今日、君を忘れます

西の豊

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DAY.1

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彼女と初めて出会ったのは真夏の8月の事である。僕はコンビニで雑誌を適当に立ち読みしていた。なぜかは自分でもわからないが、普段読むことのない女性雑誌を手にしていたのだった。
[あのー]
不意に横を向いたら甘ったるい匂いがする。
[えっと]
すぐ目をそらした彼女に僕は口を開く。
[どうしましたか?]
思ったより声が出なくて、咳払いをする。
[最後の一冊]
[え?]
出た、声。
[最後の一冊、譲ってもらえませんか。その…]
彼女の前髪越しで不安そうな瞳が揺れる。
[お願いします!何か一つ、何でもしますから]
僕はつい手に持った雑誌を落としてしまった。すぐ拾ってから彼女に渡す。
[あげるよ!あげますよ、そんな]
彼女は雑誌を抱いて何度もお礼を言った。もともとそんな雑誌に興味は無かったもの。 だが、どこか不安定な彼女のしぐさに妙に引かれる。
[本当にありがとうございます!今月のものがとても手に入らなくて…]
レジから戻った彼女は嬉しそうにまたお礼を言う。 でも、まだ一回もちゃんと目を合わしてはいない。
[いいですよ、本当に。僕は全然大丈夫です]
いっそうさわやかに笑おうとしたが、顔面の筋肉が勝手にひねくれたせいで余計おかしい顔になっちまった。
[え、みさゆき?やべー!]
コンビニに入った高校生ぐらいの二人が、彼女を指しながら興奮した。その時、みさゆきと呼ばれた彼女は、逃げるようにドアの方へと走り出す。
[(ごめんなさい)]
声は聞こえない。だが彼女はドアを開けながら僕を見たのだ。初めてだった。生まれてからこんなに誰かと強く目があったこと。時間が止まったような瞬間、目にかかるぐらいの前髪が彼女の勢いに負け、彼女の清らかな顔を表す。
[あ]
違う。僕が彼女に引かれたのは不安そうな身振り手振りとかではない。彼女は美しい顔をしていた。
かわいい。
きれい。
どんなことばで示そうか。彼女ははっきり言って美人だ。 
[みさゆきか]
あの高校生たちはいまだに嬉しそうにはしゃいでいる。いや、はしゃぐだけではない。そのうち身長のでかいやつの下の方が、かなりもっこりとなっている。そんなに元気か。 どういう知り合いなのかは知らないが、この年の奴等は大体こんなもんだろう。家にかえってベッドにジャンプイン。
かわいかったな。久しぶりだな、こんな気持ち。いや、僕の気持ちなんかより、妙な雰囲気だったな。滅多にない感じ。純粋で透明な、だけどすぐに壊れそうな…
そんな魅力を持つ彼女であった。
期待はしないようにしているが、何が僕を驚かすかは誰にでもわからないのだ。電話が来る前まで、ずっとそんなことを考えていた。
[住所はメールで送るから]
掃除の派遣会社だ。大学を中退してから、ニートの生活が随分と続いた。退屈でどうしようもない時に、掃除代理店で働く地元の友人である裕太から仕事の勧誘がきた。そして、これがこっちに来てからの初めてのしごとになる。頑張ろう。
その日の午後、裕太からもらった道具をそなえ家を出る。到着したのは都心のビル。こんなに近くで見上げるのは初めてだ。それもそうか。実際の部屋はそこまで広くないだろうけど、こんなビルでもともと暮らしが出来るぐらいだ。掃除ぐらい誰かに任したっていいだろう。そう考えながらドアの前につく。
[守山掃除代理です]
ピンポンと音がなるや否やドアが開く。
[はい]
[みさゆき!?]
