【暗殺貴族】短編集

八重

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短編

だから俺達は、(ギル&ジル・暗殺・◆)

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【だから俺たちは、】


薄暗いコンクリート壁の部屋、少女は鎖に繋がれ部屋の隅で身を震わせていた。

「お、おねがい…もう家に帰して……。わ、私誰にも何も言わないから…おねがい……」

震える唇から何とか出した声は小さいものだったが、音のない冷たい空間ではよく響く。

「何言ってるんだい。君はペットだろう? 君は私に買われたんだよ」

そう言いながら少女に近づく男。

その手には奇妙な器具が握られていた。
おそらく何らかの拷問器具のようで、それを見た少女は恐怖でさらに身を震わせた。

「いや…いや……」
「やれやれ…躾も大変だ」

男は嬉しそうにニヤツき少女へと手をかけようとした。その時ー…


バチンッー


「な、何だ!?」

急に部屋の電気が消え、窓もない地下の部屋は一気に暗闇に包まれた。

「何で急にで、電気が消え―」


ガキィィィンー


「なっ何だ!?」

突然響いた高い金属音に男は慌てふためき、手探りで電気のスイッチの方へと進んだ。
と、その時パッと部屋の明かりがついた。

「っ! なっ何だ貴様…!」

目の前には明かりのスイッチを押したであろう少年が立っており、男は驚き少し後ずさりをした。

ジャラ―

男の背後で鎖の音がし、反射的に後ろを振り向く。

「なっ…えっ…!?」

そこには今し方見たばかりの少年が少女を抱えて立っていた。
自分の前と後ろを交互に見て軽くパニックになる男。

「な、…お、同じ顔…」
「ギル。こっちはOKだよ」

少女を抱えた方の少年がそう言うと、もう一方の少年は了解。と同じ声で返事をした。

「…あ…の……」

少年に抱えられた少女が訳が分からず小さく声を出すと、少年はそれに気づき優しく声をかけた。

「遅くなってごめんね。この部屋見つけるのに時間食っちゃって…。大丈夫だよ。もう安心して」

ね?と笑顔を向けられ少女は少し頬を赤らめる。

「お、お前ら何してるんだ! 私の部屋から出ていけっ!!」

少し冷静になった男がそう怒鳴り、自分の懐から銃を取り出した。
銃を向けられ少女の体が強張る。が、少年達は怖がる素振りは全く見せずニヤリと笑ってみせた。

「そうこなくっちゃね」

少女を抱えた少年はそう呟くと男に向かって走り出した。
男は慌てふためき少年に向かって銃の引き金を引く。

小さな部屋に複数の銃声が響いた。

「なっ……!」

しかし気がつけば目の前に少年はおらず、ただ自分の放った弾がコンクリートの壁にめり込んでいただけだった。

「ははははっ…! おっさん遅いよ」

背後から声が聞こえ、男がバッと振り向くと同じ顔の少年が2人、入り口付近に立っており、そのうちの1人はその腕に少女を抱えていた。

「…いっ、いつの間に…」
「ジル。先にその女の子をマディーナの所に連れていってて」
「うん。わかってるよ」

ジルと呼ばれた少年はそう返事をすると喚く男の言葉を無視して、開けっ放しだった部屋の扉の奥へと消えていった。
バタンと閉まる扉。

「お、お前らいったい…」

1人残った少年はニヤリと不気味な笑顔を向け、腕を前に構えた。
手には鋭く光る鍵爪。

「おっさん。産まれてきた事、後悔させてやるよ」



******



「お、ジル。何とか間に合ったようだな」
「うん。じゃあマディーナ後は宜しくね」
「了解。っと、お嬢さん立てるかい?」

マディーナは優しくそう言うと、ジルに抱えられた少女に手を差し伸べた。

「…は、い……」
「大丈夫だよ。マディーナは味方だから安心して」

ジルがそう言うと少女はコクリと頷き、差し出された手をとり、ゆっくりと地面へと足をつけた。

「じゃあ僕はギルとあの変態牧師の所に戻るね」
「おう。30分程度にしておけよな」
「わかってるよ」

ジルがそう返事してその場を去ろうとした時、少女が待って、と制止をかけた。

「また…あの人の所に行くの?」
「大丈夫。俺達強いから心配しないで」
「でも……」
「大丈夫だって。俺ら信じてよ」
「…うん。……あ、あのっ……あ、ありがとうございます」
「別にお礼なんていいよ。じゃあマディーナに怪我見てもらっておいてね」
「あ…あのっ!」
「ん?」
「……また、会えますか?」

ジルは一瞬驚いた顔をし、ニッと笑った。

「お互い生きていたらいつか会えるよ。じゃあね」

走り去るジルの背中に熱い視線を送る少女。
その傍らに立つマディーナは少女に気づかれない程度の小さいため息をついた。

(…女の子の淡い恋心(記憶)を消すなんて気が引けるよなぁ)


******


「ギルお待たせ」
「ジルお帰り」

ジルが部屋に戻ると男は口を塞がれ、首輪で繋がれていた。
その体には無数の切り傷があり血が皮膚を伝い流れ落ちている。

「…んん…んんんっ……!」

ジルの登場に男はもがき、何か言葉を発しながら懇願するような目で2人を見た。

「うっさいよ。おっさん。俺イライラしてんだからちょっと黙って」
「あ、やっぱりジルも?」
「と言う事はギルも…」
「うん。なんかさっきの子さ、リラちゃんと同じ髪色で同じような長さだったからカブって見えちゃってさぁ」
「そうなんだよね。背丈も似てたし」
「まぁ、もともといたぶる予定だったけど30分じゃ足りないよなぁ。ね、ジル?」
「本当に。全然足りないよね~」
「まぁ、しょうがないか。見回り来ちゃうし、早く始めよう」
「そうだね」
「じゃあ…ジルはどの器具から使う?」
「この部屋いっぱいあって迷うね。これぐらいから始めようかな」

そう言いジルは壁に掛かった器具を手にする。

「じゃ俺はこっち」
「右半身はギルで左は僕ね」
「了解~」

自分が使い慣れた道具を持ち、近づいてくる双子に男はより一層もがきだした。

「…んんっ…んんんっ…!」
「おっさん今頃泣いても駄目だよ。
 あんたが今まで女の子達にやってきた事そっくりそのまましてやるよ」
「…んんっ……」
「おっさんこういうの好きなんだろ? 楽しみなよ」
「んんんんん~っ…!」


*******



「ギル様ジル様。お疲れ様です」
「ただいま~…」
「ま~…」
「ギル様ジル様ずいぶんお疲れのようですが大丈夫ですか?」
「ん~…別に体力的には疲れてないんだけどねぇ」
「なんかねぇ…こうモヤっとイラっとが残るって言うか…」

ギルとジルは暫くボーっと立っていたかと思うと、いきなりリラに抱きついてきた。

「ちょっ…ギル様ジル様!?」
「はぁ~…柔らかいし暖かい~」
「うん…やっぱそうだよなぁ」
「え?」

リラは2人の言ってる意味がわからず、思わずそう聞き返すと、ジルは少し苦しそうな声でぼそりと呟いた。

「いや、さぁ…女の子は抱き締める為に柔らかいんだよね」

ジルの言葉に賛同するようにギルもぼやく。

「こっちのが絶対気持ちいいのにさぁ」
「はぁ…」

やはりギルとジルの言っている意味がわからずリラは曖昧な返事をするしかなかった。

「よしっ! 充電完了!」
「リラちゃんありがとね~」
「いえ、そんなお礼なんて…」

2人には自分では計り知れない悩みや苦悩があるのだろうと思い、深く聞き返すことはしなかった。




「なぁ、ギル」
「ん? 何?」
「あの子、幸せになるかなぁ」
「…なるんじゃない。少なくともあんな変態に殺されるよりは、さ」
「…うん。そうだね。…そうなんだよね」
「うん。そうだよ」


だから、俺たちは自ら悪魔になるんだ










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