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015 - せいていさま -
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015 - せいていさま -
・・・
ざわざわ・・・
「・・・畜生!、やりやがったな!」
わいわい・・・
「げほっ!、ごふっ!」
「野郎ぶっ殺してやる!」
どすっ!
「おいガキ!、俺の財布盗っただろ!・・・」
・・・
「そこのお兄さん、あたしと遊ばない?」
「きゃー」
・・・
「撃ちやがったな!、痛ぇ!」
がしゃーん!
「俺の店壊すんじゃねぇ!、出ていけ!」
ざわざわ・・・
・・・
・・・
「ねぇ、おじさん・・・」
「何だ?」
「怖いんだけど・・・」
「慣れるしかねぇな」
「えぇ・・・」
こんにちは、僕の名前はシエル・シェルダン、駆け出しのハンターです。
今僕はベネットおじさんと一緒にスラム街を歩いています。
いつも外出の時にしている格好じゃなくて、上はシャツとジャケット、下はポケットの沢山付いた厚い生地のズボンとブーツ、首輪はマフラーで隠して・・・もちろんその下には脱ぐ事ができない防護服を着ています。
「僕、宿主なのに首輪や防護服を隠していいのかな、これって法律違反になるよね」
「心配するな、ここに住んでる連中は犯罪者じゃねぇ奴の方が少ない」
「・・・」
おじさんに連れて来られたこの朽ち果てたステーションはとてつもなく治安が悪く、廃墟のような街の通りを歩いてる人達全員どう見ても堅気じゃなさそうな雰囲気を撒き散らしています・・・。
落書きだらけのお店の前には筋肉ムキムキの用心棒っぽい人が立っていて、道にはゴミと一緒に生きてるかどうかも分からない人間が転がり、派手な電飾の付いた看板の下には半裸のお姉さん・・・。
街全体に異臭が漂ってるし黒く汚れた建物の壁を触るとぬめっとした嫌な感触・・・油が漏れてる?。
「こんな所にギルドがあるの?」
「あぁ、俺がよく使ってるギルドで顔が利くから高く買い取ってくれるんだ、いつもなら船まで査定に来てくれるが今回はシエルの紹介・・・顔見せが目的だから直接出向いてる」
「僕としては2度と来たくないなぁ」
「別に誰彼構わずいきなり襲われるなんて事は・・・10回のうち2回くらいしか無いぜ、だから別に怖がる事はねぇだろ」
「2回あるのが怖いんだけど!」
僕達は2人とも杖を使って歩いてるから目立ってるし周りから嫌な視線を感じます、もうやだ帰りたい。
「街の住民は訳有りの奴が多い、逃亡者、賞金首、娼婦、売人、ヤク中・・・いろんな奴が居るからベンダル・ワームの宿主が道を歩いてたとしても誰も気にしちゃいねぇ、シエルには住みやすいとこだと思うがな」
「・・・」
何故僕がこんな街を歩いてるのか・・・話は数日前に遡ります。
ランサー星系ミューV・・・第5惑星で賞金首と戦利品を回収した後、僕たちは軌道上の衛星にある拠点に向かいました。
「ここで何するの?、マホウジン?は壊れてるってニートが言ってたけど」
「壊れてる箇所を修理してここから転移する」
「修理なんてできるの?」
「もちろんだ、この魔法陣を設計したのは俺だからな」
「え・・・でもここはお父さん達の拠点・・・」
「お前の両親は俺の友人だぜ」
「えぇぇ!」
