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第9章
闇の知将①
しおりを挟む「食事は最低、前菜、スープ、メインディッシュ、デザートを用意して下さい。
あと、高価な物でなくて良いので食器も揃えて下さい。
始めは割ったりするかも知れませんので、決して高価な物は使わないように。
量はバランス良く、サービスは不用です。
材料においては、皮も入れてなるべく捨てるところのない様な調理方法を。」
私は厨房で働くコック長と使用人達に指示を出していた。
アルの考えと違い、コスト削減ばかりに意識を持って行っても、国としての利益に繋がらない。
確かにコスト削減も必須だがまず、アルに食事のマナーをしっかり教えなければならなかった。
これは他国との協議や提案に際して、食事をしながらという機会も訪れる可能性が多々あるからだ。
もうひとつは、使用人に仕事をキチンとさせて給金を支払い、経済を回して貰う意識を持ってもらわねばならないという事だ。
私の指示に面食らって、一瞬厨房が静まり返ったかと思うと、急にバタバタとフル回転をし始めた。
今まで、思うように腕を振るえなかったコック長も私が、難しい指示をしたので逆に燃えて来たようだ。
一気に活気に包まれた厨房を後にして、私は次の仕事に取り掛かるとした。
厨房裏の勝手口から外に出た。
既に日は落ちて、辺りは暗く雲に隠れた月が微かに光っていた。
「さて、どうしたものか。
蛇や鳥は使えなくはないが、見つかった時に厄介だ。
やはり虫の類か。
小さすぎれば潰されるし、飛び回れば叩かれる。
静かに、ゆっくり見つかりづらい奴は…。」
夜の闇の中、黄金の目を見開き辺りを探った。
ユラユラ…ユラユラ…。
夜風に乗って来る。
ユラユラ…ユラユラ…。
「いた!
風に乗り、移動中か。
お前なら、音もなく気配を感じさせずにスパイ活動に適してるな。
ダークスパイダー!」
私の瞳は空気中に漂っていた親指ほどの大きさの、ダークスパイダーを捉えた。
『闇夜を漂し捕獲者よ。
我が意志に従い、下僕となれ!』
カッ!カッカッピキーン!
雷に打たれたの如く、空中で蜘蛛は仰け反り硬直した。
そして、ゆっくりとその身を私の方に向けて、頭を傾げた。
ギギギ。
蜘蛛の口が横に裂けるように広がって、言葉を発した。
「アアヴヴ。
人間の言葉、わかる。
お前、いや、貴方様は、闇の覇王。
懐かしいかな、この感じ。
心地よい圧拍感。
覇王よ、我が力を、お求めですか?」
「そうだ、貴様にしか頼めぬ重大任務だ。
この城にいる助言師デブラブの監視を頼みたい。
奴は私の野望を阻止する不届き者だ。」
「なんと、愚かな、闇の覇王に、歯向かうなどと。
我が命に、変えても、任務を、遂行させて見せます。」
蜘蛛は大きく開いた口で、辿々しいながらも、私に従順な姿勢を見せた。
こういう者は知能は低くとも、使命に従順な為に扱いやすい。
蜘蛛は尻から出した糸を幾重にも重ねて、真珠玉くらいの七色の玉を造り上げた。
「この、糸玉を。
これを、耳に付ければ、話し声、聞こえる、はず。」
「リアルタイムで話す内容が聞けるのだな。
助かる。
期待しているぞ。」
「ありがたき、お言葉。
ご期待に、添えるよう、全身、全霊で、お役目を、果たしましょう。」
蜘蛛は尻から出した糸を風に乗せ、城の2階の窓からその身を滑り込ませてデブラブの寝室へと向かって行った。
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