想い想われ恋い焦がれ

周乃 太葉

文字の大きさ
31 / 37

29.瘴気、そして浄化

しおりを挟む
翌朝

イーサンはジュリとの約束のため準備をしていた。

今日、ジュリに話す

俺は決めたんだ。

イーサンは自分に言い聞かせるように何度も何度も繰り返していた。

広場に着くと、ちょうど待ち合わせの時間になった。

「イーサン、おはよう。待たせちゃった?」

「いや、俺もちょうど今来たところ。それより今日、無理言ってゴメンな」

「全然大丈夫!予定なかったし。それより、今日はどこへ?」

「医療都市に行こうかと思ってる」

「医療都市?また検査?」

「いや、違う…ジュリに見てもらいたい場所があるんだ」

「わかった。着いたら理由話してくれるのかな?」

「あぁ」

「よし、行こう」

イーサンとジュリは駅に向かった。


「…イーサン」

地を這うような低い声が聞こえた。
声が聞こえた方を振り返ると、ヘレナがいた。

「ヘレナ?」

イーサンは眉間にシワを寄せ、不快感を示した。
だが、ヘレナの様子がいつもと違う、異様な雰囲気なことが気になった。


「イーサン…どこいくの?」

「ヘレナには関係ない」

「なんで…」

ヘレナが顔を上げた。

!!!!