僕は不意に口を手で隠す。親しげに言うつもりでは無かった。
[…]
[掃除…です]
道具を見せる。
[どうぞおはいりください]
彼女はゆっくりとドアを開く。彼女からした甘ったるい匂いが一瞬で広がる。それにしても、先とはだいぶ違う雰囲気だ。相当落ち着いている。 家の中だからかな。
僕は早速回りを見る、探索だ。もちろん仕事であるだけで他の意図は全くない。もちろん心臓はバクバクしている。ずいぶん綺麗な部屋だな。
いや、きれいなのは間違いないけど白い花が多すぎな気もする。花好きに違いない。
とにかく、この年頃の女の子の部屋なんて元々入ってみたことはないけど、比較的に綺麗な方であるのは間違いない。
[あの、座ってください]
彼女の声にびっくりする。ジロジロと見すぎだ僕は。
[以外に、結構綺麗ですね、部屋]
[ありがとうございます]
しまった、失礼な事を言っちゃった。以外ってなんだよ。お礼を言った彼女は顔をあげたが、まだ僕の目を見てはいない。
[私が掃除代理店の人に、直接来てもらおうとしたのは、掃除以外の事をお願いしたかったからです]
[そうですよね]
頭を掻きながら頷いてみる。それもそうだ。どこを見たって、綺麗に整えられている。
[全部散らかしてください]
[え?]
[私が見ないところで、思い存分散らかして欲しいのです]
[あの部屋を?]
彼女は深く頷く。
[だからつまり、この書斎を勝手に散らかして欲しいと…]
[そのとおりです]
彼女の体は少し震えている 。でもその言葉から感じられる彼女の思いは、本当のものである気がする。下の方をじっと見つめる彼女の目にも、その決心が染み込んでいる。
[あの、その理由を伺っても]
よろしいでしょうかのくだりは、自然に静まっちゃった。
[理由はどうでも良いのです]
[あ 、そうですね。ごめんなさい]
座ったままお辞儀をする。言われた通りにするしかない。
[それじゃ早速]
[いいえ、私がいないときにお願いします]
[あ ごめんなさい]
[これから一週間、よろしくお願いします]
[はい。どうぞ]
自分でも訳の分からない返事を終え、もじもじと頭をかく。
その後、彼女は特定の時間割りを僕に説明した。それまでに、一回家に戻ることにした。にしても一週間、毎日出勤か。とはいえ掃除でなく散らかしなんて…
よく出来るかな。
[どこに頼めばいいかわからなくて、いろいろ探した末、このようになりましたので]
わりと冷たい口調で言われた。
[そして、私の名前を勝手に呼ぶのは、やめてください]
玄関のところで言われたけど、それには何の返事もできなかった。
約束の時間になって、僕は道具のないまま彼女の部屋に入る。これではただの侵入ではないかとも一瞬思ったけど、これはきちんとした仕事なのだと自分に言い聞かせる。ちらっとみていた部屋中を、しっかり見回る。
甘ったるい匂い…香水の匂いではない。ローションでもないな。匂いの元を探そうか。僕は自分の役目を忘れ、部屋中を嗅ぎ回す。変だと思われるかも知れないが、匂いに敏感であるからこそでもある。ずっと気にするよりはましなのだ。
しかし嗅げば嗅ぐほど匂いの根元が分からなくなる。
[あ、なるほどね]
馬鹿みたいにかぎまわす必要もなかった。そもそもその匂いが花の匂いからだという意識がなかったからだ。名前こそしらないが、こんなにたくさんに飾られていたら、そりゃ部屋中いいにおいがするのに決まっている。人造的な匂いと違ってなかなか飽きもしない。いやいや…時間通りに済ませなければいけないのに、ぼやけている暇なんていない。
それでは始めようか。まず彼女に言われた通り本棚がある書斎に入る。何の仕事をするのかはわからないが、種類問わず沢山の本が飾られている。
[いいな]
本棚から気に入った本を一冊取り出す。
(脳の探索「知れば知るほど感心する素晴らしい神経の世界」)
脳系の本はたまんないんだよな。すでにどこかで読んでいた気はするけど、人の脳に関する書籍は何度も読み切らないと気が済まないほどだ。そしてあっという間に興味津々な一冊を読み切ってしまう。
本を元のところに戻すと、すぐよこにまた厚い科学書籍を見つけ出す。
(シナプスの世界「神経回路の奇跡的なつなぎ、再融合について」)
こんな本も読むの…?