「ちなみにこの船を修理したエッシャー・レベルスは俺の兄貴・・・」
「聞いてないよ!」
「ジュノーの奴から聞いてなかったのか?、もう知ってると思ってたが・・・」
「・・・この宇宙って意外と狭い?」
「いや、めちゃくちゃ広いぞ」
そんな会話をしつつ僕は例の黒いパワードスーツを、ベネットおじさんは賞金首さんが着ていたヴェンザ社製のヴロックを着て拠点に降り立ちました。
「こりゃ酷ぇな」
「どう?、修理できそう?」
「こいつが動かないと何十日もかけて近くの拠点まで行かなきゃならねぇだろ、そんな事するより新しく描き直した方が早ぇか・・・」
そう言いながらおじさんは手際よく壁に巨大な模様を描き始めました、壁に手を翳すだけでその部分が光って文字みたいなのが現れます・・・とても不思議な光景。
「よし・・・これで完成だ、幸い壁の後ろに埋め込んである魔石が生きてたから何とかなったぜ」
「前のと模様が違うみたいだけど」
「あれから何度も改良を重ねて機能的にはこっちの方が上だ、それに俺の拠点とも繋げたから行ける場所が10倍になってるぜ」
「そうなんだ・・・」
おじさんの言ってる事はよく分からないけど修理が出来たのならまぁいいか・・・そう思って僕は深く考えるのをやめました。
「ふぅ・・・少し魔力を使い過ぎた、身体がきついから転移は明日にするぜ」
船に戻ったおじさんはパワードスーツを脱ぎ、僕にそう言いました・・・顔色が悪いし大怪我してるから心配です。
「大丈夫?、早く病院で治療しなきゃ」
「魔力は寝てたら回復するから心配するな」
「どこに転移するの?」
「俺がよく使ってるギルドがあるんだ、ステーションのドックを一つ買って丸ごと俺の拠点にしてるからそこに直接転移しようと思ってる」
「ステーションに行くなら入港手続きはしなくていいの?」
「そこのステーションは誰でも手続き無しで出入り自由だし転移魔法陣を使えば距離なんて関係ねぇぜ、レオーネ星系の第3惑星・・・ゼーレの軌道上にある12号ステーションだ」
「ここからローゼリアを挟んで反対側だよね、凄く遠いし辺境・・・ローゼリアのギルドからあの宙域は治安が凄く悪いから行っちゃダメって言われてるけど本当に大丈夫なの?」
「治安は・・・確かに悪いがこの船なら問題無い」
「着いたぜ、ここが惑星ゼーレ12号ステーションのハンターギルドだ」
ばぁぁん!
どしゃぁぁっ!
「痛ってぇ!、畜生!、覚えてやがれ!」
だっ!・・・
ギルドらしき建物の前に到着するとドアが吹き飛んで、マッチョな男の人が僕の足元に・・・マッチョさん血まみれだし!。
「おぅ、ベネットじゃねぇか、凄ぇ賞金首捕まえたって聞いたぜ、後で奢れよ」
「久しぶりだなヨーロ、まだ換金出来てねぇから奢るのはまた今度な」
「チッ・・・この前もそう言って逃げたじゃねぇか・・・おい待てベネット、その子は何だ?、どこから攫ってきやがった?」
「攫ってねぇ!、しばらく俺と一緒に仕事する事になったシエルだ」
「一緒に仕事って・・・僕聞いてないよ!」
「・・・」
僕とおじさんの前には先程のマッチョを投げ飛ばしたと思われる女性?が立っています、この人も体格がいいな・・・。
「お嬢ちゃん?でよかったかな・・・そうだよなこんなに可愛い子が男なわけねぇよな、あたしはベネットのダチでヨーロ・レイヒーってんだ、よろしくな!」
わしゃわしゃっ!
