10 / 63
第9話 閑散とした森
しおりを挟む
魔王と勇者が転生してから12年が経った。
「今日も私の勝ちね、オズ」
「アリアが早すぎるんだよ」
「へへへー。仕方ないから、魔法強化を許可するよ?」
「いや、それは負けた気になるから止めとくよ」
「真面目だなぁ」
「べ、別にいいだろ」
オズとアリアは、毎日仲良く遊ぶようになった。
いつも、適当な10km先の場所まで競走をしている。ほとんどがアリアが勝つ。
魔法を使えば、オズも勝てるだろう。しかし、何もしていないアリアに対して魔法を使うのは、オズのプライドが許さないのである。
後は、互いの本性なんかはどうでも良くなっていたようだ。
「明日こそ、他の子も誘おうよ!」
「どうせ無駄だよ。誰も来ようとしないよ」
「えぇー、なんでー」
「アリアの身体能力が異常なんだよ」
村にはオズとアリア以外にも、たくさんの子供が住んでいる。
しかし、誰も2人と遊ぼうとしないのである。
それは、アリアが『神』と呼ばれるほど、ものすごく身体能力が高く、何でもこなすので、オズ以外は誰もついて行くことが出来ないのだ。
「それを言ったら、オズの魔法も一緒じゃん」
「まあ、そうだな」
「私はただみんなと仲良くしたいだけなのにー!」
「神と悪魔って呼ばれている奴と、仲良くしようとする奴がいるか?」
「それは……いないね」
それに加えて、オズは魔法が上手すぎるため、子供たちから『悪魔』と呼ばれている。
恐れられた2人が必然的に遊ぶことになったのである。
「今日は、森の中を探索してみよー!」
「いいねー。モンスターとかいないかなー」
「お母さんが言うには、この森は危険だから入るなって言ってたよ」
「なんで来たんだよ!」
「楽しそうだからー」
「はぁ、しょうがないな。ここまで来たんだし、行ってみるか」
「行こ行こー! モンスターが出ても、私たちなら余裕で倒せちゃうよ! ね、オズ?」
「どうだろうな。まだ、1回も戦ったことはないけど、魔法で負ける気はしないな」
「私もこの剣があれば、無敵だよ!」
まあ、この2人に怖いものはお酒以外にはないのだから、当然のことである。
こうして、オズとアリアはモンスターの事など一切気にぜず、ゆっくりと探索を楽しんだ。
「ここら辺はなにもないね。つまらないよぉ」
「そうだな。魔力も弱いし、本当に危険な森なのか?」
「お母さんは嘘はつかないよ!」
「ま、まあ、そうだな」
アリアは母のことが好きすぎるので、ちょっとでも悪く言うと、圧をかけてくる。
それに、動物が1匹もいないので、おかしいことは人とも既に理解している。
普通なら、引き返しすだろう。しかし、恐怖心の無い2人は、どんどん先へと進んでいった。
「まだまだいくぞー!」
「おー」
「元気がないぞ? もう1回! いくぞー!」
「おー! ってか、結構歩いたぞ。お昼ご飯もまだだし、そろそろ下りないか?」
「もうちょっとだけ! お願い!」
アリアは綺麗な瞳でオズを見つめる。
オズは、その目を見ると思考が停止して、イエスマンになってしまうのだ。
「し、仕方ないな。あとちょっとだけだぞ」
「やったー! オズ、ありがと!」
「可愛すぎだろ」
「ん? 何か言った?」
「い、いや、何でもない。ほら、早く行くぞ」
「うん!」
そうして、アリアの赴くまま歩いていった。
しばらく歩いたが、何も無い。
アリアも退屈してきて、帰るために村の方向へと歩くことにした。
「結局何もなかったね」
「何かありそうではあったがな。外れの時もあるだろ」
「そうだね。それにしても、お腹が空いたね」
「昼ご飯食べてないもんな。今は、3時くらいだろう」
「早くご飯食べたーい。あれ、なんかあるよ」
「洞穴か? すげぇな!」
2人とも少し、悲しそうに歩いていると、高さ20mほどの洞穴を見つけた。
楽しそうなものをやっと見つけた2人は、とても嬉しそうに中へと入っていく。
「何かあるかもしれないよ! 早く行こ!」
「よっしゃー! やっと面白くなってきた!」
この洞穴こそが、森をこんなに静かにさせていた原因であることは、2人はまだ、気付いていない。
「今日も私の勝ちね、オズ」
「アリアが早すぎるんだよ」
「へへへー。仕方ないから、魔法強化を許可するよ?」
「いや、それは負けた気になるから止めとくよ」
「真面目だなぁ」