もちろん 科学書籍好きの僕には、ものすごくありがたいことなんだけど、変にも好みが合うから妙な気持にもなるもんだ。そしてさっそく手にした本をまた読み始める。木製本棚の独特の匂いと、甘ったるく家中にしみた花の匂いで、僕は完全な読書モードになる。 窓からは涼しい風がふき、暖かい日差しが暗めの部屋を撫でるように照らす。時には脳の細胞になり、不意にはシナプスの連結ベルトになり、僕は本の世界にすっかり溶け込んでいた。
その時アラームの音が鳴る。
[うっそ!やべ!]
僕は慌てて本を元に戻そうとした。その時、本棚の上から写真一枚と手紙らしきのものが落ちる。小さい女の子二人の写真。でもそれに気を向ける暇などない。お決まりの時間はおよそ20分程度だったのに…その時までこの散らかしを終え、彼女が戻る前に家から去ること。それが唯一のルールだった。
僕は手の掴む次第、全ての本を床に投げ捨てる。こんなでかい書斎なんて見たことがない。こりゃもはや図書館ではないか。今さら愚痴を言っても無駄なのはわかっているが、彼女との契約がこのまま崩されるのは嫌だ。何とか早く散らかさないと…自分なりの精一杯を尽くすが、ほどよく散らかすなんてどうにも難しい。なめたもんだ。僕は散らかしを完全になめていた…
その時、玄関のドアの音がした。もうダメだ。どうも立派には散らかせてはいない。もう終わりだ。ガチャとする音と共に彼女が入る。謝ろうか?今の僕はどうしたら良いのだ。半分散らかした本の塊を後にし、窓側の角に入り込む。カーテンの揺れが絶妙に僕の姿を消してくれる。別に驚かそうとか隠しきろうってことでもないけど、なぜ自分がこんな行動を取っているのかは自分でもわからない。
荒い息…
彼女は何かを探るように音を出しながら、部屋に入る。
[うあああああああああああー!]
怪獣のよう、彼女が悲鳴をあげはじめた。当分の間その悲鳴は泣き声に変わっていた。
[ごめんなさい…ごめんなさい]
涙をこらえるよう、彼女は謝りを呟きながら整理を始める。この為だったのか。何となく分かってきた。彼女は涙を拭き、唇を噛みながら体の震えを止めない。夕日に照らされた彼女の薄い手首…
本棚にさしのべたその手が一瞬で止まる。彼女は先僕が落とした手紙と写真を取り出した。その瞬間、あごに溜まっていた汗の大粒が床に落ちる。
[何で]
声の震えも止まった。
[何でいるんですか]
僕はなるべく息を潜める。
[何で…]
彼女はそのまま崩された。赤くなった頬っぺたは涙で潤い、噛みすぎたせいか、唇には少しの血がほのかに光る。 
[本当にすいません! 隠れるつもりじゃなかった]
僕はとびはねるよう彼女のもとへ行き、か細く弱々しい肩に手をおく。真夏の湿気と重苦しい緊張で、二人はすでに汗だくだった。
[うっかりしちゃってさ、気付いたらこんな時間になっちゃって]
彼女は目を会わせない。
[でも分かるよ。みさゆきさん大変なんだな。いろいろと]
[何が分かるのですか]
[だからその…]
美しい瞳に怒りの熱が広まってく。
[ま… 僕の親戚でもさ。嫌な事があったら、たまにフィギュアを解体と組み立てを繰り返すとか…ほらパズルをまた繰り返しながら安定を戻すと言うか]
言いながら気づいた。本当にそんなもんなのか。そういうのと似たものだとしても多分レベルが違う。
怒り、涙、血、そして頻度だ。
[散らかしは毎日でお願いしても宜しいですか…?]
それにオッケーしたのは僕のほうだ。これが毎日なら彼女は一体何のストレスを抱えているのだろうか。どの職場につき、どんな仕事をし、どんな悩みを…
[何を]
彼女の体がほんのりとまた揺れはじめる。
[何が分かるのですか]
これはまいった。彼女の言うとおりだ。僕は彼女の事なんて何一つ分かっていない。
[私はみさゆきではありません]
彼女を見る。代理店にはまだ名前を教えてもらってない。あの高校生達はただ間違えていたのか。
[ごめん、また、勝手に名前を呼んでしまったね]
彼女は何も言わない。 この沈黙には、どうも耐えられない。
[本当に悪かったよ。今日は本当にすいませんでした。返済の方は、会社に全部言っとくから]
最悪の日だ。彼女にとっても、僕にとっても…
[行くの…?]
[え?]
今日でもう何度目の(え?)が漏らされたのか。
[このまま行っちゃうの…?]
[行っちゃうと言うか、これ以上迷惑をかけたらあれかなと思って…]
[私やっぱり迷惑?]
いつの間にか、彼女は僕の袖の裾を掴んでいる。
[いや、つまり迷惑と言うのは自分の方で]
言葉が止まる。目が合ったからだけではない。捨てられた子犬、愛嬌を振る舞う野良猫、誰かが見たらそう語るかも知れない。
だが違う。僕からは違うんだ。
何でそんなに痛んでいる?
何故悲しむ?
何で…
手首に怪我がある?
聞きたいことがありすぎて言葉にまとまらない。
[行かない…けど]
格好つけるつもりではない。でもここで去ってしまえば、誰かが居なくなってしまえば、ダメな気がした。彼女を一人にしてはいけないと思った。
[ありがとう]
彼女と僕の間は、ただ彼女が掴んだ裾の分だけ繋がっている。降り始めた通り雨を先に気付いたのは、彼女の方だった。
[いきなりね]
彼女は、少しよろけながら窓の方に行く。すぐにでも転びそうだったため、つい追ってしまったが、彼女は少し笑いながら窓を閉めた。初めての笑顔。
[あなたは、私の事を何一つわかっていない]
また玄関越しの会話になった。
[だから元通り、明日来て下さい]
[分かりました]
何の‘だから’なのかは分からなかったけど、一応納得したよう頷いた。彼女は最初とは違く、じっと目を合わしてくれた。ドアを閉めるとぬるっとした風が頬を撫でる。
家に着いてから、また彼女の事を思い出す。僕は本当にダメな事をしてしまった。こんな迷惑かけて、また明日なんて…コンビニから偶然会って、彼女の家を訪ねるまで半日ぐらいしかかかっていない。結構な偶然なのに、それにはどっちも黙っていた。
確か、彼女の事は名前一つもちゃんと分かっていない。まだ彼女の名も、職業も何一つ分かっていないけど、みさゆきって言われるのを嫌がる事だけは、はっきりと分かった。みさゆきと言う人が、彼女自身なのかどうかはわからない。
「そうか」
僕はすぐパソコンを開いた。調べてみたらいいんだ。少なくとも何千人はいるはずの名前を入力してみる。
(みさゆき)
悪いことをしているはずではないのに、多少体が縮まるのはなぜだ。こんな風にストーカーが誕生するのか…検索をクリックするのを迷い始めた時、僕はついモニターに顔を寄せてしまった。
(みさゆき流出)
(みさゆきがちの)
(みさゆきの無料動画)
自動キーワード。僕は迷いなく検索をクリックする。無数のアカウントを探る必要も無かった。最初の関連イメージで僕の顎は空いたままだ。嘘だろ…
[嘘だろ]
口にもう一回出してから実感する。カメラ目線の半泣きの顔、モザイクが掛かっている無数の画像、彼女だ。今日会ってきた彼女…みさゆき。
[みさゆき…]
AV女優だったのか。
(今だけ!消される前にすぐ!みさゆき問題の無修正デビュー作!)
マウスを動かし刺激の強いサイトの方へポイントを移す。
だめだ。
だめだ…
なぜ?
なぜだ?
なぜ迷う!
[いや]
今すぐにでもクリックをしようとした自分が情けない。
[みさゆきではありません]
僕は知っているだろう。彼女がどんなに苦しんでいたか…自分の存在まで否定しながら、彼女は言っていたのではないか。実際彼女がみさゆきだとしても、僕だけは、一緒に否定してあげなければいけないのだろう。
彼女の傷を知っている上で。
彼女の掃除代理人として。
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