「あぅ・・・よ・・・よろしくお願いしましゅ・・・」
やたらといい笑顔でマッチョなお姉さんに頭を撫でられましたぁ!。
こつ・・・こつ・・・ぎしっ・・・
「中は他のギルドと同じみたいだね」
「ボロいがな」
「あらあら、ボロいとは失礼ですねベネットさん、そんな事を言ってると査定額が渋くなるわよ」
「おっと、ついうっかり口が滑っただけだ、今のは聞かなかったことにしてくれ」
ギルドの受付らしきカウンターの中に居るのは退廃的な街に不似合いなくらい綺麗なお姉さん、金色の長い髪、瞳の色も金色だ・・・。
「シエル、紹介しよう、こいつはギルドの受付嬢でポーラ、普段は3人体制だが残りの2人は・・・どこかでサボってるんじゃねぇかな」
「こんにちは可愛い・・・お嬢ちゃん?でよかったかしら?、私はこのギルドの受付をしてるポーラ・ギノール、よろしくね」
「あぅ・・・初めまして、僕はシエル・シェルダンって言います、性別は女です」
「しばらく俺と一緒に仕事をする事になったから宜しく頼む」
「ベネットさんが誰かと組むなんて珍しいわね、ま、問題を起こさなきゃ別にどうでもいいわ・・・そうよね、ギルド長?」
咥えたタバコに火を着けながらポーラお姉さんが僕の後ろに向かって話しかけました、今ギルド長って言ったような気がしたけど・・・。
振り向くと僕の後ろにはさっきのマッチョお姉さん、少し離れたところにはテーブルがいくつかあってお酒を飲んでる柄の悪そうなお兄さんが2人居るだけ、もしかしてここのギルド長って・・・。
「ようこそあたしのギルドへ!、歓迎するよシエルちゃん」
満面の笑みで僕の頭を撫でながらマッチョ・・・いえ、ヨーロお姉さんが言いました。
「で、お前は150隻の大艦隊相手に一人で立ち回って船が大破、死にかけてたところにちょうど近くを通りかかったシエルちゃんが救難信号に気付き運良く救助された・・・と、あははは!」
「笑う事ねぇだろ!」
「だってお前、普通150隻待ち構えてたら逃げるだろ!、何で戦ってんだよ馬鹿じゃねぇの?」
「いけると思った・・・」
僕とおじさんはヨーロお姉さんに連れられて建物の3階にあるギルド長室に場所を移して今までの経緯を説明しています、こうしてる間にも外では銃声や叫び声が聞こえてるし!。
このお部屋に来る時だって何十年も保守してないようなエレベータに乗ろうとしたら異音の後少し傾いただけで全然動かないから諦めて階段を登ったの・・・。
お姉さんは「何だよまた故障かぁ!」って笑ってるけど・・・僕はここのエレベータには絶対乗らないと心に誓いました。
「ジョウ・カルヴィドゥンか・・・確かに超大物だな、しかも生捕り・・・明日お前のドックに職員を向かわせよう、但し賞金首の名前は伏せる、何処にロングフォーク旅団の「目」があるか分からねぇからな」
「そう思って賞金首捕まえたって事しか事前に伝えなかった、苦労して捕まえたのに逃がされちゃ大損だからな」
どうやら生捕りの二人はギルドから直接星団の収容所に送られるようです。
駆け出しハンターの僕の為にヨーロお姉さんが説明してくれました。
まず僕の船からこのギルドに犯罪者を移動、地下の留置場には転送ゲートが備え付けられていてそこから何ヶ所もギルドの留置場を自動経由して星団本部の凶悪犯罪者収容所に転送されるのだそう。
「ギルド長権限で転送は超一級犯罪者の扱いにしてやるよ、それなら最優先で転送されるから明後日には星団の収容所に着く」
「あぁ、すまねぇがそれで頼む」
「正規の手順だと星団の連中が本人不在のまま裁判にかける、ジョウの奴は2度とそこから出る事なく一生を終えるだろうな」
「恐らくそうなるだろうよ、俺にふざけた真似をした報いを受けさせてやろうと思って殺さず生かしておいた」
「回収したブツもうちで買い取らせてもらえるんだよな!」
