異世界まで来たのに、俺、ブスキャラってどういうことなんですか!?

西の豊

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プロローグ

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俺の名は池上マイケル。
詳細は聞くな。気になるだろうけど、一旦飲み込んでくるがいい。キラキラネーム、その程度にしとこう。

要するに、俺は超一流のイケイケのイケメンって事なのさ。
整った顔といい、抜群のスタイルといい、道端ですれちがったら、即二度見されちゃうタイプの人間って訳さ。

(お前みたいな奴、大嫌ぁぁい!!!)

(…………………えぇ?)

(くらえ!! イケ顔殴り!!!………おっと…?)

いきなりのスイング。俺に走ってきた知らぬやろーがバッドで俺の完璧な顔を…………
ちょっとずれてしまい、正確には頭の方をぶんなぐってきた……

(ご、ごめん……… 顔を当てるつもりだったけど……)

(謝りに………なってねーぞ………)

そうやって、俺は気を失ってしまったのだ……


































おお……… ここはどこだ…?
俺は確か…
見知らぬやつにバットで殴られ…

(起きましたか………?)

(おぉっ… 君は……? えと、ここは一体…)

四方が真っ白で、淡い青色のパステルの日差し……… そして女神らしきの美しい女の子…… まさかここは……?いぃぃ……

(異世界ではありませんよ…!まだ……)

(まだって……?)

(あなたは今から私を通して、神様たちからの審判を受けます…! それからあなたの行き先が決まるのですよ……!)

審判って…… 俺はふと自分を顧みる……が、大した罪をおかしたこともなければ……そもそも…

(結果発表ーーー!!)

(声でかいな……!)

いきなりの叫びに困惑すると、女神らしき彼女は頬を赤くする。

(結果は………?)

(その……… そうですね……)

(どうした……?)

地獄でも行くのか……? なら暴れてやるぞ………!
そんなはずはないはずだ………!!

(あの…… あなたが今まで暮らした世界と、ほぼ変わりはない所にあなたは移住します………が………)

(が………?)

(異世界は異世界で………現代風の時代でも、魔法と科学が共存する………そんな世界…………ですが…………)

(ですが…………?)

何を躊躇っているのかわからないが、はよ結論を言えぇっ!!

(その………)

(その……?)

(ぶ……ブス………)

(ブス……?)

(あなた、次の世界、つまり異世界では……ブスなのです………すい……ません…………ごめん………なさい………!)

は………?

(何……? それはいったいどういうことだ…?)

女神はもじもじと目をそらし始める。

(あなたがおかした罪は、傲慢…… 審判によると、その傲慢を償うためには、ブスになるしかないと……)

(ちょっと待ってよ…!!)

俺は思わず膝をおって女神にしがみつく。

(おかしいだろー? 俺は傲慢なんかやらかした覚えはねーぞ……!! 俺は生まれっからこんな外見で、元々イケてて………)

(ごめんなさいね…… それじゃ…… グッバイ………!)

(おいおい……!! ちょっと待った……! そういうならお前も………!)

体が消えて行く……

(お前も傲慢だな……! 俺がブスになるからごめんなさいって…… ブスで何が悪い………! 上から謝るんじゃねーぞ……!!!  傲慢なのはお前も変わらんぞ……!!)

(えっ………………)

半分以上の体が消えて行く俺を見ながら、真っ赤になった彼女は唖然と口を広げている。

(私はただ……)

(どっかの上の人よ!!  俺と同じく…… 彼女も傲慢の償いを……! それが神の聖なる役目だろぉぉぉぉぉがぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!)

視野が完全に塞がれようとする直前、まさかの光景が目を走っていた。
























































































(いてぇっ!!!)

いたい。それが異世界での初めての感覚。

(起きてよー!ばかマイケル……!)

恨む声と揺れるパステル色の髪の毛……

(ここが……異世界なのか……?)

回りを見る。美しきさおどめは後にし回りの光景を確認する。

(公園……かな)

子供達が遊んでいる……が、無邪気に笑う子供たちの手から魔法陣が出てくる……やっぱ異世界だ……

(あれで鬼ごっこなんざしたら、人名被害がでそうだな……)

(そんなんでどうだっていいの……!! ばかマイケル……!! あなたのせいで私までこの世界に………この神聖な女神様がこんな所に落ちるなんて………あんたのせいよ!! どう責任とってくれるのよ!!!…………………ふえぇぇぇぇぇ………)

(おいおい、それもなんか傲慢だな……)

(うるさい!!!)

(責任ならとってやるよ…… お前と結婚すりゃ良いだろう……? 性格はともかく、珍しい美人だから、おりゃまんざらでもねーぞ。胸は小さいけど、おりゃ骨盤だけ見るからさ…… 心配しないでね、ギリ合格だから)

目が白くなる女神。
顔は赤いままだ。

(だ、誰があんたみたいな人と………!!ふざけないでよ本当に……!!)