「べ、別にいいだろ」
オズとアリアは、毎日仲良く遊ぶようになった。
いつも、適当な10km先の場所まで競走をしている。ほとんどがアリアが勝つ。
魔法を使えば、オズも勝てるだろう。しかし、何もしていないアリアに対して魔法を使うのは、オズのプライドが許さないのである。
後は、互いの本性なんかはどうでも良くなっていたようだ。
「明日こそ、他の子も誘おうよ!」
「どうせ無駄だよ。誰も来ようとしないよ」
「えぇー、なんでー」
「アリアの身体能力が異常なんだよ」
村にはオズとアリア以外にも、たくさんの子供が住んでいる。
しかし、誰も2人と遊ぼうとしないのである。
それは、アリアが『神』と呼ばれるほど、ものすごく身体能力が高く、何でもこなすので、オズ以外は誰もついて行くことが出来ないのだ。
「それを言ったら、オズの魔法も一緒じゃん」
「まあ、そうだな」
「私はただみんなと仲良くしたいだけなのにー!」
「神と悪魔って呼ばれている奴と、仲良くしようとする奴がいるか?」
「それは……いないね」
それに加えて、オズは魔法が上手すぎるため、子供たちから『悪魔』と呼ばれている。
恐れられた2人が必然的に遊ぶことになったのである。
「今日は、森の中を探索してみよー!」
「いいねー。モンスターとかいないかなー」
「お母さんが言うには、この森は危険だから入るなって言ってたよ」
「なんで来たんだよ!」
「楽しそうだからー」
「はぁ、しょうがないな。ここまで来たんだし、行ってみるか」
「行こ行こー! モンスターが出ても、私たちなら余裕で倒せちゃうよ! ね、オズ?」
「どうだろうな。まだ、1回も戦ったことはないけど、魔法で負ける気はしないな」
「私もこの剣があれば、無敵だよ!」
まあ、この2人に怖いものはお酒以外にはないのだから、当然のことである。
こうして、オズとアリアはモンスターの事など一切気にぜず、ゆっくりと探索を楽しんだ。
「ここら辺はなにもないね。つまらないよぉ」
「そうだな。魔力も弱いし、本当に危険な森なのか?」
「お母さんは嘘はつかないよ!」
「ま、まあ、そうだな」
アリアは母のことが好きすぎるので、ちょっとでも悪く言うと、圧をかけてくる。
それに、動物が1匹もいないので、おかしいことは人とも既に理解している。
普通なら、引き返しすだろう。しかし、恐怖心の無い2人は、どんどん先へと進んでいった。
「まだまだいくぞー!」
「おー」
「元気がないぞ? もう1回! いくぞー!」
「おー! ってか、結構歩いたぞ。お昼ご飯もまだだし、そろそろ下りないか?」
「もうちょっとだけ! お願い!」
アリアは綺麗な瞳でオズを見つめる。
オズは、その目を見ると思考が停止して、イエスマンになってしまうのだ。
「し、仕方ないな。あとちょっとだけだぞ」
「やったー! オズ、ありがと!」
「可愛すぎだろ」
「ん? 何か言った?」
「い、いや、何でもない。ほら、早く行くぞ」
「うん!」
そうして、アリアの赴くまま歩いていった。
しばらく歩いたが、何も無い。
アリアも退屈してきて、帰るために村の方向へと歩くことにした。
「結局何もなかったね」
「何かありそうではあったがな。外れの時もあるだろ」
「そうだね。それにしても、お腹が空いたね」
「昼ご飯食べてないもんな。今は、3時くらいだろう」
「早くご飯食べたーい。あれ、なんかあるよ」
「洞穴か? すげぇな!」
2人とも少し、悲しそうに歩いていると、高さ20mほどの洞穴を見つけた。
楽しそうなものをやっと見つけた2人は、とても嬉しそうに中へと入っていく。
「何かあるかもしれないよ! 早く行こ!」
「よっしゃー! やっと面白くなってきた!」
この洞穴こそが、森をこんなに静かにさせていた原因であることは、2人はまだ、気付いていない。
10
あなたにおすすめの小説
詠唱? それ、気合を入れるためのおまじないですよね? ~勘違い貴族の規格外魔法譚~
Gaku
ファンタジー
「次の人生は、自由に走り回れる丈夫な体が欲しい」
病室で短い生涯を終えた僕、ガクの切実な願いは、神様のちょっとした(?)サービスで、とんでもなく盛大な形で叶えられた。
気がつけば、そこは剣と魔法が息づく異世界。貴族の三男として、念願の健康な体と、ついでに規格外の魔力を手に入れていた!
