12 / 24
短編
僕は、今、ここに(シルキー・暗殺・◆)
しおりを挟む「…………」
僕は冷たくなった"それ"を見下ろす。
少し前まで人間というものだったが今はただの脂肪と水分の塊だ。
そう。ただの肉の塊。
「さむ……」
まぁ、時と場合にもよるけど仕事は夜にこなす場合が殆どで、今は季節柄とても冷える。
僕は夜風で冷たくなった手をギュッと握った。
今頃、"あれ"も生きていた余韻の熱もなくなり冷えきっているだろう。
僕も同じだ。
僕もきっともう人間じゃない。
仮初めだけの熱を持っただけの人形。
ほら。だから簡単に冷たくなる。
そして冷たさは僕の手先から全身に広がる。
真っ暗な寒空の下。
僕は自分が生きているのかわからなくなってしまった。
(……はぁ、駄目だな。寒いと考え込んじゃう)
僕は余計な思考を振り払いロードの待つ車へと足早に向かった。
******
「お仕事お疲れ様です。シルキー様」
屋敷に戻るといつも通り地下部屋でリラが出迎えてくれた。
「ただいま……」
リラの顔を見た瞬間、無償に抱き締めたくなった。
抱き締めて彼女の体温を確かめたい。
「お着替えここに用意してますので」
「うん…ありがとう」
でもそんな事出来るわけない。
生命と言う熱を奪ってきたばかりの手でリラには触れられない。
彼女の"生"を汚すような気がして恐いから。
「あ、あと…ですね。その…も、もし嫌でしたら全然結構ですから!」
「……? 何が? 主語をはっきり言って」
「あの…今夜とても寒いからシルキー様の体も冷えてるんじゃないかと思いまして。
……その…簡単ですがスープ…作ったんです」
「………リラが?」
「はい…。シェフももういないので……。あ、そのっいらないなら遠慮せずに仰って下さい」
「……貰う」
「……え?」
「ちょうどお腹減ってたし。スープ…貰うよ」
「は、はいっ」
リラは嬉しそうに返事をするとスープを用意しにバタバタと部屋を出ていった。
そして僕が着替え終わる頃に、スープ皿の乗ったトレイを持ち戻ってきた。
「シルキー様どうぞ」
小さく切られた野菜が入っているコンソメスープ。
スプーンで軽く回すと黄金色のスープが光に反射してキラキラ光った。
光るスプーンを一口すくいコクリと飲む。
じわり
僕の内側から暖かいものが染み渡る。
一口飲むごとに僕は僕に戻っていく気がした。
あぁ、僕はちゃんとここにいる。
僕は、今、ここにちゃんと生きている。
「あの……いかがですか?」
「……野菜が均等に切られてないから火の通りがバラバラだね。あと胡椒が少し薄い」
「う…す、すみません」
「でも……美味しいよ」
「えっ……」
「それなりにね。じゃあ、スープありがとう」
「あっ…はい。お仕事お疲れ様でした」
リラは空になったスープ皿を見ると嬉しそうに微笑んだ。
なんだか恥ずかしくなった僕はそそくさと席を立ち、部屋をあとにしようと扉に手をかけた。
「……また今度作って」
僕がそう言うとリラは一瞬ポカンとしたがすぐに元気よく返事をした。
「はいっ! 次はもっと頑張ります!」
「うん。よろしく」
僕は、今、ここに
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ちょっと大人な物語はこちらです
神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な短編物語集です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
熟女愛好家ユウスケの青春(熟女漁り)その後
MisakiNonagase
恋愛
高校まで勉強一筋で大学デビューをしたユウスケは家庭教師の教え子の母親と不倫交際するが、彼にとって彼女とが初の男女交際。そこでユウスケは自分が熟女好きだと自覚する。それからユウスケは戦略と実戦を重ねて、清潔感と聞き上手を武器にたくさんの熟女と付き合つまた。
その後、大学を卒業した祐輔(ユウスケ)の新たなストーリーが始まった。
全15話を予定
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる