メタル・グリム・リーパー

宮崎ソウ

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第6章 シニガミの祖

6-3

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 センサーの起動が正常であることを確認していき、残る数が二本になった時、耳障りなブザー音が沈黙していた私達の攻撃性を呼び覚ます。

「北東の四九キロ地点に一体のジン反応! オースティン、クライシス、行けるか?」

「すぐにでも」私はWMBを躊躇なく起動させた。「殲滅してやる」

《イーヴィル、北東にジンだ。俺達が先に向かう。お前は作業を優先してくれ》

《了解、終えたらすぐに加勢する》

 ブースター内部の温度が上昇し、離床すると同時に高い推進力により開きかけた格納庫のドアから外界へ突撃する。見慣れた黒い大地には目もくれなかった。

 私達のセンサーはジェドが言った通り一体しか確認できなかった。さまよっているかのようにあちらこちらへ動き回っているが、今のところ私達に対する攻撃行動は見られない。もうじき姿が見える。相手に攻撃意思がなかったとしてもジンは無害とは言いにくい。部品の回収のためにも必ず撃破してやる。

《敵を確認。ありゃ群れからはぐれたプロトタイプだな》

 クライシスがそう言うので視界を拡大してみると、特化した特徴がない芋虫のような物体が恐ろしく鈍いスピードで右往左往していた。全長は二○メートルほどとジンの中では小柄で、この姿こそがジンの祖型である。ここから食べるものによって進化を繰り返し、強者のみが群れの中で生き残っていく。そして、特徴的な姿と兵器を背負った怪物へと変貌するのだ。

 まだ一度も進化をしていないこの姿に攻撃手段はなかった。私達を視認して逃走を図るが、私達も部品を必要としているので獲物を逃がすわけにもいかない。

 この姿を見ていると、進化の過程であんなにも狂暴化した意味がわからなかった。祖型は無垢だ。放って置いても無害だが、進化という可能性が否定できない以上、くだらない正義を燃やして無視することは不可能だ。進化さえしなければ……アルバが組み込んだ進化過程に潜んだ毒が何なのか、いつかは突き止めなければいけない日が訪れると思う。シニガミを量産して増え続けるジンを叩いても根本的な解決にはならない。進化を止め、それから繁殖も止める手段が発見できればいいのだが……アルバはそんなこと毛頭も考えていないだろう。この無力なジンを目にしたとしても。

《オースティン、殺せ》

 クライシスが私にそう言った。躊躇する理由もなかったが、何故か気が引けた。それに気付いたのか、彼は《早く!》と私を急かす。ジンに傾いた私情に対し自分で喝を入れ、スピードを維持したまま右腕のブレードを起動。勢いつけてプロトタイプを背後から真っ二つに切り裂いてやった。分離した上半分が下の部分からずれ落ちて斜めのまま地面に落下する。中身が露出し、損傷した小さなコアが火花を散らして絶命しようとしていた。それに容赦なくデルタ砲を撃ち込んで破壊するクライシス。彼がやったことは間違っていない。私達はジンを殺す兵器だ。私がこうも感情移入することがおかしいのである。ジンは殺さなければならない。生かしてはならない。殺さなければならない。

「この巨体をどう持ち帰る?」

《ジェドから預かった高密度ポリエチレン製のネットを使って運ぶしかない》

 彼は腰に巻き付けてあったネットをほどいて広げ始める。ジンの重さに耐えるため何十本もの縄を編んだこの黒いネットは、生身の人間では持つことはおろか掴むこともままならないだろう。
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