泥酔魔王の過失転生～酔った勢いで転生魔法を使ったなんて絶対にバレたくない！～

第38話 テイム・モンスター大会（5）

「まさか、決勝戦の相手がダリアだとは予想してなかったぞ」
「ハハハッ。僕は予定通りだよ（キラーン）」

　テイム・モンスター大会の決勝戦の場には、オズとダリアが立っている。
　まさに、これから試合が始まろうとしている。

「オズ、頑張れー！」
「まさか、ダリアがここまで強いとはねぇ」
「ここまで来たら、ダリアに勝ってほしいぜ！」
「このクラスの優勝は決まったので、私はどっちでもいいです」

　クラスメイトたちは、2人を応援しながらもどちらかを応援している。
　しかし、それ以外の観客のほとんどはダリアを応援している。
　準決勝でのラッシュとの戦いを見た観客は、一気にダリアとアウストヴァリリアのファンになってしまったのだ。

「ダリア！　ダリア！　ダリア！」
「僕への応援がよく聞こえるよ（キラーン）」
「ったく、全員ダリアの応援かよ」

　会場は、ダリアの応援の声が広がっている。
　オズは、不満に思いながらもこの一戦を楽しみにしている。

「オズー！　頑張ってねー！」
「オズ君の応援も1つだけあったようだね（キラーン）」

　観客全員がダリアの応援をしている中、1人だけオズの応援をしている人がいた。
　その声は、聞きなれたもので見なくても分かる。

「サンキュー、アリア。心強いよ」

　その声はアリアのものであり、オズにとって最も元気の出る応援だ。
　オズは気付かない内に笑顔になっていた。

「それじゃあ、始めようか」
「楽しもうじゃあないか（キラーン）」

　そうして2人は、それぞれのテイム・モンスターを召喚した。
　ダリアのアウストヴァリリアは、やはりどう見てもただのブタだ。
　しかし、優勝候補のラッシュを倒したので油断はできない。
　また、他にどのようなことを隠しているのかが気になる。

「ハム、最初からあれを使っていけ」
「承知致しました」
「アウストヴァリリア、自由に戦ってきたまえ！（キラーン）」
「ブヒ！（キラーン）」

　両者ともに気合は十分だ。
　この試合の勝敗は、全く予想ができない。

「決勝戦、始め！」

　ドガァァン！！！

「な、何が起きたのですか⁉（オドオド）」
「決まったな」

　試合開始の合図と同時に、ハムが一瞬にして視界から消えた。
　と思ったら、アウストヴァリリアが吹っ飛ばされたのだ。

「も、もしかして、瞬間移動テレポートですか!?(ビクビク)」
「正解だ。倒せなくても、かなりのダメージは入っただろう」

　オズは、アウストヴァリリアに一撃を与えることができて、少し安心しているようだ。
　ダリアは、ハムが瞬間移動テレポートを使うことができることを知り、動揺を隠しきれないようだ。

「ブヒ！（キラーン）」
「こいつ、無傷なのかよ」
「アウストヴァリリア、無事でよかったよ！（キラーン）」

　アウストヴァリリアは、ノーガードでハムの攻撃を受けたのにも関わらず、何ともなかったかのように立っている。
　これにはオズも驚いている。

「アウストヴァリリア、反撃するよ！（キラーン）」
「ブヒブヒ！（キラーン）」

　アウストヴァリリアは、ハムに向かって突進してくる。
　ハムは、突進してくるアウストヴァリリアを迎え撃つように構える。

「もう一撃与えてやれ」
「了解です」

　ドガァァン！！！

　オズは、再びアウストヴァリリアを吹っ飛ばした。
　1回目よりも威力はかなり強かった。

「ブヒ！（ドヤ）」
「なんでだ？」
「フフフ（キラーン）」

　アウストヴァリリアは、余裕そうに立っている。
　ダリアの方を見てみると、余裕そうな表情をしている。

「もしかして……」
「ハハハッ、感づいたようだね」
「そうだったのか。それは倒せないな」

　オズは、アウストヴァリリアにダメージが入らない理由が分かったようだ。

「天使エンジェルか……」
「そうです！（ドヤー）」

『天使エンジェル』それは、魔族と相反する種族である。
　しかし、天使エンジェルは天界にいる為、地上に姿を現さない。
　それなのに、アウストヴァリリアはどうしてここにいるのだろうか。

「どうしてここにいるんだ？」
「それは……知らない！　なぜか居たのさ！（キラーン）」
「マジかよ……」

　天使エンジェルだと分かったが、人間界に居る理由は分からないようだ。
　しかし、相手が天使エンジェルとなると、ハムに勝ち目があるか分からない。

「全力でいかねぇとやばそうだな」
「そうですね」
「私たちも反撃しますか！（キラーン）」
「ブヒ！（キラーン）」