イーサンだけでなく、ジュリをはじめ、通りすがりの人など周囲にいた人すべてが驚愕した。

それは、とても酷い形相だった。
濃い隈、眼が落ち窪み、眼は濁り、頬は痩け、肌はガサガサ、唇はひび割れている。
髪もバサバサで、手足も筋張っている。

昨日会ったときは普通だったのに…

その姿は1日で豹変する範囲を超えている。どう見ても異様な姿だ。

ヘレナが纏う空気も全然違う。
思い返せば、昨日口走っていたことも日頃のヘレナからは考えられなかった。

ヘレナはワガママだけど、それは、幼い子供のワガママの延長のようなもので、人を騙したり、貶める類のものではなかったはずだ。

イーサンはゴクリと唾を飲み、話しかけた。

「ヘレナ…どうしたんだ?」

ヘレナはイーサンの方を見ず、イーサンの背後に視線を向けた。

「イーサン…その女…」

ジュリは目の前の女性が何故自分を呼ぶのか心当たりがなかったが、ふと1つの可能性に思い当たった。

「あなたは…もしかして、昨日の?」

イーサンはあまりの状況にあっけにとられていたが、ジュリの声にハッと正気を取り戻し、ジュリを背に隠した。

「そう…その女なのね。その女のせいで…」

ヘレナが俯き、ジュリから視線を外した。

「私の…世界が…」

「壊されるなら…滅ぼ…す…」

ヘレナは虚ろな目でブツブツと言いながら
一気に黒く淀んだ魔力を放出した。

魔力が辺り一帯を包んだ。

黒い靄が一気に広がった。

周囲にいた人がバタバタと倒れ、
植え込みの植物も一気に枯れ、
建築物は朽ちはて、
道が渇き、

一瞬でまるで廃墟のような様相になった。


その黒い靄は生命を吸い上げるようだった。
その様相はまるで言い伝えられている“瘴気”のようだった。

瘴気がものすごい勢いで街を廃墟にしていく。

その中で、イーサンの胸にあるコアが光り、イーサンとジュリを包んでいた。

「こ、これは…?」

ジュリは周りを見回してポソッと言葉が漏れた。
イーサンは胸を抑えながら、

「ジュリ、長くは持たない。このコアを君に渡す。逃げるんだ。これがあれば君は守れる」

「イーサンはどうなるの?」

「俺は、大丈夫だ」

「嘘!このコアがないと生きられないんでしょ?」

イーサンは首を振った。

「そんなことはない」

ジュリはイーサンに縋り付いた。

「このコアはあなたの魔力を生命力に変換してるんでしょ?」

「…思い出したのか?」

「いいえ。私もこれでも本来の専門は魔導魔術科よ。わかるわよ」

思い出したわけではないのか…

イーサンはジュリの手を離させ、

「だが、今はコレしか手段がない。だから…」

「そんなことないわ。私に任せて」

ジュリはイーサンに最後まで言わせなかった。
ジュリはポケットから水晶玉を取り出した。

「それは、ライラの…」

「正確にはパウラね。イーサンはそこで見ててね」

「ジュリ!」

ジュリは微笑み、イーサンから離れ、光の膜から出た。

そして、ジュリは水晶玉に自分の魔力を込め、ヘレナに近付きいた。

ヘレナと向き合い、一言

「今、助けるね」

と告げ、水晶玉を空に掲げ、浄化の呪文を唱えた。

『我が神よ、我が魔力をもってこの者とこの地に光を』

水晶玉の光が眩く光った。そして溢れる光が水晶玉に集約されていった。

集約された一筋の光が空に広がり、地面に降り注いだ。その間ジュリは己の限界を超えて魔力を水晶玉に注ぎ続けた。

瘴気が光に押され、集約し、ヘレナのペンダントに付いている黒い石に吸収されていた。

瘴気が全て吸収されたと同時にヘレナとジュリは倒れた。

「ジュリ!!」

イーサンはジュリに駆け寄った。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

さようならの定型文~身勝手なあなたへ

宵森みなと
恋愛
「好きな女がいる。君とは“白い結婚”を——」 ――それは、夢にまで見た結婚式の初夜。 額に誓いのキスを受けた“その夜”、彼はそう言った。 涙すら出なかった。 なぜなら私は、その直前に“前世の記憶”を思い出したから。 ……よりによって、元・男の人生を。 夫には白い結婚宣言、恋も砕け、初夜で絶望と救済で、目覚めたのは皮肉にも、“現実”と“前世”の自分だった。 「さようなら」 だって、もう誰かに振り回されるなんて嫌。 慰謝料もらって悠々自適なシングルライフ。 別居、自立して、左団扇の人生送ってみせますわ。 だけど元・夫も、従兄も、世間も――私を放ってはくれないみたい? 「……何それ、私の人生、まだ波乱あるの?」 はい、あります。盛りだくさんで。 元・男、今・女。 “白い結婚からの離縁”から始まる、人生劇場ここに開幕。 -----『白い結婚の行方』シリーズ ----- 『白い結婚の行方』の物語が始まる、前のお話です。

【完結】番としか子供が産まれない世界で

さくらもち
恋愛
番との間にしか子供が産まれない世界に産まれたニーナ。 何故か親から要らない子扱いされる不遇な子供時代に番と言う概念すら知らないまま育った。 そんなニーナが番に出会うまで 4話完結 出会えたところで話は終わってます。

ずっと一緒にいようね

仏白目
恋愛
あるいつもと同じ朝 おれは朝食のパンをかじりながらスマホでニュースの記事に目をとおしてた 「ねえ 生まれ変わっても私と結婚する?」 「ああ もちろんだよ」 「ふふっ 正直に言っていいんだよ?」 「えっ、まぁなぁ 同じ事繰り返すのもなんだし・・   次は別のひとがいいかも  お前もそうだろ? なぁ?」 言いながらスマホの画面から視線を妻に向けると   「・・・・・」 失意の顔をした 妻と目が合った 「え・・・?」 「・・・・  」 *作者ご都合主義の世界観のフィクションです。

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

彼女の離縁とその波紋

豆狸
恋愛
夫にとって魅力的なのは、今も昔も恋人のあの女性なのでしょう。こうして私が悩んでいる間もふたりは楽しく笑い合っているのかと思うと、胸にぽっかりと穴が開いたような気持ちになりました。 ※子どもに関するセンシティブな内容があります。

盲目公爵の過保護な溺愛

クマ三郎@書籍&コミカライズ3作配信中
恋愛
伯爵家の長女として生まれたミレーヌ。平凡な容姿に生まれた彼女は、美しい妹エミリアと常に比べられ、実の両親から冷遇されて育った。 パーティーでは家族の輪に入れて貰えず、いてもいなくてもいい存在。 そんな現実から逃れようと逃げ出した先で、ミレーヌは美しい容姿をした目の不自由な男性と出会うが──

魔力ゼロと捨てられた私を、王子がなぜか離してくれません ――無自覚聖女の王宮生活――

ムラサメ
恋愛
伯爵家で使用人同然に扱われてきた少女、エリナ。 魔力も才能もないとされ、義妹アリシアの影で静かに生きていた。 ある日、王国第一王子カイルの視察で運命が動き出す。 誰も気づかなかった“違和感”に、彼だけが目を留めて――。

ソウシソウアイ?

野草こたつ/ロクヨミノ
恋愛
政略結婚をすることになったオデット。 その相手は初恋の人であり、同時にオデットの姉アンネリースに想いを寄せる騎士団の上司、ランヴァルド・アーノルト伯爵。 拒否に拒否を重ねたが強制的に結婚が決まり、 諦めにも似た気持ちで嫁いだオデットだが……。

処理中です...