(おい、俺がブスだからって…… どんどん傲慢そのものの塊になっているよな)

言ってから気づく。そうだ。俺はいまブスになってるはず………

(おい、鏡はあるか?)

(ないよそんなもん……!)

なぜか汗までかきながら腹をたたでた女神を後ろにし、公園のトイレを探しにいく。

(ちょっと、一人にしないでよ……!)

ブスとはだいぶ離れている超美人女神が俺をついてくる。

(おおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ……………!!!!!)

想像以上の光景に顎が外れてしまった。

自害がてら、自分の顎にパンチをする。

外れは直ったが、顔はそのまま…… いや、顔以前に、これおかしいだろー…………

(大丈夫?マイケル…)

大丈夫じゃないに決まっている…… なぜか心配そうに見ている彼女を見て、また鏡を見る。

(おい、傲慢の女神よ)

(その名で呼ぶな……!! 私の名前はルナだから……!)

(君の目には、俺がどう写ってるのかい……?)

(ふむ…… そうだね…… 元の姿からなんか…………こう………ぎゅぅぅぅぅぅっと縮めた感じだね……!!)

その通りだった。鏡の前の俺は、元の外見を体ごとに圧縮したような…… なんかのふざけアプリでとった写真のような………

(俺……… 気持ち悪いか………?)

(ふむ……私はあなたの元の姿がわかるから、ちょっとした違和感はあるけど………… でも私は別に…… かっこういいとかブスとか気持ち悪いとか………そういうはんだんの基準はそもそもないからね……)

傲慢のタイトルを外すための謙遜なら、嬉しくないぞ……

(どうしたらいいんだよ……… この世界でどうやって生きれば…… おい……! ルナ!)

(なに?)

(これからどうすればいいんだ? 神様たちから指令はあるか……? 我々はこれからどうしたら………)

(私だって知らないよ……)

(知らない……? お前は女神なのに、何の特典もないのか……?爺さんたちから)

(ないよ…… 女神は女神でも、審判をそのまま伝達する“スタッフ“みたいなもんだからさ……)

(じゃどうすりゃいいんだよ…… 俺はただの圧縮ブスで、お前は名だけの女神さま…… 行くとこもなければ、お金もない…… 知り合いなんざ、あるわけがない……)

公園の回りをふと見回る。まさに普通の現代と変わらない。

(中世時代の異世界なら、狩りでも何でもして、レベルアップやお金なんざ手に入るけどよ…… ここは現代だぜ! いったいどうすれば………)

(働けばいいのかな……?)

なぜか興味を示し始めたばか女神は、すぐに周りの求人広告を見始める。

(異世界まで来たのに働かせるなんて………元の世界がよっぽどましだったぜ………)


何となく彼女の好奇心ぶりに付き合わせていた時、スーツ姿の人が現れた。
いや、性格には人ではなさそうだ。ほんのりの紫色の肌、おでこにある二つのほの、いわゆる魔神ってやつか。

(おやおや、ここにおられましたのね、ルナ様)

(ドベルヤン……?)

(はい、少し、服装を変えただけなんですが、それでもやっぱり、ルナ様は鋭利な女神さまだ)

(この鬼は……?)

二人の間に入り込む。

(ドベルヤンよ!審判場での仲間!)

偉そうに笑う傲慢の女神。

(ルナ様の異世界修練のため、泊まる所や、身のための安全設備がご用意されておりますので、そちらまでゆっくり、ご案内致します)

(おぉぉ!それはよかったな女神!)

(もちろん、最低限の生活のための異世界費用も、毎月振り込まれますので……)

(鬼ちゃん、それは俺もだよな……!俺も同じ条件か………?)

その時、魔神は持っていたスティックを外して、鋭い針を俺の首に当てた。

(黙れ、ブス少年…… 我らのルナ様をこんなところまで引きずったお前には、ここで死を向かわせても問題ないはずだ……… 静かにするがいい………… もちろん、お前にあげる金なんざないぞ…… 泊まる所なんて、お前の力で探せばいい…………)

(う、嘘………)

マジか……? なんて薄情だ………!  俺と女神は異世界仲間のはずなのに……… 俺だけほっとかれたら………おりゃ死んじゃうかも知れねーぞ!!

(もう一言漏れたら、即座に殺す)

(そこまでしてよドベルヤン、かわいいそうじゃない)

女神に止められた魔神の殺意は、マジに近い“本気“のようだった。

(殺す前に乗ろ、ルナ様に近づいても殺す)

(なんだよ、ツンデレだな結局……うぉぉっ!)

針が通される前に口を閉ざす手振りを見せる。

(だが、お前にあげる金がないのは本当だ。生活費はルナ様の口座にだけ入る)

(ちょっと……!)

(もちろん部屋も違う。お前の部屋にはベットやエアコンなどの設備は備えられていない)

車内が熱くなる。

(マジかよ………)

失望していた。
でも、そのときにはまだ、俺がどんだけラッキーなやつだったのかは、知るはずがなかったのだ。




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