「そのつもりだ、金になりそうな部品が沢山あるからすぐに換金したい、ただ・・・」
「何だよ、問題があるのか?」
「奴ら俺を待ち伏せする前に幾つか船を襲ってたようだ、誰の持ち物か分からねぇ宝石やら貴金属も回収した、だから盗品だけはしばらく寝かせておかねぇとめちゃくちゃ距離が離れてるこのギルドに持ち込まれたら不自然に思われる」
「誰のか分からねぇなら全部換金して頂いちまえばいいじゃねぇか」
ぷしっ・・・
缶に入ったお酒を開けながらお姉さんがとんでもない事を言い出しました、それ犯罪だよね。
「おい待て!、ギルドの規約だと被害届出されてるか照合して持ち主に返す決まりになってるだろうが!」
「何を今更真面目ぶってんだよ、ベネットだって今まで色々と悪ぃ事してたじゃねぇか(ニヤリ)」
「シエルの奴が居るんだぞ教育に悪いだろうが!、俺はジュノ・・・いや、知り合いからこいつにハンターとしての常識を教えてやってくれって頼まれてんだ」
「はぁ!、お前に常識なんてものあったのかよ!、誰だよそんな事頼んだ馬鹿は!」
「・・・俺の古い友人だ」
「まぁいい、だったら盗品はしばらく・・・そうだな、半年くらいうちで寝かせた後で被害届と照合してやろう、ふらりと立ち寄ったハンターから頼まれたって事でどうよ?」
「それで頼む、ちょろまかすんじゃねぇぞ!」
「分かってるよ、あたしを何だと思ってんだ?」
「悪徳ギルド長様だろ」
「ぶっ飛ばされてぇのか、おい!」
ピッ・・・星団本部より定例通信・・・聖帝陛下の御言葉を生配信します。
「チッ・・・うるせぇな、定例配信か・・・」
ギルド長室のモニターが起動して星団本部からの中継映像が映し出されました、ヨーロお姉さんが不機嫌そうに電源を切ろうと立ち上がります。
「え・・・聖帝陛下の放送は星団の住民全員が見なきゃいけない決まりだよね」
「大したこと言ってねぇんだから見ても無駄だろ、あたしはいつも見てねぇ」
「・・・あぁ、そういえば俺も見てねぇな、久しぶりに何を言ってんのか見てやろうぜ」
「えぇ・・・」
・・・
・・・
「この度、星団法改正により貧民街の住民への救済措置が・・・」
僕はモニターに映る聖帝陛下の映像を眺めています、いつもフード付きのローブを深く被ってるからお顔は見た事がありません、小柄な女性・・・でも年齢は既に1500歳を超えているのだとか。
先代の皇帝陛下から帝位を譲り受け即位したのが今から約400年前・・・穏やかで優しい性格と絶大なカリスマ性で民衆からの人気は高く、親しみを込めて聖帝様と呼ばれています。
今モニターに映っている女性は星団を支配する最高権力者なのです・・・。
「いつ見てもムカつく女だぜ、民の為、民への救済、って綺麗事言ってるが救済されるのは比較的治安のいいエリアだけだ、このステーションの奴らみてぇな本当の底辺に生きる連中に手を差し伸べる気が全く無ぇ・・・」
そう吐き捨てるように言ったヨーロお姉さんの目の前には空になったお酒の缶が3本・・・今は瓶入りの強そうなお酒をグラスに注いでいます、お仕事中?なのにそんなに飲んで大丈夫なのかな?。
「・・・」
モニターには陛下の顔が大きく映し出され、演説はまだ続いています・・・でもその時、突然の強風に煽られフードが捲れ上がりました・・・。
「おっと惜しいな、聖帝の顔が拝めるかと思ったのによ」
陛下が慌ててフードを押さえたのではっきりと見えなかったのですが、ちらりと覗いた黒髪とグレーの瞳が何故か僕の心をざわつかせました・・・。
・・・
ざわざわ・・・
「・・・畜生!、やりやがったな!」
わいわい・・・
「げほっ!、ごふっ!」
「野郎ぶっ殺してやる!」
どすっ!
「おいガキ!、俺の財布盗っただろ!・・・」
・・・
「そこのお兄さん、あたしと遊ばない?」
「きゃー」
・・・
「撃ちやがったな!、痛ぇ!」
がしゃーん!
