し訳ない。私はイーサンの父のカリム・シェルバです」
「はじめまして、私はジュリ・リヴリーです。イーサンさんにはいつもお世話になっています」
「こちらこそ、息子がいつもお世話になっているようで。これからもどうぞよろしく」
「いえ、こちらこそよろしくお願いします」
カリムとジュリがお互いにペコペコしていると、背後から
「なんだい?かしこまっちゃって。イーサン結婚するんだっけ?」
と声がした。イーサンは予想外の声の主に驚き、勢いよく振り返った。
そこにいたのは母のリディだった。
「なっ!何言ってるんだよ、母さん」
リディはイーサンを押し退けてジュリに話しかけた。
「お嬢さん、はじめまして。母のリディ・シェルバです。わざわざ有難うね」
「は、はい。あ、あの、私、イーサンとは、その、友達でして…」
「ははっ、そんなことだろうと思ったよ。ヘタレめ…。いやいや、可愛らしいお嬢さんだね。うんうん、リヴリー先生によく似てるね」
「えっと…それはどの…?」
「あぁ、リヴリー先生はいっぱいいるからね。ニコラ先生だよ」
「えっ?祖母とお知り合いなんですか?」
「知り合いというか…。イーサンの主治医だからね。付き合いは長いよ」
「そうなんですか!?」
「昔からイーサンは身体が弱くてね。先生には良くしてもらっているよ」
「か、母さん!」
イーサンが慌てて口を挟んだ。するとリディはイーサンのほうに振り向き、眉間にシワを寄せた。
「イーサン、お前、定期検診サボっているんだって?先生が嘆いていたぞ」
「サボってなんか…ちょっと都合がつかなくて…予定より遅れているだけだよ…」
「それをサボっているんだよ。今はすっかり丈夫になったけど、何かあったら母さんは心配で心配で………お前の家に住み着くよ?」
「うわっ!それは勘弁して!」
「なら、ちゃんと受けなさい」
「わ、わかったよ」
イーサンはリディに言い負かされタジタジになった。
リディはそんなこと気にもとめず、イーサンに
「まったく。それにしてもアンタ気付かなかったのかい?」
と呆れたように言った。
イーサンは顎に手を当て、
「そういえばジュリの家名聞いたの初めてだな」
イーサンの答えにリディは呆れながらやれやれと軽く息を吐いた。
「まったく、その抜けているとこ父さんソックリだね」
「ひどいなぁ~」
とばっちりを受けたカリムが呟いた。
リディはそんなカリムの呟きを聞かなかったことにしてイーサンに近況を尋ねた。
「んで、最近はどうなんだい?」
「問題ないよ」
「仕事は?」
「順調だよ」
「ならいい」
すると、カリムは唐突に
「そういえば、おばちゃんから連絡もらったけど、イーサンお前、婚約してたんだって?」
「え?あ、あぁ」
「そのお嬢さんはジュリさん?あれ?でも、“してた”ってことは別れたの?あれ?でも今一緒にいるし…?」
カリムが独り言なのか、質問なのかわからないような声でブツブツ言っていると、
ゴチン!
病室に鈍い音が響いた。
「お前さんはデリカシーがないね」
リディが心底呆れた声で
「その件は先週話しただろう?バカ息子がネタ欲しさにやったって。まったく。イーサン、お前もネタの為なら無茶苦茶するのはやめなさい。今回は偽だって周囲の人間もわかっていたから良かったもののこんなこと続けてたら信用問題にもなるんだからな」
「うっ…わかったよ」
リディにキツく叱られたイーサンは反省した。
キーンコーンカーンコーン
その時面会終了を知らせるチャイムが鳴った。
イーサンとジュリとリディはカリムに挨拶し、病室を後にした。
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