これでようやく、平和で自堕落なスローライフが送れる――はずだった。
だが、僕には一つ、致命的な欠点があった。それは、この世界の魔法に関する常識が、綺麗さっぱりゼロだったこと。
皆が必死に唱える「詠唱」を、僕は「気合を入れるためのおまじない」だと勘違い。僕の魔法理論は、いつだって「体内のエネルギーを、ぐわーっと集めて、どーん!」。
その結果、
うっかり放った火の玉で、屋敷の壁に風穴を開けてしまう。
慌てて土魔法で修復すれば、なぜか元の壁より遥かに豪華絢爛な『匠の壁』が爆誕し、屋敷の新たな観光名所に。
「友達が欲しいな」と軽い気持ちで召喚魔法を使えば、天変地異の末に伝説の魔獣フェンリル(ただし、手のひらサイズの超絶可愛い子犬)を呼び出してしまう始末。
僕はただ、健康な体でのんびり暮らしたいだけなのに!
行く先々で無自覚に「やりすぎ」てしまい、気づけば周囲からは「無詠唱の暴君」「歩く災害」など、実に不名誉なあだ名で呼ばれるようになっていた……。
そんな僕が、ついに魔法学園へ入学!
当然のように入学試験では的を“消滅”させて試験官を絶句させ、「関わってはいけないヤバい奴」として輝かしい孤立生活をスタート!
しかし、そんな規格外な僕に興味を持つ、二人の変わり者が現れた。
魔法の真理を探求する理論オタクの「レオ」と、強者との戦いを求める猪突猛進な武闘派女子の「アンナ」。
この二人との出会いが、モノクロだった僕の世界を、一気に鮮やかな色に変えていく――!
勘違いと無自覚チートで、知らず知らずのうちに世界を震撼させる!
腹筋崩壊のドタバタコメディを軸に、個性的な仲間たちとの友情、そして、世界の謎に迫る大冒険が、今、始まる!
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
鑑定持ちの荷物番。英雄たちの「弱点」をこっそり塞いでいたら、彼女たちが俺から離れなくなった
仙道
ファンタジー
異世界の冒険者パーティで荷物番を務める俺は、名前もないようなMOBとして生きている。だが、俺には他者には扱えない「鑑定」スキルがあった。俺は自分の平穏な雇用を守るため、雇い主である女性冒険者たちの装備の致命的な欠陥や、本人すら気づかない体調の異変を「鑑定」で見抜き、誰にもバレずに密かに対処し続けていた。英雄になるつもりも、感謝されるつもりもない。あくまで業務の一環だ。しかし、致命的な危機を未然に回避され続けた彼女たちは、俺の完璧な管理なしでは生きていけないほどに依存し始めていた。剣聖、魔術師、聖女、ギルド職員。気付けば俺は、最強の美女たちに囲まれて逃げ場を失っていた。
【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。
異世界帰りの少年は現実世界で冒険者になる
家高菜
ファンタジー
ある日突然、異世界に勇者として召喚された平凡な中学生の小鳥遊優人。
召喚者は優人を含めた5人の勇者に魔王討伐を依頼してきて、優人たちは魔王討伐を引き受ける。
多くの人々の助けを借り4年の月日を経て魔王討伐を成し遂げた優人たちは、なんとか元の世界に帰還を果たした。
しかし優人が帰還した世界には元々は無かったはずのダンジョンと、ダンジョンを探索するのを生業とする冒険者という職業が存在していた。
何故かダンジョンを探索する冒険者を育成する『冒険者育成学園』に入学することになった優人は、新たな仲間と共に冒険に身を投じるのであった。
40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私
とうとうキレてしまいました
なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが
飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした……
スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます
神は激怒した
まる
ファンタジー
おのれえええぇえぇぇぇ……人間どもめぇ。
めっちゃ面倒な事ばっかりして余計な仕事を増やしてくる人間に神様がキレました。
ふわっとした設定ですのでご了承下さいm(_ _)m
世界の設定やら背景はふわふわですので、ん?と思う部分が出てくるかもしれませんがいい感じに個人で補完していただけると幸いです。
元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる