漆黒の白魔族~最弱生徒の成り上がり~

sizuma

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一年生編 第一章 オルエイ入学

第二十五話 鬼訓練

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走り終わった俺は、バテて地面に倒れ込んでいた。



周りも皆同じ感じだ。



男は思いっきり寝っ転がり、女子は汚いのが嫌なのか、端っこの壁際に座って寄りかかっている。



きついなんてものじゃない、鬼だ。



そりゃ、オルエイに受かるために走り込みもしてはいたが、それでも物凄い疲労が来るくらいにはきつかった。







結論だが、俺は目標を達成できなかった。



というか、上位数名以外は皆途中で脱落だ。



一時間が経過した時、俺はまだ一キロ残っている状態だった。



最後まで走り切ろうとしたが、先生に強制的に切り上げられてしまった。



「無理だろこんなの。」



不満がこみ上げてくる。



しかもこれをさも当たり前のようにやらされるのだから鬼畜だ。



皆疲れて休んでいると、先生は次の指示を出す。



「では皆様、体が疲れていると思いますので、次はあまり動かなくていい魔法の訓練をしましょう。」



息は段々と整ってきた。



しかし、体の疲労がやばい。



たつとすぐに倒れてしまいそうだ。



この中で、次の訓練をやるとか、きつすぎだろ。



「では拙者の元へと集まってください。」



ナートル先生がそう声をかけると、クラスメイト全員重い足を持ち上げて、彼の元へと向かった。



前を見ると、魔法をぶつけるようの的が1人1つずつ、合計19個並べてある。



いつの間に置いたのだろうか。



そんなことを考えていると、先生は次の指示を出した。



「皆様の的を一つずつ設置しました。今から十分間、魔力が枯渇するまで魔法を打ち続けてください。」



「「「「!?」」」」



皆は走れと言われた時と同じように驚愕の表情を浮かべた。



当たり前だ。



魔力の枯渇なんて、そうそう起こすものじゃない。



体内の魔力がなくなると魔族はどうなるのか、想像を絶する程の倦怠感が体を覆うことになる。



高熱の風邪をひいたときに感じるあのような感覚だ。



しかも、同時に吐き気やめまいなどが襲う。



酷い人によっては気絶するくらいだ。



そんなことを今からやれと言われているのだ。



これがどれだけ狂った指示か、容易に想像できるだろう。



「あ、あの、先生、魔力を枯渇するまでって本気ですか?」



エリーゼが言う。



「本気です。魔力が枯渇すれば、魔族の体は悲鳴を上げます。しかし一方で、魔力量が増えたり、より強い魔力が練れるようになるというメリットがあります。筋トレをすれば筋肉がつくように、皆様方の魔力はより強くなる。体がまだ出来あがっていない子供に推奨される内容ではありませんが、皆様はもう15歳を超えていらっしゃるので問題ありません。技術の前にフィジカルを伸ばしなさい、強くなるにはそれが手っ取り早い。」