「俺の店壊すんじゃねぇ!、出ていけ!」
ざわざわ・・・
・・・
・・・
「ねぇ、おじさん・・・」
「何だ?」
「怖いんだけど・・・」
「慣れるしかねぇな」
「えぇ・・・」
こんにちは、僕の名前はシエル・シェルダン、駆け出しのハンターです。
今僕はベネットおじさんと一緒にスラム街を歩いています。
いつも外出の時にしている格好じゃなくて、上はシャツとジャケット、下はポケットの沢山付いた厚い生地のズボンとブーツ、首輪はマフラーで隠して・・・もちろんその下には脱ぐ事ができない防護服を着ています。
「僕、宿主なのに首輪や防護服を隠していいのかな、これって法律違反になるよね」
「心配するな、ここに住んでる連中は犯罪者じゃねぇ奴の方が少ない」
「・・・」
おじさんに連れて来られたこの朽ち果てたステーションはとてつもなく治安が悪く、廃墟のような街の通りを歩いてる人達全員どう見ても堅気じゃなさそうな雰囲気を撒き散らしています・・・。
落書きだらけのお店の前には筋肉ムキムキの用心棒っぽい人が立っていて、道にはゴミと一緒に生きてるかどうかも分からない人間が転がり、派手な電飾の付いた看板の下には半裸のお姉さん・・・。
街全体に異臭が漂ってるし黒く汚れた建物の壁を触るとぬめっとした嫌な感触・・・油が漏れてる?。
「こんな所にギルドがあるの?」
「あぁ、俺がよく使ってるギルドで顔が利くから高く買い取ってくれるんだ、いつもなら船まで査定に来てくれるが今回はシエルの紹介・・・顔見せが目的だから直接出向いてる」
「僕としては2度と来たくないなぁ」
「別に誰彼構わずいきなり襲われるなんて事は・・・10回のうち2回くらいしか無いぜ、だから別に怖がる事はねぇだろ」
「2回あるのが怖いんだけど!」
僕達は2人とも杖を使って歩いてるから目立ってるし周りから嫌な視線を感じます、もうやだ帰りたい。
「街の住民は訳有りの奴が多い、逃亡者、賞金首、娼婦、売人、ヤク中・・・いろんな奴が居るからベンダル・ワームの宿主が道を歩いてたとしても誰も気にしちゃいねぇ、シエルには住みやすいとこだと思うがな」
「・・・」
何故僕がこんな街を歩いてるのか・・・話は数日前に遡ります。
ランサー星系ミューV・・・第5惑星で賞金首と戦利品を回収した後、僕たちは軌道上の衛星にある拠点に向かいました。
「ここで何するの?、マホウジン?は壊れてるってニートが言ってたけど」
「壊れてる箇所を修理してここから転移する」
「修理なんてできるの?」
「もちろんだ、この魔法陣を設計したのは俺だからな」
「え・・・でもここはお父さん達の拠点・・・」
「お前の両親は俺の友人だぜ」
「えぇぇ!」
「ちなみにこの船を修理したエッシャー・レベルスは俺の兄貴・・・」
「聞いてないよ!」
「ジュノーの奴から聞いてなかったのか?、もう知ってると思ってたが・・・」
「・・・この宇宙って意外と狭い?」
「いや、めちゃくちゃ広いぞ」
そんな会話をしつつ僕は例の黒いパワードスーツを、ベネットおじさんは賞金首さんが着ていたヴェンザ社製のヴロックを着て拠点に降り立ちました。
「こりゃ酷ぇな」
「どう?、修理できそう?」
「こいつが動かないと何十日もかけて近くの拠点まで行かなきゃならねぇだろ、そんな事するより新しく描き直した方が早ぇか・・・」
そう言いながらおじさんは手際よく壁に巨大な模様を描き始めました、壁に手を翳すだけでその部分が光って文字みたいなのが現れます・・・とても不思議な光景。
「よし・・・これで完成だ、幸い壁の後ろに埋め込んである魔石が生きてたから何とかなったぜ」
「前のと模様が違うみたいだけど」
「あれから何度も改良を重ねて機能的にはこっちの方が上だ、それに俺の拠点とも繋げたから行ける場所が10倍になってるぜ」
「そうなんだ・・・」
おじさんの言ってる事はよく分からないけど修理が出来たのならまぁいいか・・・そう思って僕は深く考えるのをやめました。
