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久瀬君の屋上での約束1

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「土曜日。自転車の練習しよう!」
「あ!そうっすね。
寒くなる前にやらないと。」
「何なら、金曜日の夜から家に泊まって行けばいい。
久瀬が嫌じゃなければだけど…。」
「えっと…いいんすか?
その、中也さんが嫌がるんじゃ。」
「構わないさ~!中兄ちゃんは家族と女性以外には、元々ああだから。
それに、泊まるのは僕の部屋だから。
今度はモメないように、中兄ちゃんは自分の部屋に行って貰うし。」
…いや、それこそモメる原因だからね。
この人、こういう事に鈍感だからなぁ。

でも、俺が先輩に甘えられる時間は多分少ない。
先輩の家の事情もそうだか、こっちも動きが自由に取れるのは来年の4月までくらいだ。
本当に厄介な家庭に生まれちまった。

「金曜日の夜からっすね。
えっと…用事を済ませてから行くっす。
家庭教師も来るので。
夜9時くらいからでも良いっすか?」
「構わないよ。
金曜日はきっと中兄ちゃんも女の子とデートで遅くなりそうだし。」
「…あ、でも。
最近、俺にばっかり構って、彼女との仲が悪くなったりしてないっすか?」
「明菜と?ないよ。
毎日のようにメッセージのやり取りしてるし、平日にもウチに勝手に上がってたりしてるから。」
「そうっすか。」
「本当に、お前は見かけや話し方と違って、気を遣う奴だな。」

ははは。
武本っちゃん相手なら図々しく出来るんだけどな。
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