説明を聞いて、趣旨は分かった。



だが、納得できるかは別だ。



魔力が枯渇した時のあの苦しみを自分から味わえというのだ、納得できるわけがない。



しかし、まだ初日。



ここで逃げ出しては、先が持たない。



俺達は、先生の言われた通りにするしかなかった。









☆★☆★☆









夜、ご飯を食べ終わった後、俺は寮の部屋にてくつろいでいた。



というか、疲れすぎて動けないので、くつろがざる負えなかった。



「地獄かこの学校は。」



俺が独りでに呟くと、他の三人も苦笑した。



「き、きついです。ま、ままさかオルエイの午後訓練が、これ程とは。」



ヨロは、もう完全にぐったりとしていた。



起き上がる気力も無さそうに、ベッドに沈み込んでいた。



ミナクールも、昨日はあんなにうるさそうにしていたのに、疲れているのか今日は物凄く静かだった。



今日の戦闘訓練、ランニングと、魔法訓練までは良かった。



問題はその後だ。



魔法訓練が終わった後、ナートル先生は剣術をするぞと言い始めたのだ。



魔力の枯渇で、吐気に襲われて誰一人まともに立てていない状態で、剣術の練習をさせ始めたのだ。



誰もついていけてない。



まさにスパルタだ。



視界すらまともに見えていない状態で対人戦をさせられ、挙句の果てにそれが数時間。



いや普通に死ねるって。



夜ご飯を食べるとき、一年生達は、皆完全に黙り込んでいた。



というより、喋る気力もなかった。



「もう何もしたくない。」



「ほんとにね。」



俺が呟くと、ナルキがそう返した。



くそう、本当はこの夜の時間も訓練したいのに、それを体がそれを許さない。



心はしろと言っているのに、体が動いてくれない。



…仕方ない。



俺はベッドから立ち上がり、荷物置き場へ向かった。



そして魔闘学の時間にもらった手のひらサイズの棒をとって、自身のベッドへと戻る。



「何するの?」



「修行。」



「ええ? この状況で?」



「魔装を身に着けたいだけだ。別に体を動かすわけじゃない。」



「いや、体を動さないっていう以前に、あんな訓練受けた後によくまだそんな気力があるね…」



「気力はねえよ。ただのやけくそだ。」



そう言いながら、俺は棒に魔力を込めてみる。



昼は全く出来なかった。



魔装は未知の戦闘手段だから、早く身につけたい。



そう思いながら力を込めていると、異変に気づいた。



何だか、少しずつ魔力が入っていくのだ。



「あれ?」



「え? エスタ、できてるじゃん。」



ナルキがそういうと、疲れ果ててだらけきっていたヨロとミナクールがこちらを見る。



俺も自身の手元に注目した。



棒の周りにはシャーク先生が見せたようなオーラが浮かんでいた。



色は黒色だった。



先生は紫、昼に成功していたクラス一位のやつは青色。



オーラの色は、その人によって違うのかもしれない。



ヨロとミナクールが感想をこぼす。



「す、凄いです。僕なんか、全くできる気がしなかったのに。」



「まさにビューティフルだ。まさかyouが二番目にできるなんて。…オーラの色は汚いが。」



ミナクールが一言多いが、二人共称賛の声を送ってくれた。



正直俺も驚いている。



精神的にも体的にも疲れている状態で、まさか成功するとは微塵も思っていなかった。



何故できたのか?



なんとなくだが、実感している。



魔力を込める時の魔力の圧力の問題だ。



授業の時は必死に魔力を込めなきゃという考えから無意識に込める時に圧縮をしていた。だが今は真逆、体が疲れているので敢えて力など籠っていなかったのだ。



裁縫で糸を針に通すとき、力を込めると震えてうまく入らないだろう。



同じことだ。下手に圧縮せず、気楽に、そして細い形で魔力をこめていく。



「なるほど。こういう事だったのか。」



物凄く納得出来た。



俺が歓喜していると、ヨロが質問してくる。



「昼にクラス一位のグレルさんが気持ち悪い感覚だと言っていましたが、どんな感じなんですか?」



「あー、なんて言うんだろ。今まで魔力を使うときは魔法を使うから放つのが当たり前だったろ? だから、放てない事に違和感があるんだ。例えるなら、う〇こしたいのに出ない感じ?」



「エスタ、例えが汚いよ。」



ナルキに注意されてしまった。しかも、無茶苦茶冷たい目で見つめて来る。



「ごめん。」



俺はとりあえず謝った。こいつ、下ネタとか駄目なタイプだったのか。



それにしても、これが物に魔力を込める時の感覚か。



先生はこの過程が終わったら次は、自身の体で再現しろと言っていた。



ひとまず、やってみようかな。



物じゃなく自身の体に魔力を込めるんだ。



肉体に対して、薄く、広く。



魔力密度を下げて、体全体を覆うように。



ゆっくりと、ゆっくりと。



徐々に体全体にうっすらとオーラが浮かび上がってくる。



「え、エスタ!? それって!」



行ける、と確信した時、全体から魔力が抜けていった。



「あ、失敗した。」



「あ~あ。でも、今上手くいきかけてたじゃん。」



体の外側を纏いかけていた魔力が空気に分散していってしまった。



一瞬できかけたからわかるが、これ、以外と難しい。



さっき使っていた棒は魔力が外へ逃げないような素材で作られていた為気付かなかったが、人体を魔力で覆っても空気にの中へと流れて行ってしまうのだ。



「これ、出来る気がしない。」



「え? でもあともうちょっとだったじゃん。」



「そのもうちょっとの壁が高いんだ。」



取り合えず、今日は寝るまで魔装を身に着ける練習をすることにした。

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