「ふぅ・・・少し魔力を使い過ぎた、身体がきついから転移は明日にするぜ」
船に戻ったおじさんはパワードスーツを脱ぎ、僕にそう言いました・・・顔色が悪いし大怪我してるから心配です。
「大丈夫?、早く病院で治療しなきゃ」
「魔力は寝てたら回復するから心配するな」
「どこに転移するの?」
「俺がよく使ってるギルドがあるんだ、ステーションのドックを一つ買って丸ごと俺の拠点にしてるからそこに直接転移しようと思ってる」
「ステーションに行くなら入港手続きはしなくていいの?」
「そこのステーションは誰でも手続き無しで出入り自由だし転移魔法陣を使えば距離なんて関係ねぇぜ、レオーネ星系の第3惑星・・・ゼーレの軌道上にある12号ステーションだ」
「ここからローゼリアを挟んで反対側だよね、凄く遠いし辺境・・・ローゼリアのギルドからあの宙域は治安が凄く悪いから行っちゃダメって言われてるけど本当に大丈夫なの?」
「治安は・・・確かに悪いがこの船なら問題無い」
「着いたぜ、ここが惑星ゼーレ12号ステーションのハンターギルドだ」
ばぁぁん!
どしゃぁぁっ!
「痛ってぇ!、畜生!、覚えてやがれ!」
だっ!・・・
ギルドらしき建物の前に到着するとドアが吹き飛んで、マッチョな男の人が僕の足元に・・・マッチョさん血まみれだし!。
「おぅ、ベネットじゃねぇか、凄ぇ賞金首捕まえたって聞いたぜ、後で奢れよ」
「久しぶりだなヨーロ、まだ換金出来てねぇから奢るのはまた今度な」
「チッ・・・この前もそう言って逃げたじゃねぇか・・・おい待てベネット、その子は何だ?、どこから攫ってきやがった?」
「攫ってねぇ!、しばらく俺と一緒に仕事する事になったシエルだ」
「一緒に仕事って・・・僕聞いてないよ!」
「・・・」
僕とおじさんの前には先程のマッチョを投げ飛ばしたと思われる女性?が立っています、この人も体格がいいな・・・。
「お嬢ちゃん?でよかったかな・・・そうだよなこんなに可愛い子が男なわけねぇよな、あたしはベネットのダチでヨーロ・レイヒーってんだ、よろしくな!」
わしゃわしゃっ!
「あぅ・・・よ・・・よろしくお願いしましゅ・・・」
やたらといい笑顔でマッチョなお姉さんに頭を撫でられましたぁ!。
こつ・・・こつ・・・ぎしっ・・・
「中は他のギルドと同じみたいだね」
「ボロいがな」
「あらあら、ボロいとは失礼ですねベネットさん、そんな事を言ってると査定額が渋くなるわよ」
「おっと、ついうっかり口が滑っただけだ、今のは聞かなかったことにしてくれ」
ギルドの受付らしきカウンターの中に居るのは退廃的な街に不似合いなくらい綺麗なお姉さん、金色の長い髪、瞳の色も金色だ・・・。
「シエル、紹介しよう、こいつはギルドの受付嬢でポーラ、普段は3人体制だが残りの2人は・・・どこかでサボってるんじゃねぇかな」
「こんにちは可愛い・・・お嬢ちゃん?でよかったかしら?、私はこのギルドの受付をしてるポーラ・ギノール、よろしくね」
「あぅ・・・初めまして、僕はシエル・シェルダンって言います、性別は女です」
「しばらく俺と一緒に仕事をする事になったから宜しく頼む」
「ベネットさんが誰かと組むなんて珍しいわね、ま、問題を起こさなきゃ別にどうでもいいわ・・・そうよね、ギルド長?」
咥えたタバコに火を着けながらポーラお姉さんが僕の後ろに向かって話しかけました、今ギルド長って言ったような気がしたけど・・・。
振り向くと僕の後ろにはさっきのマッチョお姉さん、少し離れたところにはテーブルがいくつかあってお酒を飲んでる柄の悪そうなお兄さんが2人居るだけ、もしかしてここのギルド長って・・・。
「ようこそあたしのギルドへ!、歓迎するよシエルちゃん」
満面の笑みで僕の頭を撫でながらマッチョ・・・いえ、ヨーロお姉さんが言いました。
「で、お前は150隻の大艦隊相手に一人で立ち回って船が大破、死にかけてたところにちょうど近くを通りかかったシエルちゃんが救難信号に気付き運良く救助された・・・と、あははは!」
