泥酔魔王の過失転生~酔った勢いで転生魔法を使ったなんて絶対にバレたくない!~

近度 有無

文字の大きさ
37 / 63

第36話 テイム・モンスター大会(3)

しおりを挟む
「オズ、頑張れー!」
「速攻でやっちまえ!」
「大丈夫だ。行ける」

 オズの順番が回ってきた。
 クラスメイトからの大きな応援が聞こえる。
 オズは、勝ち進めるか不安で緊張している。

「1年のSクラスに2年が負けるなよ!」
「余裕だっての!」
「相手、2年のSクラスなのか。絶対強いな」

 相手の見方からのガヤが聞こえてきた。
 相手は、オズの1つ上の学年で、しかもSクラスという初戦にして最悪の当たりだ。
 相手は、余裕そうに笑っている。
 それもそうだ。この人は、去年のこの大会でラッシュに負け、準優勝だったのだから。

「行け、俺のシュガー!」
「グワーッ!」

 相手のテイム・モンスターは、モンスターの中でも上位の強さを持つ、レッドドラゴンであった。

「レッドドラゴンかよ。ハム、頼んだぞ」
「お任せください! グワーッ!!!」
「……え?」
「どうしてそんなに静かになるんだ?」

 オズがハムを召喚した瞬間に、会場が一気に静まり返った。
 そうして、一気に騒がしくなった。

「あれって、バハムートだろ⁉」
「なんでテイム・モンスターになってるんだ⁉」
「みんな、ビビってるねぇ」
「なんでなの?」
「あ、アリアもオズと同じだった」

 オズのクラスメイトは、何度かハムのことを見ていたので、もう驚かない。
 しかし、伝説上のモンスターであったバハムートを初めて目の前にした他の人たちは、驚きを隠すことができない。
 オズとアリアは、何度も言うが元々の感覚が違うので、みんながなぜ驚いているのか分からない。
 オズに至っては、バハムートが今では弱いものとされているのだと思っているほどだ。


「こ、こんなの見た目だけだろ! シュガー、魔法でやっちまえ!」
「ぐ、グワー!」
「ハム、頑張ってくれ」
「期待に添えるよう頑張ります! グワー!!!」

 ドガァァン!!!

「終わったな」
「頼む、勝ってくれ」
「ハム、勝てるよね?」

 お互いの魔法がぶつかり合い、強風と共に砂埃が舞う。
 オズとアリア以外は、ハムの勝ちを確信している。
 2人は、ハムの勝ちを祈るように願っている。
 そうして、砂埃が収まり、景色がはっきりした。

「か、勝てました!」
「おぉぉ!!! よくやった!」
「ハムが勝った! やったー!」
「やっぱりこの2人は、変わってるよぉ」

 オズは、勝てたことに安心して、普段は見せないような笑顔で叫んでいる。
 ハムも、勝てたことに安心した様で緊張がほぐれたようだ。

「こ、こんなの無理に決まっているだろ……」
「ぐ、グワ……」

 相手は、登場の時とは打って変わって、弱々しくなっている。
 レッドドラゴンは、何とか生き残ったようだが、致命的な一撃を受けている。
 恐らく、このままだと死んでしまうだろう。

「シュガー! 大丈夫か⁉」

 レッドドラゴンの重症さに気が付いた相手は、急いで回復魔法を使う。
 しかし、傷が深すぎる為、ほとんど効果がない。

「クソッ、死なせてたまるか!」
「本気同士なので、やはりこうなりますよね」
「お前、何しに来たんだ⁉」
「僕の責任なので、治しに来ました」
「無理に決まっているだろ⁉ ふざけているのか!」

 相手は、オズが自分のテイム・モンスターをこの様な姿にしたのにも関わらず、澄ました顔で治しに来たと言ったことに憤りを隠せないようだ。
 オズは、そのようなことは気にすることなく、回復魔法を使う。

完全回復マキシマムキュアー
「それって……」
「グワーッ!」

 オズが回復魔法を使うと、シュガーはすぐに元気になった。
 相手は、オズが完全回復マキシマムキュアーを使ったことに驚いている。
 オズは、どうして驚いているのか分からなかったので、気にしなかった。
 実は、完全回復マキシマムキュアーは最強の回復魔法であり、使用すると傷や状態異常が全回復するという万能の魔法なのだ。
 しかし、オズは魔王時代から完全回復マキシマムキュアーしか使っていない為、これが普通となっている。

「あ、ありがとう」
「礼なんていいですよ。それじゃあ、また戦いましょう」
「あ、うん」

 オズは、次の試合に向けてハムを休ませる為、素早く去っていった。
 それからの試合は、1回戦と同じように、一撃で倒しては完全回復マキシマムキュアーを使うという流れで決勝戦まで勝ち進んだ。
 オズは、それまでの試合で一度も油断はしていなかった。

「この試合の勝者が、決勝の対戦相手か。片方はラッシュだな」
「ラッシュ様ー!!!」
「うるさい奴らだ」
「圧が凄いな。それで、もう一方はっと。って、マジかよ……」

 ラッシュが準決勝まで上がることは、試合の前から予想はしていた。
 しかし、もう1人が意外過ぎてオズは驚いている。
 それは、オズだけでなく、アリアたちSクラスのみんなも同じだ。

「私とオズ君との戦いが目前に迫っているよ! ここで貴方を倒しますよ!(キラーン)」
「なんだこいつ」
「ダリア、勝ち進んでたのかよ……」

 なんと、準決勝の舞台に1回戦敗退を予想されていたダリアが立っているのだ。
 みんなは予想外過ぎて逆に引いている。

「まあ、余裕だろ」
「行きますよ!(キラーン)」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

詠唱? それ、気合を入れるためのおまじないですよね? ~勘違い貴族の規格外魔法譚~

Gaku
ファンタジー
「次の人生は、自由に走り回れる丈夫な体が欲しい」 病室で短い生涯を終えた僕、ガクの切実な願いは、神様のちょっとした(?)サービスで、とんでもなく盛大な形で叶えられた。 気がつけば、そこは剣と魔法が息づく異世界。貴族の三男として、念願の健康な体と、ついでに規格外の魔力を手に入れていた! これでようやく、平和で自堕落なスローライフが送れる――はずだった。 だが、僕には一つ、致命的な欠点があった。それは、この世界の魔法に関する常識が、綺麗さっぱりゼロだったこと。 皆が必死に唱える「詠唱」を、僕は「気合を入れるためのおまじない」だと勘違い。僕の魔法理論は、いつだって「体内のエネルギーを、ぐわーっと集めて、どーん!」。 その結果、 うっかり放った火の玉で、屋敷の壁に風穴を開けてしまう。 慌てて土魔法で修復すれば、なぜか元の壁より遥かに豪華絢爛な『匠の壁』が爆誕し、屋敷の新たな観光名所に。 「友達が欲しいな」と軽い気持ちで召喚魔法を使えば、天変地異の末に伝説の魔獣フェンリル(ただし、手のひらサイズの超絶可愛い子犬)を呼び出してしまう始末。 僕はただ、健康な体でのんびり暮らしたいだけなのに! 行く先々で無自覚に「やりすぎ」てしまい、気づけば周囲からは「無詠唱の暴君」「歩く災害」など、実に不名誉なあだ名で呼ばれるようになっていた……。 そんな僕が、ついに魔法学園へ入学! 当然のように入学試験では的を“消滅”させて試験官を絶句させ、「関わってはいけないヤバい奴」として輝かしい孤立生活をスタート! しかし、そんな規格外な僕に興味を持つ、二人の変わり者が現れた。 魔法の真理を探求する理論オタクの「レオ」と、強者との戦いを求める猪突猛進な武闘派女子の「アンナ」。 この二人との出会いが、モノクロだった僕の世界を、一気に鮮やかな色に変えていく――! 勘違いと無自覚チートで、知らず知らずのうちに世界を震撼させる! 腹筋崩壊のドタバタコメディを軸に、個性的な仲間たちとの友情、そして、世界の謎に迫る大冒険が、今、始まる!

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

鑑定持ちの荷物番。英雄たちの「弱点」をこっそり塞いでいたら、彼女たちが俺から離れなくなった

仙道
ファンタジー
異世界の冒険者パーティで荷物番を務める俺は、名前もないようなMOBとして生きている。だが、俺には他者には扱えない「鑑定」スキルがあった。俺は自分の平穏な雇用を守るため、雇い主である女性冒険者たちの装備の致命的な欠陥や、本人すら気づかない体調の異変を「鑑定」で見抜き、誰にもバレずに密かに対処し続けていた。英雄になるつもりも、感謝されるつもりもない。あくまで業務の一環だ。しかし、致命的な危機を未然に回避され続けた彼女たちは、俺の完璧な管理なしでは生きていけないほどに依存し始めていた。剣聖、魔術師、聖女、ギルド職員。気付けば俺は、最強の美女たちに囲まれて逃げ場を失っていた。

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

異世界帰りの少年は現実世界で冒険者になる

家高菜
ファンタジー
ある日突然、異世界に勇者として召喚された平凡な中学生の小鳥遊優人。 召喚者は優人を含めた5人の勇者に魔王討伐を依頼してきて、優人たちは魔王討伐を引き受ける。 多くの人々の助けを借り4年の月日を経て魔王討伐を成し遂げた優人たちは、なんとか元の世界に帰還を果たした。 しかし優人が帰還した世界には元々は無かったはずのダンジョンと、ダンジョンを探索するのを生業とする冒険者という職業が存在していた。 何故かダンジョンを探索する冒険者を育成する『冒険者育成学園』に入学することになった優人は、新たな仲間と共に冒険に身を投じるのであった。

40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私 とうとうキレてしまいました なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが 飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした…… スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます

神は激怒した

まる
ファンタジー
おのれえええぇえぇぇぇ……人間どもめぇ。 めっちゃ面倒な事ばっかりして余計な仕事を増やしてくる人間に神様がキレました。 ふわっとした設定ですのでご了承下さいm(_ _)m 世界の設定やら背景はふわふわですので、ん?と思う部分が出てくるかもしれませんがいい感じに個人で補完していただけると幸いです。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

処理中です...