「笑う事ねぇだろ!」
「だってお前、普通150隻待ち構えてたら逃げるだろ!、何で戦ってんだよ馬鹿じゃねぇの?」
「いけると思った・・・」
僕とおじさんはヨーロお姉さんに連れられて建物の3階にあるギルド長室に場所を移して今までの経緯を説明しています、こうしてる間にも外では銃声や叫び声が聞こえてるし!。
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「あぁ、すまねぇがそれで頼む」
「正規の手順だと星団の連中が本人不在のまま裁判にかける、ジョウの奴は2度とそこから出る事なく一生を終えるだろうな」
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「はぁ!、お前に常識なんてものあったのかよ!、誰だよそんな事頼んだ馬鹿は!」
「・・・俺の古い友人だ」
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「それで頼む、ちょろまかすんじゃねぇぞ!」
「分かってるよ、あたしを何だと思ってんだ?」
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「ぶっ飛ばされてぇのか、おい!」
ピッ・・・星団本部より定例通信・・・聖帝陛下の御言葉を生配信します。
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「え・・・聖帝陛下の放送は星団の住民全員が見なきゃいけない決まりだよね」
「大したこと言ってねぇんだから見ても無駄だろ、あたしはいつも見てねぇ」
「・・・あぁ、そういえば俺も見てねぇな、久しぶりに何を言ってんのか見てやろうぜ」
「えぇ・・・」
・・・
・・・
「この度、星団法改正により貧民街の住民への救済措置が・・・」
僕はモニターに映る聖帝陛下の映像を眺めています、いつもフード付きのローブを深く被ってるからお顔は見た事がありません、小柄な女性・・・でも年齢は既に1500歳を超えているのだとか。
先代の皇帝陛下から帝位を譲り受け即位したのが今から約400年前・・・穏やかで優しい性格と絶大なカリスマ性で民衆からの人気は高く、親しみを込めて聖帝様と呼ばれています。
今モニターに映っている女性は星団を支配する最高権力者なのです・・・。
「いつ見てもムカつく女だぜ、民の為、民への救済、って綺麗事言ってるが救済されるのは比較的治安のいいエリアだけだ、このステーションの奴らみてぇな本当の底辺に生きる連中に手を差し伸べる気が全く無ぇ・・・」
そう吐き捨てるように言ったヨーロお姉さんの目の前には空になったお酒の缶が3本・・・今は瓶入りの強そうなお酒をグラスに注いでいます、お仕事中?なのにそんなに飲んで大丈夫なのかな?。
「・・・」
モニターには陛下の顔が大きく映し出され、演説はまだ続いています・・・でもその時、突然の強風に煽られフードが捲れ上がりました・・・。
「おっと惜しいな、聖帝の顔が拝めるかと思ったのによ」
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女子高の2年生まで校内一の美女でスポーツも万能だった立花美帆。しかし、3年生になってすぐ、同じ学年に、美帆と並ぶほどの美女でスポーツも万能な逢沢真凛が転校してきた。
クラスは、隣りだったが、春のスポーツ大会と夏の水泳大会でライバル関係が芽生える。
それに加えて、美帆と真凛は、隣りの男子校の俊介に恋をし、どちらが俊介と付き合えるかを競う恋敵でもあった。
そして、秋の体育祭では、美帆と真凛が走り高跳びや100メートル走、騎馬戦で対決!
その結果、放課後の体育館で一騎討ちをすることに。
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